退院後初登校、教室。
「「「「環心ーー!!!!」」」」
「みんな、久しぶり」
敵襲撃以来会っていなかったから熱烈な歓迎を受ける。顔が見えないのが残念かな。
「RAINしたけど返信なかったから!!」
「あ」
すっかりケータイの存在を忘れていた。現代社会を生きているはずなのにケータイ無くても生きていけるんだな。その分、個性で情報は集められるからねぇ。
「怪我で使えなかったから存在忘れてた。ごめんね」
「もぉ〜本当に心配したんだから」
「怪我は大丈夫…じゃないのね。左腕は相澤先生とお揃いよ……、目は…?」
不自然にしているアイマスクに違和感を覚えるのは普通のことだ。
「瞼の傷があるから隠しとけって相澤先生に言われたの。結構グロいんだって」
「目隠ししてても環心は見えてるから大丈夫か」
「何か困ったことがありましたら遠慮なくお申し付け下さいまし!」
「俺も瞼に傷あるからお揃いだな!」
励ましてくれるみんなには申し訳ないが本当のことは言えない。失明したと言ったら優しい彼らだから心配をしてくれるはず。でもそれだと平等でいられない気がする。
彼らに負けたくないという私の小さなプライドで安心を与えるのなら、それを突き通そう。
*
授業を含めた日常生活も支障は特になくできている。ノートはとることはできないけど教科書は視て読める。常に個性を強化させている感じだ。
そして感じるのは”真理”によって人の感情が流れ込んでくること。”心理”で感情を読むことはあったけど…厄介だ。
何が厄介かというと勝手に感情が流れ込んでくること。もちろん全てに対してではないけど、例えば…
そわそわしているいず。
と、イライラしている爆豪くん。
細かいことはわからないけどどちらも私へ向けた感情なのは確かだ。
下校時間になって、明日の死刑宣告内容と、これからの個性の使い方に考えを向ける。このまま感情が見え続けてたら疲れるし、見られる側としても気分がいいもんじゃないだろう。精神衛生上の問題と、怪我が治るまでの負担は少ない方がいいだろう。
「スクエア」
今日1日苛ついていた爆豪くんは今はそこまでじゃないみたいだ。わざわざ声をかけてくる何て珍しい。
「てめぇ、目は見えとンのか」
何かと思えば怪我の心配だっていうの?ただピンポイントで目を指摘してくる辺り人の弱点というか、弱っているところを探すのが上手い。
「見えてる、でも傷がね。ホラ」
少しアイマスクを持ち上げてみる。寝る前に恐い話を見てたり、スプラッター映画を好んでみるような男だ。このくらいの傷は見てもなんともないだろう。そう思っていたのに彼の纏っていた感情が濁ったような感じがした。
「瞼の筋肉が治ってないから開けられないけど、目は元々なんともなかったから」
「うっわ、そりゃ隠してて正解だわ。耐性ない子はビックリするぜ?」
「…っそうかよ」
近くにいた上鳴くんも引いているそして爆豪くんは再度苛立ちを纏い帰っていった。彼の機嫌を損ねるほどグロいもんだろうか。
「きっとかっちゃんは、シオンちゃんの怪我を一番近くで見たから心配だったんだよ」
「あれが心配しているように見えた??」
心配か。どちらかと言えば、私を倒すための判断材料を収集してるとしか思えなくもないけど。
この怪我を一番近くで見ていた。薬を打たれてからの記憶がほぼないから何があったのかはわからないけれど、いずの言い方からして迷惑をかけたのは間違いない。今度お礼でも言っておくか、一応。
「じゃ、帰ろっか。カバン持つよ」
「ありがとう」
いずと共に帰宅する時分、やっぱり心配というのは怪我の具合はどう?とかこんな風にカバンを持って気遣うとかそういうことを指すんだと思わされる。
「あと1週間で体育祭だね。今から緊張するよ」
「それは緊張しすぎ。でもあの舞台に立つって考えると…頑張ったねぇ」
「いろんな人の支えのお陰でここにいるわけだから。期待に応えられるように頑張らなくっちゃ」
1年前までは身体もろくに鍛えていなかったし、希望なんて無いに等しかった。随分と逞しくなったものだ。個性という小さな自信を手にした彼は力強く歩む。
「シオンちゃん、一緒に頑張ろうね」
見えなくても眩しい彼だから私は傍にいて支えたいと思うんだ。がんばれ、いず。
*
「あ、私体育祭は不参加だよ」
「えっ!?怪我そんなに酷かったの?!?おぶって帰らなくても大丈夫???」
「過保護にならないで、逆に苦しいから」
「シオンちゃんの分まで、が、頑張るよっ!」
うん。心配っていうのはやっぱりこっちだな。
【小安】 少しの安心のこと。
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