「起きろ凪」
「……何で、いんの」
「カード貰った」
デジャヴ。朝起きたら目の前には愛しの勝己くん。いくらコイツがここのOBで現役のトップヒーローだとしても安易に入れすぎだろ。
それにコイツのフォロワーで、同じ学校に通いたいっつって入学したやつもいんだから……騒がれたら面倒だろ。
「出かけるぞ」
「……今日、休みじゃない。お帰りください」
「…ババアの孫から休みって聞いとンだよ
「俺は!寝たいの!!」
「丸の内限定パンケーキ優待チケット…」
「こっっっっす!!くそっ!!行く!!」
「ちょろ」
だって、丸の内限定のパンケーキって言えば超絶有名で予約すらできない程の人気なアレだろ?
全てが上流階級に流れてるっていう…っは!?コイツ上流階級者だったわ!
土曜日休みはベッドでゴロゴロの予定だったが、予定は未定だ。
釣られた感は否めないけどそんなの関係ねぇ。
「甘いモンのためならッ!」
「はっ、変わんねーな」
右の口角と片眉を上げて笑う爆豪はちょっと呆れているけれど、俺と出掛けられることに感謝しろよ。
「よっしゃ行くぞ!!
「現金なやつ」
*
*
「幸せパンケーキ…とろけるツインツインフルーツスターアンビシャス……」
「長ェし意味わかんねぇ」
店内は満席で女性客が多い。そんなところに男二人で入店は違和感ありまくり。店内ではマナーを重んじるようにしており、ハットやサングラスは外してある。
そしてざわつく店内。俺たちの名前が聞こえるが気にしない。だって目の前にはとろけるツインツインフルーツスターアンビシャス。
2段になったパンケーキの上に数種類のフルーツ、2種類の生クリーム。まさにアンビシャス、熱望するわこんなん。興奮しないわけがないって。
「マジでお前と出会えてよかった……ッ。誘ってもらわなきゃここ来れなかったわ!」
「そーかよ」
俺の目の前には甘ったるいパンケーキなわけだが、爆豪がオーダーしたのは食事系パンケーキ。
その名も”サーモンon the たまたまポップポップ〜whit アヴォカードゥ〜”。
要はエッグベネディクトとサーモンにアボカド。
ネーミングセンスよ、確かに長くて意味わからん。ちなみに爆豪はこれを真顔で読み上げた、流石かよ。
甘い甘いパンケーキは俺に幸せを運んでくれる。毎日食べたら太るし肌もオイリーになるから控えてるけど、こうしてたまーに食べる甘いものは格別だ。
酸味のあるフルーツも一緒に食しているため甘さで飽きることも苦しくなることもない。
フワフワのパンケーキの生地は一度メレンゲを作ってから焼き上げているらしい。生クリームもミルク感が強くただただ甘いわけじゃない。
クランベリーが酸っぱいけどそれがまた合うわ〜手間隙かかって値段もアホみたいに高いわけじゃない、良心的。
そりゃ人気が出て招待券発行して、来る人数を制限しないとお店大変だろうな。
甘くて幸せ。爆豪の食事系も旨そう。そんでもってナイフとフォークを持つ手が綺麗だ。
「ンだよ」
「いやー?食事系もいいなぁって。次もし来れることがあったらそれ頼もうかな」
「今食えばいいじゃねーか、ん」
「!!」
丁寧に分けられたパンケーキとサーモンとアボカド。そしてフォークに突き刺し卵にディップ。それすらも綺麗な形状を保っている。でた才能マン。
目の前に差し出されたそれは、食えと言っているようで…パンケーキと爆豪の顔を何度か見比べてみるけど、やっぱり食べろってことか。
コーティングされた卵が今にも垂れそうになるが、ちょっとこれは抵抗があるぞ。
「あくしろよ」
「ん〜〜…あっ!ぅむ……!!うっま!!」
爆豪にあーんされるのなんて高校生ぶりかもしれない。間接キスなんてペットボトルや缶ビールの回し飲みでしてるし、ディープなキッスだってしてるけど…ちょっとした羞恥があった。
