私の彼は?

公安局、会議室。

「いや、プライベートなので応えられません」

「万が一のあるご時世ですので…信頼のできる人物でないと困るんですよ。身辺調査も行いますし」


公安の会議室に呼び出されたかと思ったら、少しピリついた空気が流れる。

定期的に行われるミーティングという名のアナライズ。

何でも情報漏洩があったらしいから捜査に参加する人物の人間関係にも敏感になっている。

だからって……


「で?貴女の親しい人物は誰ですか?」


そして、冒頭へと戻る。

目良さんにはとてもお世話になっているけど……この場合の親しい人物というのは、恋人だ。


「言いにくいのか、それともいないのか」


失礼な。こちとら引く手数多の容姿をしているのよ(エンデヴァー談)。それを真に受けている訳ではないが、それなりにアプローチされているし…彼だって顔は割りと誉めてくる。


「いますよ……信頼のおける人物です」

「敵と繋がっているかもしれません」

「ッ!私が視てるんだからそれは絶対にない!」


公安の人たちは全員賢い。勉強ができるというだけでなく、ヒーローを取りまとめる機関であるため全てにおいて高い能力が求められる。


「その貴女が敵の罠に陥っていないとも言い切れませんよ、ヒーローハーツ」


だからこうやって行う尋問も目的を果たすまで逃がしてはくれないようだ。頭が固いのはここの人たちの欠点だな。


「正直に言いますと…恋人らしき人物がいることは判っているんですよ。だから身辺調査をしなければ、貴女はここにはいられません」


半ば脅しだ。いるのが判ってるんだったら人物の特定は容易いはず。有名人な彼だから尚更ね。


「それで、誰なんですか?」

「言わないでもわかっているんでしょう…?」

「貴女の口から確証が欲しい」


並行線の話は私が折れて近づかなければ一生交わることはない。


「……身辺調査は要らないですよ、」

「…ヒーローか警察か公安ということですか?」


判ってるんじゃん。目良さんの意地悪。


「それは…ヒーロー「爆心地ですぅ…」……はい?」

「…………え?」

「爆心地、ですか……?」

「????」

「ヒーローデクかヒーローショートだという声が上がっていたのですが……そうですか、彼ですか」

「!!?!?」

「私の見解はヒーローショートだったんですがね。エンデヴァーが貴女推しなのもありましたので。賭けていたんですが…残念、全員外れです」

「ん"ッ!??」


私の恋愛で賭け事しないでいただけますか?!というかバレてなかったの!?どちらにせよ言わなければいけなかったんだろうけど…


「さいっあく…」

「人の恋路を邪魔するなんて無粋なことはしません。彼なら身辺調査は要らないですね」


ただただ彼と付き合っているという事実をお偉いさんに報告しただけじゃんか!

ニヤけた彼の顔は何か言いたげ。誓約でここでは個性を使うことができないのがもどかしい。視なくても楽しんでるのは十分わかるけどさッ。


「彼には学生時代から恋人が居たそうですが貴女だったんですね」

「パワハラかつセクハラです!!」


あ"あ"ぁ"ァあ”あ”あ”やってしまったぁあ”!!


「ライバルは多いでしょうが…あなた方は大丈夫でしょう」


ここで仕事し辛くなった。



 *


 *



「っていうことがあった」

「ふーん」


私の部屋でくつろぐ彼はこの話題に対して興味がないの?

公安の人たちはバラすなんてことはしないだろうけど…いつかバレると思う。


「公表した方が良いのかなぁ…って少し考えた」


同期は私たちの関係を知っているけど同僚は知らない……フォロワーの多い彼の周りはきっとパニックになる。


「ンなの籍入れたときで良いだろ」

「……ん」


ずっと一緒にいられる。そんな願いを夢見るほど子どもじゃない。私たちは"ヒーロー"で明日何があるかわからないから。

それでも、彼の口から将来について考えていると言われたみたいで嬉しい。


「とりあえず脱げや」

「ムードって言葉知ってるかな???」


自ら服を脱いで私の服にまで手をかける。


「だぁ”あ”ーー!?!」

「おい、抵抗すんなや」

「するわよ!」


結局脱がされてしまったけれど襲われる感じはなくて…素肌から伝わる体温は慈愛に満ち、安心を与える。


「……いずと轟くんとは何もないからね」

「ンなの知っとるわッ」

「自分の名前が出なかったの悔しいんだ」


いずや轟くんとの方が仲がよくてどちらかと付き合っている、でも自分の名前は一切上がってこなかった。それが癪らしい。

だからって脱がせることはないんじゃない?

外でデートするのも今じゃ年に4回あれば多い方。チームアップだって大規模なテロとか災害とかがなければあまりない。管轄だって別だからね。

所有欲は私にぶつけながらも、他の人に晒すことはなくなった。キスマークも学生のときみたいにバカみたいに付けることはなく、慈しみが溢れたときと酔ったときつけるようになった。

……今は二人でこのちぐはぐな感情を育てていけばいいんじゃないかな。


「でも、まぁ……公表しなくていっか」

「まだな」


一部の人に報告した私たちの関係は高校生から。

もちろん、私がヒーローになるきっかけになったいず。一番最初に泣かせてくれた轟くん。どちらも私からしたら大切でやっぱり支えたいと思うヒーローだ。

それでも勝くんの存在の前にその姿は霞んでしまう。


私の彼は、私の世界を壊して愛してくれた爆豪勝己さんです。











水仙様リクエスト dislikeプロヒ
アラジンは途中まで書いたんですけどね…
無理でした!申し訳ありません!!
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