企図というもの

補習後、職員室。

「臨床心理士か…どーりで」

「いや、一応入試書類に書いてましたよ?」

「そんなとこ見てない」


じゃあ何で書く欄があったんですか??


「まぁいいじゃない。シオンちゃんらしくて」

「私らしいって何ですか…」

「全てを見透かす女王様!!」

「前半部分だけ合ってます」


インターン組の補習が終わったあとに連れてこられた職員室。相も変わらずミッドナイトは絡んでくるし、相澤先生の寝不足具合は尋常じゃない。

今クラスメイトは寮で文化祭で行う"パリピな空間の提供"について、役割分担をしている。私もそっちに合流したいんだけどなぁ。


「お前には文化祭に2つしてもらいたいことがある」

「?……………ハッ、え、私、体育祭に引き続き文化祭も監視役って事ですかッ!??」

「お前も生徒だからな…文化祭自体には参加する権利がある。だが警察庁から文化祭開催の条件の中にお前の監視があったんだよ」


何それ。いつそんな協議があったんですか?学生の執り行う監視が開催条件の1つだって?

当日までに複数回ハウンドドック先生を中心とした監視役と打ち合わせを言い渡される。

わぉ!私すっっっごく信頼されてるんですね??確かに警察に協力してて実績ありますけど!??


「それとエリちゃんだ」

「あぁ、校長の許可降りたんですね」

「通形と常時一緒にいるが…たまにでいい彼女を視てくれ。それにお前のハグが効いたらしく、次いつ来るか気にしていた」


そっか。外に興味を持ちはじめて、そのきっかけの1つに私がいる。これはもうまたハグしなきゃだな。

精神面に不安がある彼女を視るくらい、仕事のうちには入らない。私がしたくてするんだから。エリちゃんに笑顔になってほしい。



 *



 *



夜、ハイツアライアンツ。


「一緒にアクロバットで登場しよう!環心がいたらダンスの幅広がるからさ!」

「楽器できるんだったら上鳴とギター代わらない?歌もできるんでしょ?ウチの代わりにさー」

「ダンス隊だって!」

「バンドにもいたら安心なんだよ」

「なぜ私は二人に詰め寄られてるのかな?」

「「ね!お願い!こっちに加勢して!」」


寮に戻りドアを開けた瞬間に芦戸さんと耳郎さんの猛攻。役割分担で私の引き抜きにきたらしい。

ダンス…はできなくはない。
バンド…ギターも歌もそれなりにできる。


「あー、っと……諸事情で文化祭、抜けることが多くなりそうでね、んっと…練習あんまり参加できないかもで…」

「えー……そっかぁ」

「文化祭には参加できるんでしょ?だったらダンスの前半だけとかできるんじゃない?」

「それなら、まぁ。でも中途半端は…さぁ?」


どうにかして私に役割を与えようとしてくれる。だが監視という任務を与えられたため、中途半端にしか参加できない。そんなんじゃ周りに迷惑をかける。

なにより、他科が100%満足させなければ意味の無い演目だから…


「お前は演出だろ」

「再び意外な援軍、轟!」

「何で演出なの?」

「私演出に加勢できるような個性じゃないけど」

「あれだ、総合演出。全体視ながら細かい指示出すのとか得意だろ。それだったら練習の負担も少ねぇんじゃねーの?」

「「「!!」」」


視野の広がった轟くんからの提案。あ、そっか。何もステージに立つだけがパフォーマーじゃない。派手にするだけが演出じゃない。

へぇ……いいね。全体のクオリティーを上げるための総合演出という立ち位置。半端な演出は組めない。やってやろうじゃないか。


「私…厳しいからね」

「おう、頼んだ…その顔爆豪そっくりだな」

「ん!?うるさいっ!」

「環心の敵顔……」

「フンッ!もういっ!」


確かに挑発的な顔をした自覚はあったさ。だからって彼に似た敵顔してる……ヤバい、鏡に写った私の顔乙女の顔してない。

そうじゃない。笑え、笑うんだ…ヒーロー。

あんな顔になってたまるか………ッ!


そして、深夜1時。


「これで全員役割決定だ!」


バンド隊、演出隊、ダンス隊。役割が決まりあとは細かい所を詰めていく。

飯田くん、夜更かし慣れてなさすぎて隈ができてるよ。アドレナリンが出ているせいか、あまり眠そうにしてる人は少ない。

一応どんなパフォーマンスにするのかヒアリングだけしとこうかな。



バンド隊の場合。

「何で演出なんだ、音で殺れねェじゃねーかッ。テメぇギターできんだろ」

「アコギしかしたことがないよ。勝くんみたいに教室通ってたわけじゃないし…素人もいいとこ」

「トリルやらスラップする奴のセリフかよ」

「やっぱ上鳴とチェンジで」

「何で!?今さっき決定ってなったじゃん!?」

「修羅の行く末は茨か…」

「…強調はアップテンポのロックですわ」

「……おk理解」



ダンス隊の場合。

「ここでグルウル〜ってして、ジャンプ!」

「うん」

「ツッタッターツッタッターツッタツッタで男子がジャンプ」

「うん」

「で、女子がブワ〜って入ってきて……個性の演出したいね!それはまた相談する!」

「そうだね。うん、わかった」

「環心さんわかったん?」

「"しんり"で思考共有した」

「シオンちゃんじゃなきゃできないことだ…」

「私は適任だと思うわ」

「ありがとう」



演出隊の場合。

「ヒアリングどうだった?」

「まだお遊戯会の準備段階って感じ」

「おっけー。派手にするために…俺のテープで誰か吊るす?」

「吊るすより麗日に浮かしてもらった方が自由度高いだろ。あ、俺氷削る時に命綱で…できるか?」

「テープ骨組みにしたら複雑な形の氷も作れる」

「口田くんは動物さんたちにお願いして、広範囲のカバーして欲しいな」

「(コクコク)」



やーっと、寝れる。

深夜2時17分。




【企図】
目的を立て、その実現の手段を計画すること。企て。



2020/3/12:加筆・修正
- 93 -
[*前] | [次#]

小説分岐

TOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -