圧縮訓練2日目、朝。
「ッハ、ンッ……っふ、ね…勝くん」
「はっ……ッハ……ンだよ」
「……もうちょっと、ゆっくりッ…、ね?」
「こんくらいで、はッ…ヘバってんじゃねぇ」
「ハァ…ッ、ッハ、ハ……ん"〜だって」
「まだ、終わんねーぞッ、ンあ"…ッシオン」
この人のタフネスさを舐めていた。そして自分の体力を過信していた。
どれだけ息を切らそうが、どれだけ汗を流そうが、どれだけ訴えようが止めない。集合してから1時間。まさかこんなことになるなんて思っていなかった。
普通に一緒に走るだけだろうな、って考えていたから普通じゃないこの現状に多少の焦りを感じている。
「ロードワークって…ッ1時間もすれば十分なんじゃないのッ!?」
「ンな、ッハ生ぬりぃわっ!」
「そっちも、バテてるくせに!ンァッ…もう!」
そうして7時。
「ハァッ、ハァ、はっ…」
「はぁ、っんは…っふぅ〜きっつ」
「二人して息切らしてどうしたの?」
朝食をとっている最中に汗だくで息もたえたえに戻ってきた私たちは異常だ。走り始めた頃は涼しかったのに気温も体温も上がり、張り付いたインナーが気持ち悪い。
思わず玄関付近に倒れこみ酸素を求める。彼も繰り返し胸を大きく揺らしている。私がいるからって意地張って無理な走り込みしたでしょ。
「ロードワーク…しんど」
「爆豪とロードワーク!?よくついていけたね〜」
「二人とも汗だくすぎひん?」
だからシャワーをあびないと。7時だから逆算して…ご飯と身支度で、シャワーは15分以内に済ませないと…髪の毛乾かす時間ないな。遅刻しちゃう。
「ねぇやっぱり1時間半はバカだよ」
「うっせ」
明日は普通のロードワークでお願いします。
*
*
圧縮訓練ではコスチュームの変更も視野に入れていく。既にパワーローダー先生の元へ行き改良を進めている人もいる。いずもそのうちの一人。
「ねぇ、いずはコスの変更したんでしょ?どういうの?」
「腕は爆弾抱えてて酷使できないから蹴り中心にしようかなって思ってて、それのサポートアイテムをね。発目さんの既成概念に囚われない柔軟な発想で思い付いたんだ」
「それで蹴りのサポートアイテム的なやつね」
「そうだよ…………ねぇ、シオンちゃんさ、かっちゃんと仲直りしたんだね」
15分休憩。互いの進捗状況を確認するために声をかけた。なのに話の話題はそれとは関係のないこと。
「朝二人して汗だくで現れたから驚いたよ」
「勝くん酷いんだって。私が思いの外着いてきたからって、スピード速めるんだもん。時間も長かった」
「…名前呼びに戻したんだ」
今までは"爆豪"くんと読んでいたけど、あの日から勝くんだ。懐かしい昔の呼び名。深い意味なんてものはない。昔の呼び方に戻してみただけ。
「なんとなく……ね。というか、いずは相澤先生の信頼取り戻すために絶対に仮免とらなきゃダメよ」
「う、うん」
「あの時私がどれほど吃驚したか……相変わらずバカして」
「ごめんね。それと、ありがとうシオンちゃん」
あの巨悪を生身で感じていずは何を思ったんだろうか。オールマイトが戦ってきたものはとてもじゃないけど今のいずには大きすぎる。
師が示した道ではなく、これからは自ら見つけ歩むしかない。その時私は喜んで茨の道を歩きやすいように開拓するよ。
頑張ろう。ワン・フォー・オールの想い、オールマイトの想いを繋げていこうね。
*
*
3日後。
必殺技考案から完成に近づく生徒も複数。勝くんは「はっはァ!出来たっ!」って叫んでいたから順調っぽい。
そういうセンスはピカイチだから真似しないとなと思う。まずは新しいサポートアイテムの慣らしだ。
要救助者の位置情報を共有するアイテム。まずは…個性展開して視て…自動入力はできないから自分で救助者の位置を入力、ここのスピード上げないとな。共有端末は10もあればいいでしょ。
あ、武器増やしてもらおう。ダガーとクナイなら前者かな。無くなった時のためにトンファーとか……やっぱりコンバットナイフだ。銃の使用は認められなかったから、スナイプ先生の個性いいなぁ。
「オイ、上!!」
勝くんの攻撃により破壊されたコンクリートがオールマイトに降り注ぐ。個性があったときだったら軽くあしらうだろうが、それは出来ない。
「オールマイトッ2歩下がって!」
「大丈夫でしたか!?オールマイト!」
危ないと思ったときにはいずが動いていて大きな瓦礫を一蹴した。先日話したシュートスタイルがずいぶんと明確なものになっている。オールマイトも認める進化だろう。
「爆豪少年!すまなかった!」
「気ィつけろや!オールマイト!!」
順調そうに見えるけど燻った感情はあまりよろしくないみたい。結局彼は私と同じかそれ以上頑固で、プライドクソ高野郎だから……
これも一種の訓練か。
【訓連】何度も繰り返すことによる体系的な訓練。
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