御所望は私ですね。

3年。


「お、俺…この展開知ってる」

「奇遇だな上鳴…俺も知ってる」

「先生呼んでくるわー。切島、子守りは任せたぞ」

「任せとけ!子どもん時の爆破なら朝飯前だぜ」

「はぁーーなぁーーせぇーー!!クソ野郎!!」

「お、緑谷、環心ちょうどいいところに」

「どうしたの上鳴くん…って、かっちゃん?」

「察し」


自主トレを終えて寮へと戻れば人だかりができていた。そこでは幼児特有の甲高い声がしてヒーロー養成も担う高校には不釣り合いで浮いている。

暴れ方は可愛らしいものではなく小規模な火花がしきりに起こっていてその度に切島くんが笑いながら硬化していた。


「個性事故?」

「サポート科の子に告白されてて」

「こっぴどく振ったら滝泣きされて」

「そしたら涙に巻き戻りの成分あってこうなった」


たぶん、否十中八九個性事故だろうなとは思ったけどけどこの学校には時間操作系の個性の持ち主多すぎではないだろうか?本来であれば貴重な個性で重宝されるようなものだ。

勝くんを抱えてる切島くんや後ろでぽけーっと傍観している轟くんも幼児になって周囲が騒いだんだんだけど覚えていらっしゃいますか?うん、朧気だな。


「植物にしか効果ないはずなのに〜って慌ててたんだけどまぁ様子見だわ。相澤先生来るまでどーにもなんないのよ」

「植物…花っちゃんだからじゃない……?」

「はぁーーなーーーせぇーーー!!!」


告白してくれた女の子に泣かれるって一体どんな振り方をしたんだろうか…一応私は彼と付き合っているんだけど、彼の人間性が本当に心配になる。恨まれて刺されたりとかしそう。

切島くんの腕の中で暴れている勝くんは私といずの姿を見つけてその紅い眼が飛び出さんばかりに見開いている。


「ンでクソデクがここにいんだよ!!!」

「えー、やっぱり君は僕だけ集中砲火するんだね」

「でも私には反応してなくない?」

「んんがぁぁあ!!」


いずには既視感からその存在を幼馴染みの緑谷出久と結びつけることができたらしいいけど、私の名前は出ることはなかった。

年齢的には既に保育園で出会っているはずなのに認識されてないのだろうか。切島くんの腕から飛び出た小さい彼は記憶も幼児化しているらしく、いずだけを攻撃している。


「痛い、痛い、痛い…というよりはくすぐったいよかっちゃん」

「デクのくせにいっちょまえに俺の攻撃に耐えてンじゃねェー!」

「やっぱり理不尽」


ガルルと威嚇する子猫の如く彼は周囲を警戒している。麗日さんはしきりに可愛いと誉めちぎり、梅雨ちゃんは頭を撫でようとしては手を弾かれ、芦戸さんはスマホで撮影中。


「目デカッ!ほっぺぷにぷに!」

「爆豪ちょ〜カワイイ!」

「ンなの知ってんだよ!触んな!」

「コイツ今自分のことカワイイって認めたぞ」

「周りから言われてるんでしょうね。まぁ実際黙ってれば光己さん譲りのキレイな顔だし」


そう、彼はかわいい。幼児特有のぷにぷにボディや血色の良い頬に柔らかい髪の毛と薄い色素のまつ毛。キッズモデルしてますと言われても納得してしまう可愛さである。

けれど彼は怪獣と成り果て生意気さ全開で言うことなんか聞きやしない。好物やヒーローで懐柔することもできず力でなんとか大人しくさせている。そのやり方では子ども(勝くん)は逆に反抗したくなるものだ。白目剥くな可愛くないぞ。

暴れさせないために何故ここにいるのかを説明してみたが、そんなものは知らないというように囃し立てていた上鳴くんを蹴っていた。瀬呂くんのテープで捕捉しても噛み千切る。


