Bと

合同戦闘訓練、数日後早朝。


「あー!環心シオンいた!」

「だーッやっと追い付いた、速すぎ」


週末の早朝ランニングは一人でする。いつもは勝くんと一緒だけど、仮免補講が終盤になるにつれてハードになったから体力は温存したいらしく一人でのランニングだ。

いつも通り走っていたら、この時間には見かけないB組の3人が全速力で追いかけてきた。般若のごとく…ちょっと怖かったなぁ。


「ど、どうしたの?」

「戦闘訓練のときのアドバイス欲しくって!」

「朝走ってるって教えてもらったから追いかけてきたのよ!」

「鉄哲が轟に張り合えたのは環心のおかげだっていってたからさ、というか俺のこと知ってる?」


B組で話す機会が多いのは拳藤さんと鉄哲くんと角取さんくらいだから、認知されないのでは?と不安になるのもわかる。けど、どっかの誰かさんじゃないんだから…名前も個性もちゃんとわかるよ。


「ふふ、心配しないでも解るって。円場くんと泡瀬くんに取蔭さん」

円「あー良かった。俺たちあっさり負けちまった組でよー…アドバイス貰えねぇか?」


アドバイスを貰いに来たと言う彼らは先日の合同授業で負けたんだっけ。私も途中離脱してたからなぁ…イレギュラーだったとはいえアドバイスをあげられるような活躍しなかったよ。

確かに前に鉄哲くんには硬度の限界を視た。戦闘訓練は皆であーだこーだ話ながら見てたからアドバイスできなくはないけど…


取「本当は自分たちで考えろって話だけど、第三者からの意見が欲しくって…お願いっ!」

環「できる範囲でいいのなら」

取「やったッ」


断ってもOKを出すまで引っ付いてきそうな感じがしたので意見交換会の開催が決定した。

外じゃ寒いから会場はB組の共有スペース。朝だからまだ私たち以外いない。



円場くんの場合

円「俺は口を封じられたら終わりなんだよな。今回も蛙吹にベロで口封じられて……」

環「……蛙吹さんにそういう卑しい考えはないから…、んもぅ…口封じられて不味いなら反射速度を上げて回避能力つけることね。対人苦手でしょ」

円「ギクッ」

環「宍田くんの背中に乗ってたもんねぇ。息切れしたら強度落ちるのもネック」

円「閉じ込めるにはデカくて強度がいるやつじゃねぇとダメなんだもん。破られる」

環「全部覆わなくていいじゃない。相手の身体の一部、例えば関節が動かないように凝固する。そしたら多少硬度が下がっても大丈夫よ。的を絞る分コントロールはいるけど」

円「天才かよ!やってみる!」



泡瀬くんの場合

泡「立ち回り事態は悪くなかったと思うんだけどさぁ。まさか爆豪があんな作戦立ててたとはなぁ」

環「くっつけるやつって鉄筋?」

泡「そう。今は慣れたけどコスチューム結構重い。俺もそこまで機動力ある訳じゃないから」

環「ロンズデーライトって知ってる?隕石が大気圏に突入する過程でできたやつ。構造はダイヤモンドと差して変わらないんだけど、こっちの方が安価で硬い」

泡「へー、砕かれることねぇかな?」

環「不純物の無いのならむちゃくちゃ硬いよ。溶接にどのくらい時間がかかるかはわからないけど、試してみたらいいんじゃない?」

泡「おう、ありがとなっ!」



取蔭さんの場合

取「じゃ最後!アタシも今回の敗因は爆豪を見誤ってたのが大きいんだけどさ…瀬呂に指摘されたみたいにアタシの個性じゃ立て直しは不向きなんだよね」

環「今が50まで分けられるのか…分割する部分って手足からじゃいとできない?」

取「いや、どこからでもできる」

環「分割した部分の再生速度。分割した部分に取り付ける使い捨てのアイテムがあったら負担は少ないはず。戦闘スタイルはヒットエンドランより確実に弱点つくべきね」

取「難しい〜弱点つくのは得意なんだけど…今回は固執しちゃった。アイテムってどんなのがいいかな?」

環「偵察カメラ、は却下されそうだなぁ…ダメージ負わせるために神経麻痺の類いはどう?コスを鋭利にするのもいいかも」

取「コスは髪の毛とかからじゃないと作れないから時間かかるかも。いろいろ申請はしてみるよ」


という感じに簡単な助言しかできなかったけど、未来のヒーローたちの可能性を広げるお手伝いは”完”ということでいいかな?


