ヘドロ事件後処理中。
「いって…」
オールマイトが退治したヘドロは四散しているがそういう個性だし集めてしまえば平気だろう。それよりも、あの状況でのパンチはいただけない。男子2人の手は取っていながら私はフリーだったんですけどね。
逃げ出せない子だったらどうするのよ。とごちりながらもオールマイトは私が一人でなんとかできると判断しての行動だったんだろう。怒りと恥で表情は読めなかったけどそういうことにしておこう。
「君!あのアクロバットは何だ!?凄い身のこなしだったよ!でも敵に攻撃するのは暴走を助長するからダメだよ!」
「それよりも怪我をしているじゃないか!頭を打っているのか…早く病院へ」
頭が痛かったのは、ヘドロ男に捕まるときに何かしらでぶつけてしまったようだ。気分が悪のも頭打ってむち打ち症になったのか。出血もしているらしく制服が汚れていた。
「痛みは酷く…ないです。けど、吐きそう、っ」
「何だってぇ?!早くこっちへ!」
芸人さんよろしくリアクションをするヒーロー。ユーモアを忘れない様子にさすがだと思いつつ吐き気はピークになる。
「う…も、…むりっ」
ゴポッ、ウゲェッ…
「え、嘘でしょ?」
「…ヘドロ」
道路へ吐き出したのはヘドロ。敵の体内に少なくとも20分は捕らわれていて、尚且つ取り込まれそうになっていたのだから…
「…う"ぇ"ぇっ」
「早く検査受けさせろ!救急車ァ!」
*
「災難だったね、胃洗浄したからもう大丈夫。頭も軽い脳震盪だよ」
「身体のことに関しては個性でわかるから心配してないよ、お父さん」
「そうだね。どうする、一緒に帰る?お父さん今日は20時までなんだよ」
運ばれたのは幸か不幸か父が勤める病院。
身体は心配してないけど…ただヘドロが体内にあったということがショックなんです。父と話していると一応事情聴取が行われた。被害者ということで直ぐに解放され、早くシャワーを浴びて寝たいという欲求には勝てず警察が手配してくれたタクシーで帰ることになった。
そういや、爆豪くんも捕まってたんだっけな。いずは飛び出してきたみたいだったし。二人とも大丈夫なのかな。
夕日に染まるタクシーの中小さくため息を吐いた。
「!、と、めてくださいっ、ここでいいです!」
支払いはタクシーチケットなるものを警察から給付されたからそれだけ渡すと急いで降りる。頭の傷は、胃洗浄で体力を消耗した私に回復系の個性は使えないということで、ガーゼと包帯の処置だけだ。
「爆豪くんっ」
つり上がった目に怒りを孕んでいる……けど、どこか凪いだ雰囲気も感じさせる。姿を見つけて声をかけたはいいものの、嫌いな人物との会話なんて何からはじめていいのかわからない。
「ぁー…怪我は?」
「……何で助けた」
「助け?」
互いに質問を質問で返すようなやり取りに進展は一切ない。助けた?助けたのはいずで、ヘドロ男への攻撃も自分が逃げ出すため。
「庇っただろ、んで頭打って気絶しやがって。イラつくんだよ!クソスクエアが!」
「いちいち口が悪い…」
確かに現れた敵から咄嗟に彼を庇った。感謝を言われるならまだしも文句を言われる筋合いはないのに。
「俺は守られなくていいンだよ!」
「私が勝手にしたことだからっ、好きでしたことだからぁ???」
普段は大きな声を出すなんてことは中々ないから自分でも驚いてしまう。良く言えば誇り高い、悪く言えばプライドが高くて傲慢で高慢野郎な彼に感謝の言葉を求めるなど間違っていた。
言いたいことは言ったようで彼は帰っていく。
「心配した私がバカだった」
夕日に虚しく消えた声を余所に、渇望した時を迎えに行く。
【思量】
あれこれ考えること。
- 6 -
[*前] | [次#]
小説分岐
TOP