運動場γ、第三試合。
A組
飯田・障子・轟・尾白
B組
鉄哲・回原・骨抜・角取
先手を取ったA組であったが攻めを完全に読まれ、B組が優勢に立った。周囲を柔化させることによって動きがまともにとれない状況だ。
そして彼らが取った作戦は1対1での勝負。骨抜くんは飯田くんを地面に埋めちゃうし、回原くんは尾白くんにドリルで突撃していった。
障子くんは角取さんのホーン砲で安全地帯だと思われた轟くんの後ろから離される。そして、鉄哲くんは氷塊を角取さんの力を借りて突破した。
有利な個性を宛がうことによってバラバラになっても力を発揮できる…というよりはサシ勝負が好きな鉄哲くんに合わせていると言った感じかな。
『10分だ!!10分誰も俺を止められない!!』
『結局新技で初見殺しかよ!』
『ただし!速すぎて制御しきれない!』
「レシプロターボ…グラントリノよりも断然速いや」
「お前がシュートスタイルとか言い出したから飯田アイデンティティ取り戻したんだぞ」
バラバラにされた状況を一番最初に打開したのは飯田くんのレシプロターボ。エンジンの温まりも回転数の上げ方も、ギアの切り替え方も前より素早い。
速すぎて制御しきれないのは動体視力と体幹を鍛えることで順応出きるようになるはずだ。
地面から脱したことで、骨抜くんは後退を選んだ。切り替えが速い…柔軟な対応だって言われるのも頷ける。
「見て!!尾白が…普通に戦ってる!!」
「普通に押され気味だが尾白だって今までの尾白じゃねぇ!ガンバレ!!」
普通って言いたいだけじゃん…。回原くんの旋回する指先とサポートアイテムは正に人間ドリル。だから生身の尻尾じゃ相性が悪い。往なしても攻撃しても皮膚を抉るような攻撃でダメージが蓄積されていく。
『そらよっ!、ッ!?』
『飯田!!』
『スパイラルを牢に入れる。しばし離脱するがすぐ戻る!!』
そこに駆けつけた飯田くんは回原くんを連れ出し牢へと一直線だ。甲冑だし逃げてもすぐ捕まえられるしよくやったぞ飯田くん!さすがいの一番に駆け付ける男だ。
「轟くんの方どうなった!!?」
「氷は鉄哲には効かねぇから左使ってるけど…」
「アイツは個性伸ばしで竈の熱さを耐えてたんだ。あれぐらいじゃチンテツには効かないよ」
氷結を止めて炎熱に切り替えたのか…
身体を赤くした鉄哲くんは、その熱い拳を打ち付ける。気絶するまで殴る気でいる。体格のいい轟くんでも脳筋野郎の彼には勝てない。
生半可な熱が効かないなら更に上げるしかない。
『退け…溶けちまうぞ』
『あっちいいィイイ!!』
「雄英のカメラが溶けるとか一体どんだけ熱ィんだよ」
「炉内カメラだったら1800度まで耐えられるはずだけど……」
「本当?!炭素まで燃やせるとか汽力発電以上じゃん!」
エンデヴァーはもっと熱かったはず。体育祭の時は瞬間火力は1000を越えていたけど…今後の参考までに視ておこう。
1820…1900…?待って、鉄哲くんの融点って2400くらいじゃなかったっけ?熔けてはないけど表面が焦げてる…二人ともこれ以上は負荷が大きいって…
[命懸けなきゃ意味ねぇんだよ!!]
[格上と限界は越えるもんだ!!]
[限界を越える…?]
[うっせェな……]
[お前らに言われなくても解ってんだよ!!]
「………、んー…轟くんも案外戦闘狂だわ……」
鉄哲くんに圧されてるのに笑ってた…彼の言葉を聞いて笑ってたんだ。オールマイトは笑うヒーローだった。いずも不安や虚勢のために笑うときがある。
追い詰められて笑った彼も…同類だよ。
『鉄哲、溶けちゃうよ』
「あー!水指した!!」
「我慢比べするのも良いけど、本番だったらこういうのザラでしょ」
炎熱耐久勝負は骨抜くんの登場によりお預けとなった。地面に埋められた轟くんは体温調節ガバってるし、柔化の影響で落下してきたパイプによって意識を失った。
この対決激しすぎる…
骨抜くんの対応は全てにおいて柔軟だったが、1つ見切りを速くつけすぎたようだ。
『今度は!!外さないぞマッドマン!!』
「飯田の蹴りモロに食らった!骨抜、脳ブレッブレなはずだぞ」
「いいぞ飯田くん!」
制御が効かないと言いつつも決めるときはしっかりと決めてくれる。しかし、入りが甘かったのか彼はまだ意識を手放してはいない。
『鉄哲!!”これ”押せ!!』
「…あの煙突押せちゃうの…?」
「でもスタミナ切れだ…ほら、力尽きてる」
『これは……!!全員ダウン!!?』
轟くんは熱と頭に攻撃を食らって気絶。
骨抜くんは飯田くんの蹴りで気絶。
鉄哲くんは轟くんの熱とオーバーペースで撃沈。
飯田くんは崩れてきた柔化された煙突に固定された。
意識はあるけど動けない飯田くんのエンジンの回転数はレッドゾーンに入っている。その上、そろそろ無敵時間の10分が経過する。回原くんに与えられたダメージも合間って本来のように動けない。
「でもこのままだったら1ー0でA組リードのままだよ!」
「アハハハハ派手な方に気を取られて見ていないんだ!?鉄哲たちが熱戦繰り広げている間に形成は変化しているのさ!!」
「えー!尾白捕まってる!?」
「飯田くんとのタイマンを嫌がった骨抜くんが角取さんの所にサポートに行って、角で押しきられた」
障子くんと角取さんも攻撃と往なすを繰り広げていた。そこに尾白くんがサポートに来たけど決めきらず…彼女の角で牢に運ばれてしまった。
「ポニーちゃん轟たちの所に行った!」
「3人を拾った。これってもしかして…」
「…間違いなく彼女がこの試合のMVPだね」
B組の状況判断は実践を見据えたものが多い。角取さんは4本の角全てを使って空中に避難した。轟くんを投獄したいところだが、力が拮抗した障子くんに3人抱えたままでは勝てない。
けれど、これで絶対に負けない。
障子くんは空を見上げながら飯田くんの救助に試みる。固定された煙突、つまりはコンクリを時間内に壊さなければ手の打ちようがない。
『皆を負けさせるのは、いやデスので!』
『障子くん!俺はいい!彼女を追うんだ!』
『ああ!……だが、空中は、』
「彼の手は届かない」
『20分経過!第3セット終了!投獄数1ー1…引き分けだ!!』
前半の熱戦に比べて最後の鬼ごっこは煮えきらないものとなった。パワー、テクニック、スピード、プラン。どれも見ごたえがあった。
「煮え切らねェ〜〜ズリィ〜〜〜〜」
「本番を踏まえれば”逃げて救助待ち”は利に叶った行動ですぞ」
「B組は徹底的にリアルだった」
命懸けた本番さながらの戦いだったり、優先順位の判断だったり、サポート役の立ち回りだったり、負けない選択だったり。
「この試合も損傷と怪我人が多かったから反省会は後回しだ」
反省をするとしたら…損害は最小限に…かな?
「悔しいだろうね、飯田くん」
「うん。でも…かっこよかった」
Plus Ultraしまくりの試合は引き分けで幕を閉じた。
【血戦】
血みどろになって激しく戦うこと。そのような戦い。
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