中3春、帰り道。
「見つけた、クソ野郎」
「あ"あ"?」
友人が落ち込んでいた元凶とも言える彼。
「いずが屋上から飛び降りたの」
「「「!!??!??」」」
酷く驚いた様子の3人。この反応からするに負い目や焦りを感じているのは間違いない。
「屋上からワンチャンダイブ?自殺関与、罪状としては自殺教唆罪…下手したら殺人罪よ」
「マジで緑谷…」
「おい、勝己どーすんだよ」
ギリッと音が聞こえそうなほど歯を食い縛ったガキ大将こと爆豪勝己。
「……何か言ったらどうなのよ、爆豪くん」
「…………」
「まったく…こんな奴がヒーロー志望だなんて。何でヒーローになりたいと思っちゃったの?」
眉間のシワ、冷や汗、強い歯噛み。両手掌握、缶が潰れちゃう。発言の重さを今になって知ってしまった…或いはこれから起こるであろう自らの処罰や将来が絶たれたことへの絶望。
「……っていうのは嘘なんだけどさ」
「はぁ!?緑谷飛び降りてねぇの??」
「嘘かよ…吃驚させんなよ、意地が悪ぃ」
取り巻き二人は安堵の表情を浮かべるというのに爆豪はしかめっ面のまま口を開かない。一応幼稚園の頃から存在は認知していたので押し黙る傾向もわからなくはない。
「爆豪くんってさ、昔からばつが悪かったら暴言吐かないよね」
「…てめぇ調子乗ンのも大概にしろよ。マジで舐めた態度とってっとここで犯すぞ、シオンちゃんよぉ」
「口でも喧嘩でも勉強でも私に勝てないくせに」
BOOM!!持っていたジュースの缶が黒焦げになった。騙したのは私だけど今の言葉には偽りはない。
「おい、シオン。今何つった」
「爆豪くんは私に勝ったことがないって言った。あー勝ってるのは身長と体重とでっかい態度があるかー?」
再び彼の個性が手中で炸裂する。安い挑発にすぐ乗るところも成長していない。何度彼と会っても、何度彼と話をしても変わらない態度や感性から嫌忌の感情が充満する。すごく不愉快だ。
爆破と共に蹴飛ばしたゴミ。キレたら人や物に当たるのも小さい子がすることよ。
「女だから多目に見てたものを……
今…ここで、ぶっ殺す!!!!」
「ホント、懲りないわね…」
『かわい子ちゃんといい個性の隠れ蓑ぉ!!!』
「「「!?!?」」」
「ッ!? 爆豪っ!!危なぃ!!!!」
*
「こんなドブ男にィッ!俺が飲まれるかぁ!!!」
苦しい。
辛い。
息ができない。
こんなところで。
こんな奴になんか。
俺は負けたくねぇっ!
誰か…誰かっ!
真っ暗だ。胃の中がぐるぐるして気持ちが悪い。体が動かしにくいのはなぜ?頭が痛い。誰が苦しんでいるの?叫んでいるのは、勝くん……?
「かっちゃん!!!!」
「ゲホッ、っ何でてめぇがっ」
「足が勝手にッ何でってわからないけど!?!」
意識がやっとはっきりしてきた。未だに何も見えないけどはっきりと感じる。
「君が、助ける求める顔してたっ」
ああ、個性が無くともいずはヒーローだったよね。奇跡は起こるものじゃなくて起こすものなのか。全ての理に因果があるように、いずそのものが因果だったんだ。
でも無茶はダメだよ、いずのバカ。
「ハァッ…スー………こんのっ!!!!」
ヘドロ男の体内から出てきたのはセーラー服の女の子。制服からして中学生がなぜそんなところから?と疑問を持つ者は多くいたが驚くのはまだ早い。
「流脈線みつけたぁ!!!!」
あろうことか少女は自信の持ち物であろうシャープペンシルをヘドロ男の眼球に突き刺したのだ。
「あぁあ"あ"あ"!!!」
「…勝くん歯食い縛って下向いて!」
ヘドロに飲み込まれそうになっている中学生へ声をかけると、ヘドロ男の口を裂くように身体を引きずり出そうとする。
痛みからか暴れだしたヘドロ男の攻撃が少年たちを襲いかかった。
しかし……
「情けない…君に諭しておいて、己が実践しないなんて!」
痛みが降ってくることはなく、その原因はNo.1ヒーローの擁護。そして吐血しながらも少年たちの腕をつかみ、裁くは敵。
「うっそ、自力で出ろってか…っ?」
「プロはいつだって命懸け!!!!
DETROIT SMASH!!!!!!!!!」
風圧によりヘドロ男は吹き飛んだ。天候までも変えてしまうその拳に、平和の象徴と呼ばれる…その強さに震えた。
でも私にも気を向けてほしかった。
【偉力】
すばらしい効果をあげるような力。優れて力強い。
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