「はよー、お前ら朝はぇな。あ、環心いんじゃん」

環「どーも回原くん。お邪魔させてもらってまーす。うぉ…ここにも面良きがいたとは……」

円「面良き?」

環「A組に顔面最強男がいてね…女子から”面良きくん”ってたまに呼ばれてる」

取「隠れてるけど地味イケメンだもんね回原は」

回「うっせぇよ!」


続々とB組の皆が起きてきた。合同演習でした怪我の心配をしてくれたり、何故このメンツで話していたかだとか色々質問が来る。そういうところはA組と何ら変わりのない高校生って感じ。

このクラスも楽しそうだな。ただ演習になったら分が悪い人ばっかりだ。


環「私、B組だったら演習きつかっただろうな」

円「何で?強ぇじゃん?」

環「相性の問題だよ。接近できるって言っても、回原くんとか鱗くん…小森さんの肺攻めとか無理。息止めるしかできないよ」


いくら軍事格闘術を身に付けていようがその技が通らなかったら意味がない。回原くんは全身旋回されたら触れないからアウト。鱗くんは彼のカルシウム不足を狙うしかない。小森さんは…ガスマスクつけてなったら無理。


泡「じゃ鉄哲とか切島にも分が悪いよな」

環「彼らは大丈夫。切島くんは疲弊して硬化できなくなったところを絞める。鉄哲くんは集中攻撃」

取「硬くて無理じゃないの?」

環「鋼は柔軟性があるけど頑張れば割れるから。鉄哲くんと轟くんが戦ったとき、轟くんが炎熱じゃなくて氷結を続けて0度以下にすることができていれば…」

円「できていれば…?」

環「パキンて割れてたかも」

回「キンテツ!!お前生きてて良かったな!!」


私たちヒーローのひよっこは相性を考えながら立ち回らないといけない。今回見ものだったのは、黒色くんと常闇くん。青山くんが加わってカオスだったのが面白かったな。

プロになったら個性の相性をもひっくり返すくらいじゃなきゃ、救けることはできない。誠に難しい。

朝食が終わった人からゾロゾロとこちらの方へ。B組の教室へ遊びに行ったことはあるけど、寮に来るのは初めてだし、ゆっくり話したことがない人ともお話しできる機会は珍しいと思う。

B組は全員仮免に受かったから補講にいってる人いないしね!


拳「怪我は大丈夫なのか?」

環「リカバリーしてもらったから頭の傷もないわよ」

塩「先の戦い…まるでジャンヌダルクのようでした」

柳「接近戦もできるとかウラメシかった。物間をよく殴り飛ばしたよね」

小大「ん」

小森「環心ちゃんその服かわいい〜」

角「セクスィなスポーツウェアでーす!」


B組の女子とは合宿で話したことがあるからかなりフレンドリーに接してくれる。怪我の心配だったり、私の戦闘スタイルだったり話したいことはたくさんあるみたい。

女性のヒーローってどうしても男性に比べたら少ないから、同期でこんなにもいるなんて素晴らしい。皆かわいいし。


環「ふふっ、相変わらずみんなかわいいわ」

「「「「「「「……」」」」」」」


おっと、気持ち悪い笑い方をしてしまったのかもしてない。そのせいか黙ったB組は私を凝視…そんなにヤバかった?


回「俺、小大と八百万と環心…似てると思ってたんだよな…髪の毛短くなって小大寄りな感じ」

泡「いや、全然違うだろ」

円「そーだぞ回原。小大は守ってあげたいかわいい系。八百万は綺麗でセクシー系。環心はエロいお姉さん系だ」

回「それは解る。そのランニングウェアはエロい」

環「セクハラ」

鱗「おい、やめろ。環心が引いてる」


どういう性格かあんまり知らなかったから少し驚いた…とりあえずは平気だよ、ちょっと引いたけど。


物「皆知らないのかい?!環心は狂喜に満ち溢れた女なんだよ!!血を流しながら僕を殴り飛ばしたあの姿グハッ…」

拳「一番遅くに起きてきてこのテンションかよ。ごめんな環心。一撃入れられなかったのが悔しいんだよ」

環「大丈夫……けど、物間くんにはドン引きだわ」


起き抜けに嫌味とか元気すぎますね物間くん。私を見つけた途端に、エレベーターの所から一直線。そして拳藤さんに沈められる。

そんなにA組を敵対視しなくてもいいじゃん。一部例外の人はいるけど……幼い。

B組の常識四天王だと思っていた円場くんはどうやらお調子者らしい。蛙吹さんの一件といい思春期真っ只中って感じ。というか…ね?


