個性把握テスト、終盤。
最後の種目である持久走も走り終える頃担任の隣に見知った姿を目にした。何でアイツが…ッ。結果的にはラストスパートに見えなくもないがイライラを抑えきれずに速度が早くなる。
今すぐに胸ぐらを掴んで問いたださねば。
「カハッ…ハァ……何でテメェがここにいんだよ!!」
息を切らしながら先ほど願ったように胸ぐらを掴んで怒りを露にする。こちらばかりが激情して相変わらずの澄ました顔。
何でだ、コイツは落ちたはずだ。合格通知後職員室に呼ばれたときコイツの姿はなくデクがいたんだから。コイツは雄英に受かる学力はあるから経営科にすら落ちたのかと柄にもなくその真実に戸惑ったというのに。
「テメェ落ちたろーが!シオン!!」
「走った直後に元気だこと。私、雄英に落ちたなんて一言も言ってないけど?」
眉一つ動かすことなく事実を否定される。落ちてない?卒業式のあと確かにコイツに不合格の確認を…あのとき否定しなかったじゃねぇか。
「デクと揃ってテメェも俺を騙しとったンかッ」
「勘違いしたのはそっちでしょ。フックで記憶の改ざんまでされた?」
「お前らいい加減にしろ」
タイムを計っている担任が嗜める。また捕縛武器に捕まるのは御免被りたいため大人しく手を離す。が怒りは収まらず増長した。ギリッっと食い縛って堪えるが気に食わねぇ。
「あ、先生。私も個性把握テスト受けますか?それと私の机が無かったんですけど」
「今からするのは合理的じゃねぇしお前の実力は入試と再試でわかってる。んじゃまパパっと結果発表」
再試だと。雄英の入試に再試なんてあるわけない。何でここにいるんだ。
「環心、机はミッドナイトさんに言え。お前の頼みなら喜んで持ってる来るぞ。ちなみに除籍は嘘な」
「「「あーーーっ!?」」」
「良かったです。ハブられたのかと思いました」
マジで何なんだよ。
*
酷い結果になった持久走後痛みに悶えているとかっちゃんの怒鳴り声。彼は僕のソフトボール投げから機嫌が悪いし口も悪いのがデフォルトだ。
だからといって、誰かれ構わず怒鳴っている訳じゃないし何もないときは寡黙と思わないでもない。
「シオン…ちゃん……?」
怒鳴り声の先に目を向けると…なぜ彼女がここにいるんだっ?
「あ、先生。私も個性把握テスト受けますか?それと私の机が無かったんですけど」
「今からするのは合理的じゃねぇしお前の実力は入試と再試でわかってる。んじゃまパパっと結果発表」
再試?シオンちゃんなら再試なんか受けなくても頭は良い。実技試験は…よくわからないけど護身術的な格闘術を身に付けていて動きは軽く一発が重い。そんな彼女なら間違いなく上位になれるはずだ。
「環心、机はミッドナイトさんに言え。お前の頼みなら喜んで持ってる来るぞ。ちなみに除籍は嘘な」
「「「あーーーっ!?」」」
「良かったです。ハブられたのかと思いました」
相澤先生の合理的虚偽により除籍はないことにされた。最下位だったから絶望していたが命拾いしたことに誰よりも大きな声で驚いてしまった。
「これにて終わりだ。環心、書類は?」
「全部教室に運びました」
「ご苦労。カリキュラムなどの書類があるから戻ったら目通しとけ、緑谷…」
目の前には保健室利用許可書が差し出され、折れてしまった指を治してもらうように言われる。
「無茶はダメだよ、かっこよかったけど」
「いっ…まだちゃんと使えなくて。それより何で君がここにいるの?試験で君は…」
「私に事実確認せず決めつけるのは良くないよ、いず」
いつかの僕がしたみたいに頬に添えられた彼女の手からは慈愛が流れ込んでくるようで、分かりにくい表情とは異なり優しくて温かい。
【早計】
早まった考え。軽率な考え。
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