それでも口に含んだものはとてつもなく美味しいからそんなこと忘れてしまう。
甘いパンケーキもいいけど食事系もまたいいな。こんなに完成度高くはできないけど、これだったら爆豪も普通に食べられるし…よっし。次の休みの日作ったろ。
「薫製サーモンとまろやかなアボカド…硬めの生地で歯応えを演出して”ご飯”系であることを感じさせる満足感を実現…濃厚卵がコーティングされて味の変も忘れず2度楽しめる最高の一皿…」
「お前食レポの番組にでも出んのか?」
感想を言い出したら止まらない。薫製チップもたぶん拘ってる。俺にはわかんないけど。
「旨いもんが食べられるって幸せだなぁ…」
「なら俺が作ってやるよ」
「はぁ〜?偉そうに言いやがって。つってもシェフ並みのを簡単に作るんだよな、お前……じゃ晩ごはん何か作って」
「あ?お前明日仕事だろ」
「そうそう、日曜出勤。ヒーロー科でトレーニング手伝う。移動用ドローンあるから渋滞気にしなくても雄英までひとっ飛びだから」
「へェ」
最近は移動用ドローンで出動、行動することも多い。パワーローダー先生いわく、俺が乗るだけで宣伝になるからってさ。所謂広告塔ね。
移動速度もまぁまぁだから下手に車で移動するより断然早い。
「あれ食べたい、パエリアとアヒージョ」
「…めんどくせェ」
「一緒に買い物行こうよ。晩ごはんは魚介が食べたい気分なんだって。ダメ?」
「……ったく、しゃーねぇな」
めんどくさいと言いながらも俺のお願いはあまり断らない。口では言われたことはないけど、お願いされるのは悪くないって思ってるはず。たぶんね。
「かっちゃんやっさしー」
「かっちゃん言うなやメス」
ケタケタと笑いながら最後の一口を放り込む。ちなみに爆豪はとっくに食べ終わってたみたいでむくれながらケータイをいじっていた。
「っしゃー!買い出しじゃー!」
「あっ、あの!カーミング……お休みのところお邪魔してごめんなさい!あ、握手してください!」
会計も済ませて外に出ると数分前に出ていた女の子二人が出待ちしていた。やっぱそりゃバレるよね。店内若干そわそわしてたし、声かけたかったんだろうな。
「いいよいいよ。休日っての加味して声かけずにいてくれたんだろうし。写真もとる?SNSに上げないって約束してくれるんだったら一緒に撮ろうよ」
「「是非お願いします!!!!!」」
「おっけー」
女の子のスマホを受けとり自撮りするけど…あんまり馴れてねぇんだよな。
「お前も入れよ」
「あ”?誰が入るか」
「ファンサも立派なヒーローのお勤めだぜ?ジーニストに教わっただろ?」
高校1年のときの職場体験で散々な思いをしているため彼はファンサービスというものをしない。しなくてもそこそこ支持率あるし、事件解決数は高いからランキングも上位だ。
「っけ、」
「この調子じゃ支持率は俺の勝ちだなぁ?」
「お前のフォロワー若ェ女だけじゃねぇか」
「若い女の子達が俺の存在で安心できる世の中なら、それでいいと思ってる」
「…」
「オールマイトが言ってただろ。人々が安心して暮らせる世の中にするためには象徴が必要だってさ。俺はそんな器じゃないけど…誰かが安心できるんだったら嬉しい。そのためのファンサ!」
俺一人の力なんてたかが知れてる。それでも俺が戦ったり、カウンセリングをしたり、ファンサービスをすることで誰かが救われる、安心できる、笑顔になれるんだったらそれだけでお釣りがでるってもんだ。
「ッチ」
「はい、じゃあ撮るよー…はいチーズ!」
爆豪は眉間にシワが寄っていたけど彼としては新たなる一歩だろう。女の子たちも喜んでくれたようで良かった。
「なーに拗ねてんの?」
「拗ねてねェ」
「ふーん?」
