全知というもの

USJ、敵侵入。


「13号にイレイザーヘッドですか…先日いただいた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが……」

「どこだよ…せっかくこんなに大勢引き連れてきたのにさ…子供を殺せば来るのかな?」


主犯各は間違いなくあのワープのモヤと顔に手をたくさん引っ付けている白髪の男だ。表情は見えないけれど漂う雰囲気からヤバさがバンバン伝わってくる。

私たちを安心させるためか大勢の敵がいるセントラル広場へと短期突入する相澤先生。彼は確かに弱くない。けど、彼の戦闘スタイルはそうじゃないはずだ。しかし、私たちが彼に荷担してできることは少ない。今は避難して応援を呼ぶのが正解だ。


「いず、相澤先生の分析してないで避難だって」

「させませんよ」


「初めまして、我々は敵連合…」


悠長に挨拶なんかしやがって武士の時代じゃないんだから。やつらの目的は昨日視えた通りオールマイトの殺害。だから特にオールマイトが担当する授業や演習訓練は特に注意するという体制ととったのにこんなにもあっさり侵入されてしまった。


「は?ッばっか!」

「その前に俺たちにやられることは考えなかったのか!」


13号先生が戦闘体勢に入る直前に飛び出したのは切島と爆豪で、正義感が強いというか血の気が多いというか…なんてことをしてくれたんだ。


「みんな逃げて!バラバラにされる前に!」

「私の役目はあなた達を散らして、嬲り、殺す」



 * 


「んっ、皆は!?」

「くそっ、ほとんど飛ばされた!」


素早く個性を展開させ皆の安否を確認する。敵もいるから探しにくいけど…皆無事だ。相澤先生は…順当に倒してはいるが、主犯の敵は…


パンッ!


「ングっ」


目隠しをした目の奥で発砲音と光が弾く。


「障子くん、環心くん皆は!」

「この施設にいる…」

「それよりセントラル広場の脳ミソ敵がオールマイトを倒す本丸みたい…なにあいつら、個性がぐちゃぐちゃ…」


モヤの敵は私たちの動きを警戒している。13号先生の指示で飯田くんを学校まで走らせたいが簡単にはさせてくれないみたいだ。


「そうですか、あなたが全知…優先すべきは」

「!?」


モヤが私を狙ってきた!?回避?でも皆を巻き込んでしまう。特に飯田くんが飛ばされたら詰みだ。ならば、私ができる最善のことは。


「飯田くんあとは任せた!」

「環心!!」



 * 


 * 



「いった…」

「!?何で環心がここに!」


飛ばされた先は相澤先生がいるセントラル広場だった。まだ敵が大勢いて私にも掴みかかろうとしてくる。


「そんな目隠ししてちゃ俺の攻撃は避けられねぇぜ!!」

「んなわけっ!」


個性を展開して相手の攻撃を見切る。右から来る少し熱を持った攻撃。大したことはない、ただの少し早いパンチだ。右に少し逸れてパンチの勢いを利用して引き倒す。掴んだ腕を後ろに持っていき固定する。


「クソ離せ!」

「そんなに動いたら、」


ボキっと腕の折れる音。


「あ"があ"あ"あああ"腕があああ!」

「だから言ったのに」


痛みに悶え戦意をなくした敵を他所に次々倒していく。ここにいるのはチンピラ程度。さっきから敵より相澤先生に向けられる殺気の方が鳥肌ものだ。


「ワープの敵に飛ばされたんですよ…っ、先生、本丸は能ミソ敵です、、っは、アイツ個性複数持ちで、中身がぐちゃぐちゃ」

「そうだよ、本命は俺たちじゃないよ"全知"」

「えっ」


雑魚敵の間から差し向けられた手が私の首を掴む。息ができないわけじゃないけど軌道が締まる。なにコイツ。思想破綻者か。ぐるぐるして気持ちが悪いっ。


「私に触らないで_____」

「!!?脳無!コイツをやれ!!!!」

「環心!!」


いきなり飛び込んできた衝撃。考える前に体が動いてくれて助かった。脳無という敵に吹っ飛ばされて咄嗟に内臓を庇ったけど代わりに左腕がぐちゃぐちゃだ。しかも助骨数本逝ってるし、庇った内臓も無傷じゃない。アイツの地雷って……

痛みで意識が遠くなる。


「あ"ッ、く"」

「全知も圧倒的個性の前じゃ無意味だな」


敵の容赦ない追撃に脳が揺れる。ギリギリで頬を掠めるくらいに回避したけど…顔面潰す気なの。あっさり脳無に捕まれ主犯の前に差し出される。
やめて、私に触らないで、こんなの視たくない!


「う"ぅう"っ」


情けない呻き声しか発することができず転がされ鳩尾を蹴られる。


「くっそ……そいつの、個性どうやった、ッいったい何人…、」

「何でも見えちゃうんだ。なら要らないよな」


「ヴぁっ"あ"あ"ぁあ"ッ!!」


アイマスクの下に優しく触れた手は、それはそれは残酷に、私の目を崩した。




【全知】 完全無欠の知恵。
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