「ねぇ勝くん、良い子にしてないと光己ママがオールマイトのハグイベント連れていってくれないよ?せっかく応募が当たったんだから」

「何でソレ知ってんだよ!!」

「さて何ででしょう?」


子どもと仲良くなるのは昔から得意でまずは共通点を見つけること。この場合はイベント参加を知っているということかな。それとさりげなく母親をチラつかせる。

一番楽しみなことが叶わないよって言うのも効果はてき面だろう。クリスマスが近ければサンタさんは良い子の所にしか来ないって言えば暴れていた子も大人しくお昼寝をしてくれる。


「お姉さんは物知りだからね」

「シオンみてェ……シオンは俺のなんだぞ!!」

「え?」

「お?」

「やだカッチャンおませさん!」


しゃがんでいた膝に飛び乗った彼は目を輝かせて私の知らない事実を露呈する。既にキスは済ませているらしい。ちょっと待って、お昼寝の時間にキスするマセガキふざけるな。

勝くんの記憶の中にいる人物と一致したのだろうかはわからないがいずが噴き出して倒れるのがわかった。頬にキスするみたいに耳打ちする彼は見紛うことなき子どもなのに、恋する乙女であり思春期の青年のようだった。


「              」

「それお姉さんに教えてよかったの?」

「俺はユーゲンジッコーの男だから問題ねぇよ。心の準備しとけよシオン」

「……切島くん、パス」

「えへ?俺?」

「じゃあ飯田くんパス。普段の彼の悪行でも教えてあげて」


大人しくなったタイミングで私のお守りは辞退させていただきたい。背徳感ではないが純真な幼子を弄ぶのは良くないだろう。

心の準備をしとけと言った彼に返事をせずパスした先は飯田くん。何でもキチキチきっちりの飯田くんと勝くんは相性が悪いからまた騒ぎだすかもなと思ったけれどそんなの知らない。


私は彼の保護者じゃない。


「ヨシいいだろう!まず君は成績は問題ないのだから素行を改善した方がいい!そもそも今回は未来の君が起こしたことなんだ!女性には等しく優しくなくてはダメだろう!」

「ううぅ〜ッだあああ!!!はなせぇっ!惚れた女にだけいっちゃん優しくすれば良いんだよ!!お前モテねぇだろ!!」

「な”ッ?!ヒーローになる学業期間なんだからモテるモテないは関係ないだろう!」

「そんなんだからモブは人気投票もtop3に入れねぇんだよ!!」

「何をいっているんだ君は!!!俺は代々続くヒーロー一家の人間で将来も活躍し多くの人をだな!?!」

「はいはいはいはい!飯田くん、幼児と言い合っちゃあかんって!それと人気投票はランキング上がったんやから気にすることないって!」

「誰も気にしてなどいない……ッ!」


掻き乱されては更なるケイオスを呼び少し離れたところにいた青山くんの髪の毛まで燃やしそうになっている。その暴走を止めたのは峰田くんのモギモギで、安全且つ柔軟に動きを止めることができるから年少者の捕獲にこれから役に立ちそう。

いや、こんな騒がしいことが頻繁に起こったら堪ったもんじゃないわ。願わくば今後一切問題児が小さくなりませんように。


「子守お疲れ、さっきかっちゃんに何て言われたの?」

「なーいしょ」


私は彼の保護者じゃない。けれど恋人である。


『プロポーズするから待っとけよ』


そして彼の中では既に結婚相手らしい。ちょっとだけマセガキにキュンとしたのはバレなくてよかった。



「…………爆豪の子守はムリだ」



結局クラスのほとんどが引っ掻き傷や焦げた髪の毛を携えて彼を私の膝に乗せてきたから、相澤先生によって個性が消されるまで休む暇なんかなかった。



2021/04/20

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ばり様リクエスト
dislike爆豪の幼児化
ヒロインには懐くけど他には敵意むき出しボーイ

そういえば爆豪幼児化は書いてなかったね。
タイトル最初に設定してたやつから変更しました。
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