大方デートを邪魔されたのが嫌だったんだろう。お前は俺をこんなにも独占しているのにまだまだ独占し足りないようだ。
*
*
「シェフ、ごちそうさまでした」
「ありがたく思えや」
「はいはい、ありがとうのちゅー」
パンケーキのあとはちょっと服を買って晩ごはんの買い出しに行った。
そして帰宅してから1時間も経たないうちに食卓に並んだスペイン料理の数々。俺がオーダーしたものだけでなくデザートのプリンみたいなものまで仕込んでたから流石だ。
映えすぎて語彙力失うし、美味すぎて語彙力失った。今はデザートをふかふかソファーで堪能中。
頬っぺたと薄いけど柔らかい唇に甘さを付け足してあげる。これだけできっと、デートを邪魔された不機嫌さはチャラだ。
数回食み合い、最後に額にキスをして離れる。
「何やってんだ?」
「トゥィート、お前もしたら?」
「しねぇよ」
「ファンサ!」
「それ言えば何でもすると思っとんのか」
「あれ?違った?」
校長や他の教師陣たちの勧めもあって始めた公式トゥイッター。俺が呟くことは専ら食べ物と番組出演に関して。まぁまぁ需要はあるらしい。
爆豪も公式で”爆心地”のアカウントはあるけど大体スタッフが代行で出演番組の宣伝してるだけ。
「…で、んー…久々の休日満喫できました。フォロワーの皆さんもお気遣い…ありがとう、ございました…っと」
「食いもんばっかじゃねぇか」
「何?お前の写真載っけていいの?ならパンケーキあーんのところ撮ればよかったなぁ」
「今撮りゃいいだろーが」
そう言って隣に座る…座るというより半身を預けている爆豪。写真のお許し出たからまぁいっか。
「つか、重い。筋肉の塊」
「あ?フツーだわ。スマホ貸せ」
「うげっ」
なんつーか愛情表現が痛い。ヘッドロックしながら写真撮ろうとすんなよ!撮られたものは俺をヘッドロックしながら挑発的に笑う爆豪。そして、不機嫌さを露見させている俺。
ある意味どちらとも敵みたいな顔してるわ。
「ねぇもっかい撮ろうよ!」
「お前にゃファンサしねェわバーカ」
ファンサじゃなくても十分甘やかしてるくせによく言うわ………しゃーなしこの写真使うか。
「え?結局トゥィートすんの?」
「お前の間抜け面晒すだけ」
「!!?いや!それやめて!!俺のイメージ崩れちゃうって!!!」
「あ〜ん?そんなん知るかよ。最後の一口をメス顔で頬張るとかギャップ萌えじゃねぇーか」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」
時既にお寿司。違った、遅し。
”メス”と一言だけ添えられたトゥィートは送信済みだ。諦めよう。今から爆豪のスマホを奪ってそれを削除するなんてできない。
悟りを開いて俺もトゥィートしとくか。
パンケーキに新しい洋服姿、夕飯の爆豪シェフのスペイン料理とダブル敵顔ショット。
この4枚に俺の一日が詰まっている。久々に充実した日だったなぁ。まだ21時前だけど明日は出勤だからさっさと寝よう。
「シャワー借りるわ」
「もう寝るンか?」
「明日あるし」
「の前に今日の分のお礼してもらわねーとな?」
「…………………は?ん?さっきのちゅーは?」
「足りんわボケ凪」
人のことをボケナスみたいにいわないでよ。
ある意味現金なのは、こいつも変わらないと思いましたまる。
*
*
おまけ
【爆心地】フォロワーの発酵を促進させるヒーローがけしからん件【カーミング】
001発酵名無し@フォロワー
爆心地とカーミングが目の前でパンケーキデートしてる。ヤバい、私明日死ぬの???
002発酵名無し@フォロワー
いっちおつ、kwsk
003発酵名無し@フォロワー
ま?
004発酵名無し@フォロワー
>>002、003
ま。写真撮りたいけどヒーロー法に抵触するから撮らないっ…けどぉ…ッ!!
