時交はさす

セントラルビル、7番ロビー。

「ごめん、遅くなって」


あれ?まだ全員揃っていない…女子たちは身だしなみに時間かかるから…まぁ仕方ないか。

コスチューム姿はいつも見ているけど正装姿は新鮮だな。皆似合ってる。飯田くんのスーツは私服なんじゃないかっていうくらい馴染んでいるし、轟くんは…物語の王子様が着てそうな出で立ち。白スーツなんて君の顔無しには似合わないだろうな…

麗日さんかわいい、コスチュームと同じピンクが似合ってる…なんかこっちまで照れるな。

耳郎さんはパンクなショッキングピンクに黒のジャケット。八百万さんは薄い黄緑色のドレスでゴージャス。

メリッサさんも青と白のスカートがとてもよく似合っている。

新鮮な気持ちでパーティに参加するけど、新鮮すぎて緊張してきた……。


「爆豪くんと切島くんの携帯に応答がないがパーティ会場に行こう」

「そうだね、先に行って……」


ビィィィイイーーー!!


「「「!?」」」

『警備システムによりIエキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手……また主要施設は警備システムによって強制的に封鎖されます』


パーティー会場を目前に封鎖されてしまった道に立ち竦む。

Iエキスポエリア?なら封鎖されたのはこのエリアだ。爆発物でロボが厳戒態勢…いったいこの施設になにが起こっているんだ?


 *


 *


「聞いた通りだ。警備システムは俺たちが掌握した」


敵!?

パーティー会場で談笑し、オールマイトの挨拶に入ろうとしたらあの警報。

タルタロス並みの警備システムを誇るI・アイランドに敵が侵入するはずは。人質はこの会場だけではなく島にいる全員…警備ロボを手中に納められ手を出せずに床に座り込むことしかできない。

本来であれば敵を捕獲するための捕縛装置がパーティ会場にいるヒーローたちに襲いかかる。ナイフ程度じゃ切れない頑丈なものだ。システムを奪取しないと解放は厳しい。

奴らの狙いは………博士たちに何をさせる気なの…?護身用に持っているナイフじゃ全員を倒してヒーローたちの捕縛装置を斬るなんてできない。ましてや彼らの個性もわからないし、人質に被害が出るかも。

私は捕獲されなかったけど、システムを掌握されているなら会場に来ている個々を調べるなんて容易い。ヒーローの卵とバレて捕まってしまえば本格的に打つ手がなくなるッ。それは何としても避けたい。今は顔を伏せて機会を待つんだ…


オールマイト……?

何かを喋っている?救援を求める算段があるんだろうか……


 *


「敵の動きがおかしくないか…?」


隣にいた研究者が呟いた。1時間も経っていないのに敵は慌ただしく動き始めた。ボス的な奴はしきりに無線の向こう側とやり取りをしている。


「ガキどもを逃がすなっ」


ガキ………嘘、嘘でしょ?オールマイトがいずも来ているんだって言っていたけどそんな無茶はしないわよね?個性が使えないのがもどかしい。使えたら状況を把握できるのに…

緊急事態だけど勝手に使って…くっそ、ここにある機密が重要すぎて判断しかねる…

敵の人数はどんどん減っていくけどこっちの緊張感は高まるばかりだ。きっといずがいる。いず一人でこんなに事が順調に進むはずがないから、協力者も複数…バカじゃないの?ヒーローはある意味バカだけどさぁッ…

80階というワードが聞こえるということは上に向かってる…システムを取り返すために動いているんだ。


「俺が行くまで制御システムは死守しろ。今からそっちに………、おい、お前」


敵が出ていく、ボスっぽいのの他は恐らくそんなに強くないからイケる…そう思ったのに…


「グレーのドレスのお前………ずいぶんと若い研究者がいると思ったがそういうことか。お前があのお方が言っていた”全知”って奴だな」

「!?」


首を掴まれて立たされる。レディにそんなことするなんて…ッ下品極まりない手を離してよっ。

じゃなくて…私の事を全知と呼ぶのはアイツらだけだ。ということはコイツは敵連合との繋がりがある。


「良い土産だ…お前も来い」


 *


「顔は写真で知っていただが…ガキにしちゃ上玉じゃねぇか」


薄暗い部屋に連れてこられたと思ったら汚い顔が迫る。気持ちが悪い。こいつの個性はわからないけれどこれ以上好き勝手されるのは私が耐えられない。


「そうはさせねぇよ」


!?コイツ金属を操る個性か…内腿に仕込んでいたナイフがスリットに触れ抜き去られたと思ったら変形して両手首を固定する。


「物騒だなぁ…後で回収して可愛がってやるよ」

「ップ、…汚い顔をこっちに向けないで、クソ敵」

「このアマッ!!」

「ウ”ッ!?」


左頬を殴られて口を拘束される。しゃべれないようさせたかったのか、唾を吐きかけられたことに憤怒したのか。こいつから伝わる怒りは両方だろうな。

殴ったことで満足したのか制御システム室に向かう敵。くっそ思いっきり殴りやがって。口の中に広がる血を吐き出すことすら許されない。

不幸中の幸いはこの部屋に監視役の敵がおらず拘束されたのも手首と口許だけ。

手首に巻き付いた鉄は不純物も多く簡単には割れない…でも動ける。

これは緊急事態だ。


「(知的財産なんて言っている場合じゃない)」


不格好なまま走り出したのはエレベーター。敵がいずたちに夢中になっている今がチャンスだ。


向かうのは最上階の管制塔。
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