不調というもの

文化祭、1週間後。

ドゴォッ!!

「!!?」

「おい、スクエア…ストレス発散に付き合え」

「何事……ストレス発散なら切島くんの方が適任じゃ…?それに私疲れてるんだけど」

「この1週間腑抜けたテメェ見てイラついてしゃーねぇンだよ。最近ロードワークもしてねーだろ。いいから相手しろやッ」

「えー理不尽…」


パチパチと手のひらで爆破を繰り返す姿は、寝起きの私には般若に見えた。

なぜ彼にストレスが溜まっているのか。

それでは私の1週間を振り返ってみましょう。

 
 *


 *


1日目、数学。

「…心……環心!」

「!…はい」

「授業中二ボーットスルナ。文化祭明ケデ疲レガ残ッテイルノカモシレナイガ授業ニハ集中シロ」

「…はい、すみません」

「ジャア…コノ美シイ数式ヲ解イテミロ」

「………0です」

「正解ダ」

「何で!!何で駄菓子3万円分くらいのレシートみたいな数式を秒で解けんの!?」

「そりゃあ不動の1位だからなぁ」

「でもさっ!ウィンガーディアム・レ○オーサのごとく宙をなぞっただけだぜ!?」

「パーフェクトウーマン…恐ろしい」


 *


2日目、昼休み。

「シオンちゃ〜ん!私とお昼しましょう!!」

「ミッドナイトがなぜここに…」

「相変わらずいいおっpグハッ」

「何か用ですか?」

「ん〜?ちょっと…逢い引きのお誘い」

「……(長くなりそう)…放課後にだったら」

「ウフッ。待ってるわよ〜」

「ミッドナイトに凄い気に入られてるよね」

「嬉しいようで、嬉しくないわ…」

「…シオンちゃん大丈夫?眉間のシワが」

「大丈夫、眠いだけ。昼休み、寝るわ…」

「う、うん。おやすみ…」


 *


3日目、体育。

「今日は個性なしのシャトルランだ。男子は100回、女子は90回を最低ラインとする」

「げっ、マジかよ」

「中学でウチ70くらいだったんだけど…」

「大丈夫!ヒーロー科入って体力増えたやろうし!」



「……で、男子最高は爆豪の286回…女子最高は環心の205回…トップは思いの外伸びたな…」

「次元が違う…みんなノルマはクリアしたけど…上位陣意味わからんよ…」 

「でもシオンちゃん中学の時よりだいぶ記録落ちてる」

「マジで!?」

「うん。確か252回だったから…体調悪かったのかな?怪我してる様子はないけど」

「そういえば月曜からいつもと違う気はするな」

「それでも普通の記録じゃねぇよ……」


 *


4日目、ヒーロー基礎学。

「決められた3人組でダミーの救護者を運びながら戦ってもらう」

「よろしくね!環心さん!上鳴くん!」

「じゃあ救護者は麗日さん頼んでいいかな?私が先頭で策敵しながら進むから上鳴くんはポインターで援護お願い」

「おっけーぃ!そんじゃ一番乗り狙いますか!」



「3時の方向敵2!応戦するわ!」

「俺も援護する!くらえっ!!…ッ!?環心そこはッ!!」

「環心さん!!」

「グッ…」

「わりぃ!!?俺の配置ミスだったわッ」

「いや……違うころを視ていた私が悪いわ…」

「私ももっと早く声かけられれば…」

「反省はゴールしてからにしましょ」

「環心さん最近調子悪いんとちゃう?ボーッとしたり本調子じゃなかったり…」

「…何でもない!!さっ!行こう!」

「あ、行っちゃった……熱あるんちゃうかな?」

「かもな。てか俺の放電でダメージ無さげなの何で?」


 *


5日目、科学基礎。

「アレニウス、ブレンステッド、ルイスの酸・塩基の定義の違いについてはテストに出すからな。では今日の授業は以上!」

「「「「「ありがとうございましたー」」」」」

「んー酸については芦戸が詳しいか…なぁなぁ違いがいまいちわかんねぇんだけどよ」

「あたしもわかんなーい!酸はフィーリングで出してるからなぁ。これは角質落とすのにいいんだよー。ホレ」

「別にそれは聞いてねぇーよ。あっ!」

「ッブ」

「わっ!ごめん!顔はさすがにヤバイ!すぐに洗い流さなきゃ!目に入ってない??」

「…大丈夫だよ。それにエッチング液のかなり弱いやつみたいなのだからすぐに洗えば…」

