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タカラモノ3



ちいさなころ。
僕の世界は、三つの部屋で構成されていた。
ひとつは、僕の寝る部屋、二つ目は、お風呂とかトイレとかの部屋。
三つ目は、優しい女の人に出会う部屋。


あの人は、誰だったのか。そして、あの場所はどこだったのか。
多分答えは知っている。けれど、僕は知らないふりをする。
だって、僕は部屋を出てレン様に出会ったから。
だって、僕は“僕”になったから。
そうして、答えは小さな女の子だった僕ごと部屋においてきた。


でも、一個だけ持ってきたものがある。
どうしても大事で大切で、手放すことができなかったもの。




タカラモノ3






立派な構えの豪奢な館。
この国の誰もが敬いそして恐れる“超”貴族様の住む館である此処。
そんな館には、ある時間になると必ず流れる音がある。


高い能力と共に黒い噂の絶えない侯爵家…カガミネ家。
泣く子も黙ると噂されるそのお家だが。
広く大きな館からちいさく流れてくる音色は噂とは程遠く。
静かで澄んでいて…なんだかやさしい、そんな音色。

館の外にいる者にとっては、
耳をすまさなければ聞こえないような小さな音。
さてあの音をは誰の音か。
それを知るのはそりゃあ勿論館の人のみ。


「…相変わらず、巧いな」
「レン様…だから突然入ってこないで下さいといつも言っているでしょう?」
「忘れた」
「もー」


呆れたように、ちょっと怒ったようにため息をつく青年…リィン。
柔らかく輝く金髪に蒼い瞳。そして手には飴色のヴァイオリン。
青年…と言えるほど大人でもなさそうな、どこか危うさを漂わせた人。
まぁなんとも綺麗な青年であるが、彼こそがいつも流れる曲を奏でる本人様なのだ。

さてそんなリィンの前に向かい合うは、これまた御綺麗な青年…レン。
金髪青い目と見た目はリィンと鏡写しのように全くもってそっくり。
だがしかし、彼に漂うのは危うさではなく完成された美しさ。
この二人は、造作こそそっくりではあるが与える印象が驚くほどに異なっている。


閉ざされた瞳に、ふれたら切れるんじゃなかろうというほどの冷たいオーラ。
カガミネ家の恐ろしい跡取り息子…そういわれるのも頷ける。
そんな噂は知ってか知らずか、
レンに対峙しているリィンはさっぱり動じないようで。


「あ、そういえば明日からまたお城ですよ」
「…面倒だな」
「さぼらないでくださいよー僕が怒られるんで」
「知ったことか。…だから、リィ、お前の方が忘れ過ぎだ」
「はい?」


きょとん、とリィンが首を傾げればそれはなんだか子供の様で。
レンはふき出してしまいそうになる口元を堪えつつリィンに近づき、ぺちっとやさしく額を叩いた。


「ぃだっ?!なんですか!レン様突然ー!!」
「それだ」
「それって!?」
「敬語、それから様付けな。邪魔だと何度言ったらわかるんだ」
「あぁ…」


またそれか…とでも言いだしそうなリンを小突いて、近くの椅子に腰掛ける。
勝手知ったる自分の部屋とでもいうように足を組みくつろいだ表情。
そんなレンの様子に、リィンも慣れているのかほっといて手に持ったヴァイオリンをそっとケースにしまう。
そして仕舞い終るとケースはそのままにレンの向かいの椅子に腰を下ろした。


「まぁレン様は一応僕のご主人様ですし」
「そんなこと思ってもないくせにな」
「思ってますよー?だって、本当に…」


(本当に、レン様のおかげで、僕は…)

…捨てられたという事実をわすれることが出来ていたから。
それに、本当の自分をわすれないでいてくれるのはレンだけだから。

リィンにとって、レンはとてもとても大切な人なのだから。
…届いているかはわからないけど。
てか、知らないでいてほしい気がしなくもない。恥ずかしいから。


「なんだ?」
「いっいや、その、…なにも、ないです」
「ふぅん?」
「な、なんですか!?」


ジト目でこちらを見てくるレン。
内心思っていることがばれたのかとドギマギしつつも視線を受け止める。
蒼い、澄んだ瞳。
それはまるで宝石の様で、リィンは見る度に見惚れてしまう。

高貴で、触れるのをためらわれるような、
それでもずっと見ていたくなってしまうような。
そんな、瞳。


「でも実際お前は俺の召使でもなんでも無いだろ?話し相手ってやつだったし」
「う?そーですけどー。…このお家において頂いているのは事実ですし…」
「事実、ねぇ」
「そうです。…事実、ですよ」


ずっと見続けていたからか、突然話を変えられる。
真面目な顔でリィンが受け応えれば、何やら怪しげな笑みのレン。
…悪戯を思いついたこどものような。


「じゃ、召使でもなんでもいいから一曲聞かせろ」
「ええー?どんな流れですか…」
「いいだろ、減るもんじゃないし。ご主人様の命令だぞ」
「オーボーだぁ!」


でもまぁいいか。
誰にも聞かせられないこの音を、貴方くらいには覚えていてほしいから。



「じゃあ一曲、僕の大切なご主人様の為に」





my little wish


(たとえみんながわすれてしまっても)
(あなただけにはぼくの音がとどきますように)



・・・・・・・・・・・


ほのぼの…?
すーらーんーぷー!うぇい!(どうした
でもこの二人すきだー僕っこかわいいよ僕っこ…!
あぁ一限なんてなくなればいいのに…^q^


2012/10/08

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