環「へぇ、いいね青春。青い春だ」

取「ミッドナイトみたいなこと言ってる」

環「え、心外」


ミッドナイトに構われているせいか、発想が似てきてしまったらしい。”青春”ってワードミッドナイトがむちゃくちゃ使ってるじゃん?仕方ない。

頭の片隅で対峙している悪い影響を与える人たちは、青い春なんてあったのかな。ミッドナイトは年中脳内お花畑で、ある意味青春状態だ。


取「ところで環心の青春は?」

環「んー…人並み」

柳「人並みの恋愛…とか」

環「人並みに高校生してるだけですー」


実はあの爆豪勝己とお付き合いしてますって言ったらとんでもなく質問攻めにされてしまうから言えない。というかA組もいずしか知らないし…

芦戸さんや葉隠さん辺りにバレたらその日は寝れないと思う。あ、耳郎さんもヤバイ、根掘り葉掘り吐かされてしまう。


取「じゃあこの中だったら誰がタイプ?」

環「B組………?んー、顔含めて回原くんかな?」

回「マジか!!?」

環「生意気なクソガキ具合が扱いやすそう」

円「環心ってSだったのか…」

回「素直に喜べねぇよ!!クソじゃん!!」

環「ふはっ、冗談だよ」


やっぱ高校生だなぁ。回原くんの生意気な感じがちょっと勝くんに似てるんだよね。彼が小さいときのヤンチャ具合そのまんま。

顔は轟くんがイケメンって言われるけど、私は回原くんの方がタイプ。ポワッてしてるよりキリッとしてる方がこう…なんか好き。

でも、いずみたいなベビーフェイスが男(雄)になるのはかっこいいと思う。幼馴染みの贔屓かもしれないけど。

後は…砂糖くんとか障子くんの包容力もいいなぁと思うよね。B組だったら宍田くんと仲良くなりたいな。A組にはあそこまで紳士的な人いないもん。

未だに納得いっていない回原くんをクスクスと笑ってあげれば、皆に凝視された時と同じように…物珍しそうな顔をされる。


拳「環心最近笑うようになったよな」

環「うん、皆に言われる」

拳「何かあったのか?」


あ、私が笑うようになったから不思議なんだ。

一番の心境の変化としては幼馴染みたちかな。それとサー・ナイトアイがユーモアのない世界に平和は来ないって言っていたから…積極的に笑わなきゃなって。

救助の時だって仏頂面のヒーローじゃ安心を与えられない。それと、エリちゃんに心配されちゃうしね。

大口を開けて笑うことは少ないけど、変わったと言われるのはいい方に向かってるって証拠。


環「総括すれば幼馴染みと師匠の教えの影響」

取「幼馴染みと言えば、緑谷も爆豪も変わったよね。特に爆豪…超変わりすぎだろ!って感じ」

環「いずは…イレギュラーはあったけど個性扱えるようになった点はそうだね。自信がついてオドオドしてなかった。勝くんは…あんまり変わらないよ。一番になってやる〜って言い張ってるガキ大将だ…ちょっとは優しくなったけど」

取「やさ、しい…?え、誰が」


あんまり関わりのない人からみたらまだ粗野なイメージが強いらしい。私の優しいという言葉に首をかしげている。

私だけじゃなくて、A組の皆はなんとなくそのことが解ってきたんじゃないかな。最高のヒーローになるために”救けて勝つ”が実践できた点。”任せる”と言えるようになった点。ワンマンじゃない動きは本当に格好良かった。


環「たぶん二人とも最高のヒーローになるよ」

物「最高のヒーロー??!笑わせるね!!きっと僕たちの方が最高のヒーローにふさわしッグァ……ふふふ拳藤、今のは甘かったね」

拳「うるさい黙れ。お前は水を差しすぎなんだよ!」


さっき気絶させられていた物間くんの復活。というかせっかく成長してる二人のアピールしようと思ったのに邪魔されてしまった。


柳「物間怖。まぁ大体みんな揃ってるし、真っ昼間ホラー鑑賞会始めるよー」

角「そのぉ後はあにめ観まぁーっす」


まだ午前9時なのにホラー鑑賞会だって?たまにの息抜きは大事だけど私はそれ無理……っ!


環「お邪魔しましたッ!」

拳「怖いの苦手だったな」

環「だから!私帰るね!お邪魔しました!」

取「環心ー!ありがとねー!」

環「どーいたしましてー!」


脱兎のごとく走り去った。

怖いのは本当に勘弁してください。



 *



 *



女子のその後。

小森「環心ちゃん絶対なにかある」

柳「回原は無いとして……緑谷か爆豪?」

取「逆に轟じゃなァい?面良きくんだってさ」

小大「ん」

角「いずぅれにせよスマイルは素敵なことでぇす!」

拳「環心もヒーローとして成長してんだよ」

塩「環心さんの微笑みはそう…聖母マリアでしたわ」

取「今度A組に聞いてみよー」



 *



男子のその後。

泡「俺もお礼最後に言っとけば良かった」

円「明日でいいんじゃね?」

回「……」

鱗「回原黙ってどうしたよ?」

回「…環心アリだなって……思った。笑ったの良い」

円「ぬぁッ!?抜け駆けは許さねぇぞ!」

泡「高嶺の花、無理だって」

回「だって個性とかさ話してくれてたし!あとむっちゃ見てた俺のこと!あと!顔含めて良いって!」

鱗「釣り合わねぇ」

泡「勘違いだろ」

回「ワンチャンあるってきっと!!」

「「「(((ねぇよ)))」」」




ホラーそっちのけで、環心シオンの考察を始めるB組でした。



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B組常識人男子四天王が書きたいがためのお話。口調がわかんない。ただの捏造妄想の塊。

B組で地味扱いされてる回原くんすごく好きなのでしんりちゃんともっとお話しさせたい。そして勘違いして玉砕すればいい。

ちなみにこれ2019年10月8日に書いてた。
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