懐疑というもの

再試験3日後。

「ヒーロースーツですか」

「他の生徒たちの企画書は出してあるけど、シオンちゃんはサポート会社に直接いかなきゃ間に合わないからね」


すっかり私を気に入ったミッドナイトはお世話役として自ら名乗り出てくれたらしい。彼女は幸いにも来年度は担当クラスは持たないから暇だと言っていた。


「ヒーロースーツ…デザインは先生みたいに露出…とピッチリは嫌ですね、無いわ」

「無表情の罵倒!高度なS女!」


色々とめんどくさいが対応してくれるのはありがたいので、蔑ろにはできない。


「授業のことで質問があるんですけど…あっ」

「あ」


ミッドナイトのスーツアドバイス(肌露出面積規定)を聞き流しているとトゥルーフォームのオールマイト。


「お久しぶりです、オールマイト」

「久しぶりだね、環心少女。2ヶ月ぶりかな、それと合格おめでとう」


前回の別れ方が疑念の残るものだったため、次回会うときは気まづいかもと思っていたが大丈夫そうだ。


「えっ、ちょっ!シオンちゃん知ってるの!??」


慌てるミッドナイトにオールマイト自身も自分の正体を隠していることを一瞬忘れたようだった。

面識があり個性で彼のこともわかってしまった主旨のことを話せば少し渋い顔をしたものの「シオンちゃんで良かったわね」と類似個性には気を付けるよう釘を刺されていた。


 * 


夕方、早急に必要書類について聞く。ヒーロー科だけのコスチュームデザイン案提出は今日で済んだ。卒業中学でも書類貰うのか。役所で住民票と扶養のと…あと10日で揃えて、代表挨拶も考えないと。


「今日はありがとうございました」

「貴女みたいな子がいるなら担任すればよかったわぁ〜。相澤くんが羨ましっ」

「確か…根津校長が話していた抹消ヒーローイレイザー・ヘッドですね」

「そう、今年度は入学初日に1クラス全員除籍。彼可愛い教え子には甘いけど厳しいから気を付けるのよ」

「除籍って…気を付けるって」


さりげなく楽しみにしていた担任となるプロヒーローのネタバレ。逆に彼の不審者姿を見せつけられて担任だと宣言されるよりはマシだったかもしれない。


「今帰りかい?」

「はい。1時間前までサポート会社にいたんですけど、コスチュームのデザインを考えるのにサポート会社の人が熱くなっちゃって…」

「治らない病気みたいなもんだからねぇ、でもその代わりとっても良いものを準備してくれるはずさ!来月から一緒に頑張ろう!」

「よろしくお願いします」


トゥルーフォームでも大きな手と握手をする。平和の象徴はこの大きな手で人々を救っている…そしていずにチャンスをくれた…だから彼を信頼しないってことは、彼を信じたいずを否定することと等しい。

握手して繋いだ手から伝わる彼の個性。
オールマイトも戦っているんだ。


「どうしたんだい?環心少女」

「ねぇ、オールマイト……いずに…いつかきっと話してあげてください」

「話すって、何をだい?」


「ALL FOR ONE」


私の個性は「しんり」
時には知りたくないものまで知ってしまうこともあった。個性を制御できるようになってからはそういうことも少なかったが強い想いは制御という壁をすり抜ける。


あなたが隠していたことを勝手に見てしまってごめんなさい。


「オールマイト…私は……あなたと、あなたを信じるいずを支えるためにヒーローになります」


疑うことなてんてせず真っ直ぐ前を向いて進むことが、今の私にわかる道だ。




【懐疑】
疑いを持つこと。考えを決定するのに十分な根拠がないため、動揺している心的状態。
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