ビルボードヒーローランキング、結果発表。
画面の向こう側には、髪の毛をオールバックに撫で付けた…こちらまで香水が漂ってきそうな風貌の女性。
「今回このような場を設けたのは節目であると判断したからです」
公安委員会の会長が、ランキング発表の場を設けた理由を述べている。オールマイトという大きな存在に依存しすぎていたこと、ヒーローが結託する必要があること。
そこからカメラが切り替えられてTOP10が並んだステージが映された。こうして並んだら異様な雰囲気がする。
会場にいるマスコミやヒーローたちの視線がそこに集中していた。ステージ上には神野や死穢八斎會で活躍したヒーローがいる。社会貢献度が高く評価されたんだろう。
早くヒーローの声を聞かせてくれ、と周りはバイタリティー溢れている。だけどこの部屋は冷たい。
ナンバー入りしたヒーローからの一言ということで、No.10のリューキュウから控えめなコメントが漏れる。救えた命があった…、救えなかった命が幾つもあった。
しんみりとする会場に、私が出来ることの少なさを痛感してしまう。
その後も次々と一言…謙遜だったり、熱い想いだったり…ただ騒がしかったり。
「名声の為に活動しているのではない。安寧をもたらすことが本質だと考えている「それ聞いて誰が喜びます?ステインくらい?」…」
せめて結びの挨拶まで言わせてあげればいいのに…全く無礼だな。異端児の言葉は会場を凍りつかせる。
No.4のエッジショットの言葉を遮って、さらにはアナウンサーのマイクを奪い深紅の翼を広げて空中へと姿を見せつけた彼は、
No.2 ウィングヒーロー ホークス
22歳でNo.2にまで上り詰めた実力も人気もあるヒーロー……か。ただ言動は若者って感じだよね。
さっきデンデヴァーにこそこそと耳打ちして、ヤバいみたいな顔でお口にチャックしてたけど…自分よりも下のランクのヒーローたちの言葉が気にくわなかったみたいで、そのチャックは再び開けられた。
「支持率って俺は今一番大事な数字だと思ってるんですけど…」
保守的な発言を嗜めるように会場全体を挑発、叱咤する。丁寧な敬語は使いきれていないけどね。
今期の支持率は、怪我のため欠席しているベストジーニストが応援ブーストがかかって1位。その次にホークス、エッジショット。
平和のアイコニックは必要。支持率は市民が拠り所にできるヒーローと解釈することができる。この人が来たら大丈夫だって。
そうすることによって、平和はヒーローの活躍によって成り立っているという"確認"あるいは"集団心理"を作り出す。
汚ない言い方をしてしまえば、敵にならないように囲みこんでしまえということだ。
「さァお次どうぞ、支持率俺以下 No.1」
挑発というか焚き付けが終わったのかステージへ戻ってきて鋭い眼光へマイクを渡す。あれだけ生意気なことをしたんだから、挑発した方もされた方も気分はよくないはずだけど…
ホークスは薄く笑みを浮かべている。笑みを浮かべる先は…
No.1 フレイムヒーロー エンデヴァー
「若輩にこうも煽られた以上多くは語らん。俺を見ていてくれ」
1位に固執していたころとは違う強い眼差し。彼がNo.1ヒーローとして何を見据え、何を果たすというのか。
炎が熱く盛り上がり意思の強さに比例するかのように彼の顔を覆う。仮免補講で轟くんに己の意思を開示したときのような、強く輝いている。
会場全体が、その美しい炎に目を奪われた。
むちゃくちゃ格好良かったです。
*
*
某日、公安委員会本部。
「入営したつもりはないんですけど」
「yesの返事をしたのはあなたよ」
「断れない情報をだしといてよく言いますよね。ワンクリック詐欺と一緒ですよあんなの。触ったら、はい終わり」
「我々には情報が圧倒的に少ない。連合を丸裸にするためにも取り入る必要がある」
「その間の犠牲はどうするって言うんっスか。目を瞑れって?」
「それができると見込んでの依頼だ」
「法を破るのではなくて、曲げるだけです」
「……そんなのヒーローって言うんですかね」
犠牲にする。
折れない心を持ちなさい。
目を瞑る。
平和な未来だけをみましょう。
道徳から外れざるを得ない。
犠牲の上に平和が成り立つって言うじゃない。
「ヒーローが暇を持て余す世の中、か…厳しい」
「そんなんやってみらんとわからん……俺は速すぎる男やとよ?」
葛藤に生きる。
【含意】
表面にはあらわれない意味を文意に持たせること。 また、その意味。
- 106 -
[*前] | [次#]
小説分岐
TOP