不毛というもの

卒業式終了後、職員室。


「個性使用でカンニングの疑い…?」

「満点だったんだよ、試験。僕たちは君の小学生からの成績を知っているから否定したんだけどね。筆記に関して個性は原則禁止ってあっただろう」


筆記試験を受けたとき確かに注意書きであった。記憶力や予知等といった事前に使用したのは良いが、試験会場内での故意的な個性使用は禁止とする。


「だから、来週再試験って訳ですか?」

「定員埋まっているけど…一つくらいは準備するということか、それとも君を黒だとみてこの再試験を実施するというのか…どちらにせよ君なら大丈夫だ」

「君の個性もカンニングするようなものではないしな!」


もし『真理』を故意的カンニングとするならばアウトだ。しかし、それがなくても私には解けるんだから。


「まったく……舐めないでいただきたいですね」


疑いがなくなるまで何回でもやってやる。


 * 


3月15日朝9時、再試験当日。


「来たのは環心さんだけなのねぇ」

「18禁ヒーローだ…、私以外にも再試験予定者がいるんですか?」


今回の試験監督をするミッドナイトと他3名…四方を囲まれている。曰く、両隣と回答の一致や私みたいな完答がいたみたいだ。しかし、この場にいないということはズルしたって言っているようなもの。


「環心さん、通常入試と同じ要領で始めるわよ?」


まずは英語、次に国語、数学、理科、社会。


 * 


「どうですか?何か変わった様子は」

「何も。普通に問題解いているだけにしか」


休憩の間、別室のモニターで彼女を監視していたのは複数人の教師。

彼女が再試験になった理由は2つ。

1つ目は完璧な回答だったこと。用意した解答と寸分たがわぬものであった。ずる賢い奴なら透視個性があっても適当に間違えれば疑いの対象から外れるのに…

2つ目は実技試験の点数の高さ。それにより警戒を強めてしまった。


"普通"ではないと。


試験官の一人であるイレイザー・ヘッドは個性によりランダムで抹消を仕掛けるが動きに変化はなかったという。

加えて早く解き終わってしまい時間が無駄という理由で、本人から繰り上げスタートの申し出があった。個性の連続使用でドライアイ男と化した彼は合理的な提案を否定することなく進んだ。


 * 


確かに疑いがなくなるまで何回でもやると思ったことも…無いことはないが今日2度目の社会。

5教科終ったと思ったら、昼食の後また始めると言い出した。顔には出ていなかっただろうが、雄英はなぜそこまでカンニングを疑うのか?もしこれがカンニングだとすれば中々本性を出さないことを逆に評価しなければいけないだろう…と呆れてしまった。


「?? ……すみません」


初めて問題を解く手が止まり首を傾げたかと思うと挙手。


「どうしたの?」

「この範囲……中学の単元ではないはずでは?」


2周目社会の最後の最後の問。ミッドナイトは製作ミスかしら〜?と曖昧に答えながら真後ろの試験官に目配せする。

それを見逃さなかった少女。個性を使おうとすれど真意は見えない…なるほど。


「範囲外だというだけで解らない訳じゃないんでいいんですけどね。これで終わりっと」


最後の回答欄を埋める。


「で、何か収穫はありましたか?私が…敵とか」


わざと挑発的に言ってみれば教師陣は殺気を放ち警戒し始める。まさか本当に敵だとでも思っていた?内部から崩すためのスパイとか思われてたんだ…正面のミッドナイトを見れば表情は読みにくいものの個性を使うまでもなく疑心と…


「え、何興奮してるんですか…」

「……あなた合格っ!」

「へっ?」

「なーんだ、校長みたいに賢すぎるだけなのねぇ。疑ってごめんね?これで試験終了〜」


子ども相手に半日もプロヒーロー数人が相手をする必要はないだろう…


 * 


「選別方法雑すぎません?」

「途中からあんまり疑ってはいなかったさ!なんせ個性で何も消せなかっただから!」


今相対してHAHAHAと笑うネズミは雄英高校の校長…と不審者らしき人物。彼は個性を消すことができる個性らしい。

カンニングを疑うことはもちろん実技の点数も高すぎたため、コイツは訓練された敵で侵入するために…これは危ないぞ!という考えになったらしい。いや、やっぱ雑すぎないか。

個性の詳細を説明したら早くそれを言えとイレイザー・ヘッドに言われたけれど、話す時間をくれなかったのは雄英側だ。


「疑いが晴れたから君は晴れて!雄英高校のヒーロー科の生徒さっ!」

「あ、ありがとうございます…心中複雑ですが」

「来月からよろしく!あ、あと新入生代表挨拶もよろしく頼んだよ」


雄英高校って至極自由でめんどくさい。




【不毛】
なんの進歩も成果も得られない様。
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