次代というもの

インターバル、観覧ブース。


「緑谷少年!私がジットリきた」

「はい!」

「ちょっと」


破損が大きかった演習場の場所を移動するために設けられた休憩時間。チームメイトと話していたら、オールマイトによっていずは呼ばれてしまった。


「蜜月〜」

「デクくんて、よくオールマイトに呼ばれるよね。個性が似てるからかな」

「調子悪いのと関係があるんじゃねェの?」


あの人たちは、危機感ってのはないのかな?周りの人たちは秘密がバレちゃいけないって気を付けているのに、当の本人たちがこれじゃ…


「おいシオン、面貸せ」

「…私カツアゲされるのかな?」

「ヤンキースタイルは流行らへんよー」

「流行るわ!!」

「はいはい、お話ですねー、かしこまりましたー」


麗日さんたちにケンカを売りかねない(既に半分売っていた)勝くんを引き離して、呼び出された元凶へと向かう。


「アイツらいつもああなのかよ」

「そうねぇ…だいたいは仮眠室なんだけど……堂々としすぎてこっちは肝が冷えるんだよねぇ」

「ッチ…やる気あンのかよ」


やる気というか隠す気はあるんだけど、行動が伴っていないのがとてつもなく残念だ。


「オイ」

「わっちゃん!とシオンちゃん!びっくりした!」

「てめーら人に守秘強要しといてバンバンコソコソしてんじゃねェよ」

「勘のいい人は気づきますって」

「ムム」

「ムムじゃねェよ…!!」


勝くんが私を呼び出してオールマイトといずに話しかけに行ったのも、皆に怪しまれないためだろう。幼馴染みーず+先生で集まってたら、そこまで変に怪しまれることはないだろうから。

いずの個性の暴発……確かにその黒い影を見るきっかけになった心操くんがいるから何が起こるかわからないかぁ。


「成長してんのか後退してンてのかわかんねェな!」

「う、うん…」

「てめーとやったと時より強くなってンぞ俺ァ」

「それは…焦る」


焦るというような顔をあまりしていない。焦るよりもどういう風に強くなってるのか気になるというのが本音だろう。

個性が不安定になっている原因は判明されていない。心理的なものなのか、強化されて身体がついていけていないのか。


「試合始まる前にちょっと使ってみる?」

「うん、そうする。今のところは大丈夫だよ」


彼の大丈夫はたまに心配になるときがあるが、勝くんや皆に触発されてやる気は上等って感じかな。

試合が始まったら、彼を注意深く視ておく必要があるかもしれない。何かあったときは直ぐに対処できるようにしておかなきゃ。


「素直に心配してるって言えば良いのに」

「あ”?誰をだよ」

「いず」

「死んでもねェわッ!俺が危惧してるのはアイツらのユルさだわ」


あんなにも憧れていたオールマイトを”アイツら”で一括りにできちゃうくらい親密になったと評価するべきか、態度がでかくなったと非難するべきか…

憧れの人が大事にしてきたモノだから守らないとって気持ちはあるみたいだから…不器用な優しさってことで認知しとこ。


「蜜月おわりー?」

「蜜月じゃないから、もぉ……。次のチームは行ったんだね」


次のチームはそれぞれスタンバイ位置向かっている。A組のチームは轟くんを軸にするらしい。


『第3セット準備を!!』

「A組はバランス良いよね」

「でも…轟くんなーんか調子悪い…?」

「けッ!いつものイケメンじゃねぇか!ボコボコにされろ!」

『大丈夫かい!?随分と怪訝な顔だが!!』

『そうか?』

「ほら、飯田くんにもわかった」


怪訝な顔の理由はわからないが轟くんの過去の不機嫌の原因は9割エンデヴァーさんが絡んでる。ちなみにあと1割は"冷たい蕎麦が無い"だ。

それとは正反対に飯田くんはいつもよりもハイテンションで諭している。ただでさえやかまs…元気なのにそれ以上とか遠足前夜の小学生じゃん。


『最近兄さんの経過が良好でね!』

『おお!良かったね!』

『俺はインゲニウムの名を背負うもの。欠番ではあったが俺も体育祭3位!皆に見せてやろう、継ぐ男の気概を!!』


このクラスは神様のイタズラか…ヒーローになるための数奇な宿命か知らないが個性を受け継いだり、想いを託された人が多くいる。

飯田くんは名前と信念を。

轟くんは両親から個性を。

いずはオールマイト達から個性と平和の象徴を。


複雑な運命の渦中にいる彼らがそれを生かすも殺すも自分達次第。運命や未来は決まってるんじゃない。自分達の変えようとするエネルギーでどうとでもなる。

ねぇ、そうでしょ?

サー・ナイトアイ。



第三試合

A組
飯田・障子・轟・尾白

B組
鉄哲・回原・骨抜・角取


『第3試合START!!』


ゴイゴインガウンガッサアァアア!!

スタートの合図と同時に聞こえた破壊音。これじゃあセットを移動した意味がない…まーた損壊過多。


『更地にするよなァ!!?小細工無用!来いや死ようぜ真っ向勝負!!』

『もう!向こうは轟いるんだぞ!!』

「あちゃー…鉄哲のバカ…」

「あれくらい脳筋だと、清々しいわ…」


金属に硬化した鉄哲くんは焦る回原くんの制止なんて聞かずにどんどん壊していく。A組には索敵できる障子くんいるし…位置がバレるならさっさと来いやって?

本当…逆にカッコ良くて空笑いがでる。


『まァこれはこれでやれる事あるんじゃね』

『柔軟な思考かよ柔造!!』

『Geez! Don't keep us in the dark like that!
(もう!私たちを蚊帳の外にしないで!!)』

『ほらぁ!ポニーも英語出ちゃってる!本怒り!』

『Tetsutetsu doesn't meen any harm. In fact,his approach plays to our strenght.
(鉄哲のは悪くないさ。実際、彼の作戦は俺たちの強みを出すよ)』

『柔軟な対応かよ柔造!!』


索敵能力の無いB組(主に鉄哲くん)は工業地帯をぶっ壊しにかかっている。彼のお望みの通り更地になった。

暴徒と化した彼をサポートする形で立ち回らなきゃいけない。位置が丸わかりになったところに轟くんの氷結…


「相変わらずぶっぱが強え!ズルイ」

「でも視界遮っちゃう氷塊じゃないよ、改良しとる」


建物に沿って送り込まれた冷気は、最低限の大きさによりB組を捕らえる。しかし、そんな対策は、轟くんが相手になった時点でできている。

だから骨抜くんは鉄哲くんにあえて自由に動いてもらっていたんだ。サポートはいくらでもできると言っているかのよう。


『氷結ぶっぱは安い手じゃん。もっと非情に火攻めで来られたら打つ手なかったのに…』

「轟無効にした!さすが推薦入学者!」

「骨抜くんの柔化は氷の範囲攻撃も無効にしちゃうのか…確かに火だったら防ぎようがない。轟くんは氷で様子見ってのが癖になってるんだ」

「柔化された氷が簡単に振り払われちゃってる。氷を攻略…、A組は次どうするんだろ」


氷がダメなら炎を使う。それがセオリー。

このままじゃB組に飲まれる。受け継いだ紅蓮に抱かれる君は見れるのか…

凄いヒーローは己を越えた先に。




【次代】次の時代。また、次の世代。
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