11月下旬、ハイツアライアンス。
「煌めく眼でロックオン!!」
「猫の手 手助けやって来る!!」
「どこからともなくやってくる」
「キュートにキャットにスティンガー!!」
『『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ』』
オフバージョンの決めポーズ。来賓というのは皆さんお分かりの通りプッシーキャッツの4人。それと洸汰くん。
「プッシーキャッツ!だぁ!お久し振りです!」
「元気そうねキティたち!」
「洸汰くん!久し振り!」
バタバタしていてまともな挨拶もできずに時間が経過していた。会うのは3ヶ月ぶりだ。みんな元気も元気ですよ。仮免も(ほとんど)取得できたし、個性伸ばしは絶賛継続中だ。
いずも洸汰くんとは会えずに過ごした。会えはしなかったけど、彼がいずにくれた手紙はしっかりと想いを伝えるものだったのは間違いない。
「緑谷くん、見てよ。自分で選んだんだよ”絶対赤だ”って」
「べっ…違っ…」
「お揃いだ!」
マンダレイが指差したのは玄関に揃えられている赤い小さい靴。恥ずかしがって見るなって言う辺り確実にいずへのリスペクトだね。
彼女たちがなぜ今回雄英に来たのかというと、活動の復帰挨拶だという。
ラグドールは個性を消失したまま。今までとは違って、OLキャッツ(内勤)としてワイプシのサポートをする。
活動を休止していたけど、今度発表されるヒーロービルボードチャートJPがきっかけで復帰を決めたらしい。
発表されたランキングは411位。
ビルボードのヒーローランキングはヒーローの活躍を数値化したもの。上半期、下半期の活動を対象に事件解決数や社会貢献度、国民の支持率などで表される。
「前回は32位でした」
「なる程、急落したからか!!ファイトッす!!」
「違うにゃん!全く活動していなかったにも拘わらず3桁ってどゆ事ってこと!!」
活動が皆無なのにランキングに名前があったということは、支持率による票だ。応援してくれる人のためにも立ち止まってなんかいられない。
オールマイトが引退してから初めてのランキングの発表。イレギュラーなことばかりで今年は未だに発表されていなかった。
次にNo.1になる人物は…現在繰り上げでNo.1の座についている彼だろう。長年追いかけてきたその地位に立つことをー、ようやく許されたのね。
感情の無くなった轟くんが奥歯を噛み締めているのがわかった。
「ねぇ、シオンっていないのか…?」
「久しぶりだね。その様子だったら元気に過ごしてたみたいね」
「あっ…、うん…髪の毛短くなってたから誰かわからなかった」
しゃがんで目線を合わせてみて、洸汰くんはようやく私を認識したみたい。
そういえば髪の毛が短くなったのは知らなかっただろうね。ロングのストレートが、ショートで癖っ毛だから記憶の中の私と違っても仕方がないこと。
「短いけどどう?」
「…そっちの方が、かわいくてキレイで似合ってて好き」
なんて可愛らしい生き物なんでしょう。似合ってていいね、じゃなくて…可愛くてキレイで好きだって?この子は乙女心がわかっている。伊達に女に囲まれて過ごしてない。
合宿の時は顰めっ面ばっかりしか見ていなかったのに、今は照れた笑みを浮かべて…何かを待っている。
「ふふっ、嬉しいからハグしちゃう。ありがとう」
「いいって!離せって!」
離せと言うくせに嬉しそうじゃない。小さな抵抗を無視して頭をグリグリと撫でる。慰めと癒しのハグだったのが、喜びと感謝を伝えるものに変わった。
「ははぁーん?”シオンはいるか?”って聞いてきたのは、環心にハグしてもらいたかったからなんだね」
「言うなって!!」
「言わなくても私には解るって言ったでしょ?」
「シオンなんか嫌いだ!!」
彼には私の個性は、気持ちを共有できるようなものと説明してたはずだから、嘘をつけないとは知っているはず。
そんな可愛らしい嫌いだったらいつでも大歓迎。でも嫌いばっかり言われたら少しへこんじゃうから、10回に1回は素直になってほしいな。
この後B組に行くから長居しないと言っていたのに、ついつい話し込んでしまっている。いずや轟くん、飯田くんも洸汰くんが気になるみたいで後ろから覗き込んでいた。
「仮免補講でも思ったけど…お前やっぱり子どもに好かれるよな」
「小さい子は優しいお姉さんが好きなの。らしくない?」
「ヒーローとして素晴らしい素質だ!」
「いや、良いんじゃねぇの。あと俺も…、ショートも似合ってて好きだぞ」
「え、轟くん?」
「ん?何、マボロキくんかな?」
ふわふわの髪の毛はいいんじゃないか?みたいなことは前に言われた記憶があるけど…もやもやした気分で洸汰くんと張り合おうとしないでよ。
まだ私の腕の中にいる洸汰くんはキリッと遥か頭上にいる轟くんを睨み付ける。
「お前シオンの何なんだ!!!」
「お、威勢の良いガキだな」
あなたもガキんちょだわ…心配して損した。
【復調】
体の具合などがもとの調子に戻ること。
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