「あたしもついていく!」



「…顔、赤くなってないでしょ?平気よ」

「うん…ごめん〜。思いの外飛び散っちゃった…」

「大丈夫だってば!ほら教室戻ろ」

「お詫びに明日のお昼おごる!」

「じゃあデザート奢って」


 *


6日目、英語。

「今週最後の授業だぜ!!テンション上げてけーリスナー諸君!」

「週の最後にプレゼント・マイクの授業は疲れる」

「右に同じく」

「声が具現化して視えるからこの人の授業嫌い」

「大丈夫ですか環心さん。耳栓を創造致しましょうか?」

「ありがとう、でも流石にそれは先生に失礼だってば。私はシャットダウンしとけば大丈夫だから」

「八百万とやってること同じじゃねェか?」

「それを気にしちゃダメだよ轟くん」

「シャラーーップ!!さ!どんどん進めるぜ!」


 *


7日目、ハイツアライアンス。

「あら、環心ちゃんは?質問したいことがあったのだけれど」

「彼女なら、朝早くにランニングをしたあと制服で出掛けていったぞ」

「そうなのね。教えてくれてありがとう飯田ちゃん。それにしても制服?何かあったのかしら?」

「んー、何があったかはわからんが、文化祭が終わってからの彼女は調子が悪いように見受けられたな」

「そうだね…(文化祭での監視の疲れがきたのかな…?)シオンちゃんしっかり休ませないとね。無理して倒れたら大変だ」


 *

夕方。


「疲、れた…」

「「「「「倒れたー」」」」」

「ん”ー…麗日さ〜ん、部屋まで運んでくれないかなぁ…もう、歩けない…」

「わ、わかった!任せて」

「まぁ大変!疲労回復効果のあるお紅茶お持ちいたしますわ!」

「てかそんなになるまで何してたのさ。キャパ見誤るなんてらしくない」

「ははは……ちょっと断れない頼み事でねぇ」

「とにかく今は寝なきゃダメだよ〜」

「女子ーズの皆さんお手数お掛けします…」

「今週絶不調だよねぇ……もしかして恋!!?」

「芦戸さん何でも恋に結びつけないでよ…」

「恋バナしたーい!何でもいいから恋バナに結びつけた〜い!!」

「寝させて……」


 *


 *


んー、腑抜けてたと思われても仕方のない失態の数々。だからって寝ていた乙女の部屋のドアを蹴り開けることする?鍵閉めるの忘れてた…

ドア付近に仁王立ちする彼からは憤りを感じる。個性は疲れて使えてないけど、顔がそんな感じの般若よ。

確かに考え事で集中できなかったのは事実。みんなにも「らしくない」と言われるくらい狼狽えたり疲れが出ている。その原因たちは解っているんだけどねぇ。

今日もキャパオーバーしちゃうくらい個性を使ったしなぁ。補講があったため勝くんは今日も傷だらけだけど、それでもストレス発散で私と組手ですか?


「今日は勘弁してよ…明日も学校だし、さ?」


お手上げ状態で彼の威嚇する彼を宥める。こちらに敵対心はありませんよ。勝くんだって疲れてるでしょ?

そう促しても一向に引かないという強い意思を感じる。今何時?…22時過ぎてるじゃん。また夜中に外に出て、喧嘩だどーのこーので謹慎させられたいの?

同じ鉄は二度と踏まないと思っていたんだけど、この時間から彼のストレス発散に付き合うために外に出る?いや、それは本当に勘弁して。


「今、喋ってるのすら辛いんだけど」

「…いいから…ッ!」

「は、」


それは、私が教えたこと。


「意図をお聞かせ願いますか…?」

「…ストレス発散」


賢いあなたがすることだから意図なんて解ってる。

賢いあなただから、私は察したくなかった。


腰に回るは、あなたの腕。


いつもの私じゃないから、分が悪い。




【不調】 上手く整わないこと。調子が悪いこと。




2020/2/5 加筆・修正









シャトルランの最高記録はサッカーの長友選手の375なんだとか…ヒーロー科の記録がおかしいのは、個性出現で身体機能のアベレージ上がった…んじゃないかな?(適当)

数話くらい番外編みたいなのが続きます。
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