I・アイランド、アカデミー。
「ココロってやっぱり頭良いわ!」
「アカデミー生に褒めてもらえるなんて光栄ね」
「お世辞じゃないわよ?レセプションに研究者として参加するんだもの!」
「ありがと。メリッサ・シールド様様よ」
治療のためアカデミーの短期留学生として滞在しているI・アイランド。立ち入りが制限されている施設ではあるが元々推薦入学を貰っていたらしいし、父のコネもあってここで勉強ができている。
歳上さを感じさせず気兼ねなく話せて仲良くなったメリッサは、父親がここの技術者だ。彼女もその血を継いで優秀な成績を修めているしその好奇心は絶えない。
ちなみにココロと呼ばれているのは名前を正しく発言できないから、ニックネームを勝手につけられた。
「恵まれ過ぎた環境に感謝ねぇ…」
「環境に甘んじる事なく取り組んだ結果よ。目の調子はもういいの?」
「ええ、すっかり」
ここへ来て1ヶ月ほど。培養した網膜神経節細胞は拒絶反応を起こす事なく視神経たちを再生した。研究者の個性もあって治療患部の時間を進めて、以前の視力と変わらないまでに回復している。日本では考えられないくらい全てが瞬間に過ぎていく。
「でも逆に個性の方はさっぱりだからね。こんなに使わなかったのいつぶりだろう」
「ココロの個性は特別だからね。技術を盗まれないようにっていうのはわかるけど、この島で個性の使用禁止なんて異例よ?」
この島では、世界中の優秀な技術者や科学者が集まって日々、世のため人のため、ヒーローの為に研究を行っている。家族でさえも守秘義務が課せられ、旅行も禁止されるほど秘密がいっぱい詰まった場所なのだ。
私の個性ではそれらの知的財産権を侵しかねない。そのためI・アイランドでの個性使用は自身の非常事態発生時のみ、という条件付きでここの研究所に出入りできるし治療も受けられている。
「個性使わなくて細胞構築のアドバイスしちゃうんだからやっぱり天才的な頭脳よ。技術部でも働いてみない?」
「生憎、日本でヒーローになるための勉強するから居られないよ。Iエキスポが一段落したら帰るし……来週くらいまでだっけかな」
「そっかぁ……Iエキスポ中はアカデミーが休みだから、次に会うのは明後日のレセプションパーティーかしら」
「チュー・サン先生の助手として個性医療推進コーナーにいるから、プレオープンの時にでも遊びに来てよ」
明日は私の目を治療したチームと一緒にプレゼンの最終確認をして、明後日のプレオープンに備える。
日本からもヒーローが来るらしいけど知ってる人に会えるかしら。
*
*
「マイトおじ様〜〜!」
跳ねながらオールマイトに抱きついた眼鏡の少女。やたら親しげに話しているけど……ああ、その人が古くからの親友じゃないのか、個性でずっと若い姿なのかと思った。
彼女に案内されて向かったのは彼女の父親で、オールマイトの親友である博士の研究室。
ノーベル個性賞を受賞して、アメリカ時代のオールマイトの相棒!そして彼のコスチュームを全て製作した!あのデヴィット・シールド博士だ!
興奮していつもの癖が出てしまった…博士ちょっと引いてたかな…博士の少し陰った笑顔に申し訳なくなった。
「あそこのパビリオンもおすすめよ!」
パビリオンの中はデヴィット博士の発明を元にしたコスチュームやサポートグッズがたくさんあって、改めてI・アイランドの科学者たちのすごさを実感する。オールマイトの同行者として連れてきてもらってよかった…
僕ももっと努力しなきゃ。
「楽しそうやね」
「だあっ、う麗日さん!?何でここに?」
「楽しそうやね」
「2回言った!!あっ八百万さんに耳郎さんまで!」
こんなところでクラスメイトたちに出会うとは…オールマイトと僕の秘密はバレずに済んだけど、女子ってお喋り好きなイメージだからバレないことを祈ろう。
*
上鳴くんと峰田くんはカフェでバイトしていたし、飯田くんは家族の代理で。かっちゃんと切島くんは体育祭の優勝景品で。轟くんも代理…
ヒーローを目指すものとして、ここのイベントには興味があるようだ。たぶんプレオープンには来れずとも、明日の初日にはクラスメイトのほとんどが図らずしもここに来るってことになるのか。
てか、かっちゃん!こんなところで轟くんに喧嘩売らないで!暴れないでよ!
「ふふっ、雄英高って楽しそうだなって」
「少なくとも退屈はしてないですわね…」
「確かに…」
「私のクラスメイトにもココロっていう日本人がいるんだけどね、皆と同じくらいの歳で研究チームに所属してるヒーローの卵なの。年下なのに尊敬するわ」
「へぇー、若い日本人も活躍してるんだ」
「私たちと同じくらいってことは学校には行っとらんの?」
「アカデミーに短期留学してるのよ。このIエキスポが終わったら日本でヒーローになるために帰っちゃうから寂しいわ」
「研究者でヒーロー目指してるとか才能溢れすぎ」
「医療チームとしてパーティにも参加するから、あとで紹介するわね!」
メリッサさんの声はとても明るくココロさんの事を語る。学生の身分でありながら医療チームに所属するほどの頭脳を持っている。その道ではなく、ヒーローになるほどの個性持ちで朽ちることのない目標が彼女にもあるんだろうな。
あとで個性の事や通っている学校の事を聞いてみよう。
*
一時解散後メリッサさんの研究室へと案内されて、貰ったフルガントレット。僕の個性の使い方をみて制御ができていない事を見抜いたみたいだ。凄い洞察力。
彼女の”助ける”と僕の”救ける”。対象は違えど、目指すものは同じヒーロー。
「さっき言ったココロはヒーローを支えるためにヒーローになるんだって」
「ヒーローを支える……」
どこかで聞いたことのあるフレーズだ。たしか僕の知っている彼女もそんなことを言っていた気がする。
「私は無個性だから科学面でしかサポートできないけど、彼女には個性があって…ヒーローを支えるための頭脳や実力もあるわ。戦火に飛び込みヒーローを導く姿は真似はできないけど、私は彼女の考えにとても共感したの」
聞けば聞くほどシオンちゃんにしか思えない。
「実は彼女怪我をしていて、ここへ来たのもそれを治療するためだったんだって。優秀すぎて引っ張りダコになっちゃってるけどね」
こんな偶然が2つとあるわけない、彼女だ。あの留守電以降繋がらなかった電話の先はここだッ。
「そのココロって
、あっもしもし」
『何をしている緑谷くん!集合時間はとっくに過ぎているぞ!』
「あ…」
メリッサさんに聞くことはできなかったけど、きっと彼女はここにいる。シオンちゃんと話したいことはたくさんあるけど、今は急いで集合場所に行くことが第一だ!
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