職場体験初日、電車ホーム。
「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
「はーい!!」
「伸ばすな。"はい"だ芦戸。くれぐれも失礼のないように」
いよいよ待ちに待った職場体験だ。浮かれているのは返事を伸ばした芦戸さんだけではなくてほぼ全員。
「スクエアはどうせショボい事務所だろ」
「小さい事務所だけど実績はあるし、先輩も教育されて強くなったって言っていたからショボくもクズでもないわよ」
「俺のが上だわバーカ」
幼稚な言葉で煽ってくる爆豪くんはNo.4ベストジーニストのところに行くらしい。絶対順位だけで選んだでしょこの人。
「せいぜいもがきなさいよ」
「テメェこそ足掻けや」
絶対そこに合ってないと思う。
全員が職場体験に興奮していると言い切れないのは負の感情が時たま現れるから。その筆頭は飯田くん。復讐心でいっぱいだ。
「飯田くん」
「今度は君か」
「あなたはヒーローなの。それを履き違えないで」
「君にはお見通しということか」
大丈夫、忘れないと去っていった彼はとても危うい綱渡りをしている。いずと麗日さんが声をかけたにも関わらずその気持ちは伝わっていない。この職場体験は嫌な予感しかしない。
そんな彼はヒーロー殺しステインがいる保須市に向かう。
*
「初めまして、雄英高校ヒーロー科1ーA環心詩音です。よろしくお願いします」
「ミリオからいろいろ聞いている。さっそくだが、私は今何を考えている?」
突然のクイズ。恐らく私の技量を見るためのもの。
[オールマイトオールマイトオールマイト]
[今日発売のヤング時代スーツフィギュア]
[後で雄英でのオールマイトの活躍聞こう]
うん………、引いてしまった。体育祭のおかげで強い感情は読み取れる。が、集中するまでまでもなくオールマイトが好きだという強い想いが流れ込んできた。脳内お花畑ならぬオルマイ畑。オルナイ畑?いや、これは止めておこう。
オールマイトが好きで自分を売り込んでサイドキックになったと聞いていたけどここまで好きなら、なぜコンビを解消するほどの溝ができたのだろう。
これを言葉にするのは気持ちが悪すぎる。ふと彼の後ろにあるホワイトボードに気が向いた。
「脳内オルマイ畑」
そこに描いたのはオルマイ畑に歓喜するサー・ナイトアイ。絵は上手くはないが彼の脳内にいるオールマイトがあまりにも鮮明すぎてクオリティは高く仕上げることができたと思う。
「ほぅ」
ホワイトボードに歩みより…カシャ、カシャカシャドゥルルルルル
え、スマホのカメラで連写していらっしゃいます?堅苦しいイメージだったけれど何だ、この人は。
「良いクオリティだお前を本採用しよう」
「あ、ありがとうございます」
よくわからない採用試験をパスして事務所やヒーローの活動のことについて聞いた。それらは教科書にもあることだったため大分省かれてしまったが問題はない。
むしろ問題なのはこの事務所の方針。仕事において元気とユーモアを忘れない…か。オルマイ畑はユーモア有りと判断されたのかな。私そんなに明るさは持ち合わせていないけど大丈夫かしら。
私を指名した理由としてはここにインターンに来ているミリオ先輩が助言してくれたらしい。そして彼から個性のことも聞いていたようで、
「お前の個性は”しんり”だと聞いたんだがまだまだ使いこなせていないようだな。そこは卵といったところか」
そう言ってサー・ナイトアイはホワイトボードに文字を書いていく。私の描いたオールマイトたちは消されずそのままだ。
クラスメイトの中では使いこなしている方だと自負しているのだがどういうことだ。ボードに書かれているのを触れながら視る。
心理
真理
心裏 審理
「心の理は心の状態や精神を表す」
「心の裏は人の心のうちを表す」
「審な理は事実を調べ白日にする」
交差円によってそれぞれが合わさっていく。
「真の理はこれらの事柄を結集するものだ。お前は今まで無意識にこれを導いてきたみたいだが…その過程が不足している」
「…なんて無茶苦茶な、しんり……」
サー・ナイトアイはとても馬鹿げたことを言っている。しんり同士が干渉し合った中で真の理が生まれる?それって、喉が乾いたので宇宙人に会いに行きました、くらい無関係なことだ。はい、そうですかと納得できるほど単純なわけがない。
「お前の言いたいことはわかる。だがそこから目を背けてはここで終わりだ。ミリオとの鍛錬の間に課題を与えよう。クリアできなければお前に未来はない」
未来を見ることができる彼の「未来はない」という言葉ほど怖いものはない。
全てにおいてストイックでユーモアを忘れない彼からの課題は相澤先生の比にならないくらい冗談みたいにキツいみたいだ。
「遺留品から犯人を探し出せ」
私が望んだ厳しさは想像を遥かに越えていた。
【急場】
早急に対処しなければいけない差し迫った場面。
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最近かっちゃんとの絡みなくて、誰夢?感が拭えないから無理やり会話させた。
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