【概要】
都内某所のむちゃ人気で予約すらできない招待制のパンケーキ店。わいは職場の先輩のクライアントからもろたチケットで来た。
暴君爆心地が君主カーミング誘ったっぽい。甘い物好きで有名な君主様の笑顔で死にそう。
爆心地は君主様といると眉間のシワがなくなるっていうの本当だった。何あの優しい眼差し。二人の世界が出来上がってる。
005発酵名無し@フォロワー
何だよそれ……ただでさえ匂わせトゥィートや番組でイチャついてるのに…これ以上はやめてェ
006発酵名無し@フォロワー
ちな君主様は何をお召し上がりで
007発酵名無し@フォロワー
>>006 とろけるツインツインフルーツスターアンビシャス クソ甘な生クリームとフルーツのパンケーキ
暴君はサーモンon the たまたまポップポップ〜whit アヴォカードゥ〜 アボカドの発音よすぎて学の違いを思い知らされた
008発酵名無し@フォロワー
>>007 どこの店かわかた。君主様かわいいムリ
009発酵名無し@フォロワー
>>007 そりゃ天下の雄英だぞ。しかも二人とも学年上位の成績だったって話じゃないか
010発酵名無し@フォロワー
二人セットの事実だけでしんどいのに、完全に付き合いたてのかっぽーじゃん。殺す気かよ
011発酵名無し@フォロワー
この後は爆心地のお家に行くのかな?トレーニングルームでトレーニングして、そのまま汗だくおせっせ
012発酵名無し@フォロワー
そして何かの奇跡によって御子様、爆誕
013発酵名無し@フォロワー
>>011 君主様が右、異論は認めん
014発酵名無し@フォロワー
>>013 わいも君主様が右だと思うけど、あのドSがどのように暴君に屈服するのか非常に興味がある
015発酵名無し@フォロワー
>>014 受け入れてあげるけど、主導権は君主様
016発酵名無し@フォロワー
>>014 暴君を挑発、誘い受け
017発酵名無し@フォロワー
発酵しすぎて草
018発酵名無し@フォロワー
草どころか竹のように生える腐女子
019発酵名無し@フォロワー
001だけど、今ね君主様が暴君に「あーん」してもらってた。店内全員の視線がそこに集中してる。てか爆心地、周りに見られてるのわかっててしてる。は?ふざけんなありがとうございます
020発酵名無し@フォロワー
そこかわっっってえええええええええ
021発酵名無し@フォロワー
これで左右確定したな
022発酵名無し@フォロワー
>>019 裏山、実況乙
022発酵名無し@フォロワー
>>019 どんだけ前世で徳を積めばいいんだよ
023発酵名無し@フォロワー
>>022とりあえず育ててるミニトマトに毎朝おはようって挨拶してる
〜数十分後〜
097発酵名無し@フォロワー
今北、爆心地がカーミングをデートに誘って流れでセック○して結婚したってことでおk?
098発酵名無し@フォロワー
>>097 はやるな、最初しか合ってねぇぞ
099発酵名無し@フォロワー
>>098 たぶんいずれ結婚する
100発酵名無し@フォロワー
>>098 結婚しないわけがない
101発酵名無し@フォロワー
>>098 実は既に結婚してる
102発酵名無し@フォロワー
>>100 キリおめ
キリ番だからきっとそれ現実になる
103発酵名無し@フォロワー
現実になったらまた集合しようぜ
〜同日夜〜
335発酵名無し@フォロワー
【速報】君主様の計らいで写真とってもろた。君主様が私のスマホ触った。家宝にする。
マジで君主、マジで王様。むしろ神。耐えきれず声かけてしまったんだけど神対応過ぎて先輩と一緒に叫んだわ。一生推す。
あと二人とも良い香りした。爆心地も映ってる。もう死ぬ。そして二人は晩ごはんの買い出しに向かいました(察し
336発酵名無し@フォロワー
>>335 写真みたいけどそれこそヒーローのプライベート法的にアウトか。ちくせう、晩ごはんって…(察し)
337発酵名無し@フォロワー
>>335 君主様の懐の深さよ。ファンサしない、で有名な爆心地をも懐柔するの流石。でも夜は(察し)
338発酵名無し@フォロワー
察しすぎて悟り
ねぇ、君主様のトゥィート見てよ
339発酵名無し@フォロワー
(安楽死)
340発酵名無し@フォロワー
(爆死)
341発酵名無し@フォロワー
(腐敗)
342発酵名無し@フォロワー
腐って朽ちてるフォロワーwwww
343発酵名無し@フォロワー
ちな爆心地も
344発酵名無し@フォロワー
いっちの報告と照らし合わせてしんどさ倍増
345発酵名無し@フォロワー
こりゃ結婚してる。夫婦やん
346発酵名無し@フォロワー
脳内回路が爆破されたから冷水浴びてくる
347発酵名無し@フォロワー
ちょっと私も冷凍庫飛び込んでくる
*
*
「運動した後の酒はうめェな」
「マジ糞下水煮込み…ッくっっそ、俺明日出勤だわっ!!」
「へっぴり腰晒すなよ」
「駄犬が…ッ」
爆心地 × カーミング = 発酵食品製造工場
_
_
_
匿名様リクエスト 鎮静剤くんとデート
文字数7,000字超えるとか自分で笑ってしまった。オタクだからさ、妄想が止まらなくって。元ちゃんねらーってのもありましてね?ハハッ(夢の国のネズミ風)
ほのぼのとしたデートを書きたかったんです。うん、ほのぼのってなに?楽しかったからいいや(自己満)
リクエストありがとうございます。
- 33 -
[*前] | [次#]
小説分岐
TOP