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タカラモノ2


「うっさすがにキツイ…かも」

そろそろ、体を隠していくのも限界になってきた気がする。
それを自分で認め、リィンは小さくため息をついた。
まぁ、隠しきれないだろうとは随分前から分ってたけれど。
ここまで隠せるとは、…自分の貧相な体つきに涙が出てくる。
しかし限界が来たらどうすればよいんだろう。


「僕には、ここしか居場所はないからなぁ…」


帰る場所なんてないし、一人で生きていけるような技も無いし。
ツテなんて持ってる訳ないし。
それに、


「レン様のそばを離れるなんて、出来る訳無いしなぁ…」


だってそれは、自分を捨てることと同義なのだから。




タカラモノ2






俺の朝は、リィの足音で始まる。
リィの足音はわかりやすい。音はあまりたたず、なんというか…軽やかなのだ。
歩くだけなのによくもまぁ楽しそうに。
いつもと同じくそう思いながら目をあけ、寝巻のまま起き上がってドアに近づく。
そして足音が止まった瞬間、なるべくゆっくりにと心がけつつドアを開ける。


「リィ、おはよう」
「あっおはよう、レン。相変わらずの正確さだね!」


そうして、俺は朝いちばんにリィの笑顔を見る。
これが俺の毎日の習慣。



いつもリィはきちんと着替えて俺の部屋に来る。
そんな訳で、俺が着替えている間は本を読むなり景色を見るなりして頂くことにしている。
…そして、思うことが無い訳でも無かったりする。
椅子に腰かけ本に熱中しているリィの傍へ近寄り、そっと呟く。


「リィって危機感無いよな」
「は?えっ何」
「だってさ、朝っぱらから寝起きの男の部屋に来るって」


危ないだろ?と言いつつぐいっと体を近づけにっこりほほ笑めば。
きょとんとしたリィの顔。


「だって、レンだし」
「…おい」
「それにさ、レン以外の男の人の部屋になんて行かないし。行きたいとも思わないよ」
「…そ、うか」
「?うん」


かろうじて頷き返すが、返答を反芻し茫然としてしまう。
…こいつ、威力を解かってないな。
はぁ。本当に、やってくれる。



俺はリィのように感情豊かとは程遠い人間だと自覚しているし、他人から見てもそうだろう。
もちろん道徳心なんてものもサッパリ持ち合わせていない。
幸い家は貴族だったので、生活には困らないし。
この貴族とやらを持続させていくためのかじ取りは案外面倒だったが、まぁ、それくらいだ。
領地問題も色々面倒で
ほっておきたいが。…が、それをやるとリィが悲しみそうだから。
まぁそこそこに立ち回り、そこそこに生き。

そうして他人方から頂いた有りがたくもないお言葉たちの数々。
無表情、唯我独尊、冷酷無情そんなんばっか。あぁあと、無慈悲ってのも言われたな。


それも別に嫌じゃない。
というか、どうでもいいんだな、多分。
何故って、他人とはあくまで他人な訳で。俺とは別の生き物なんだ。
それぞれの考えを持ってるのは当然のこと。それに俺が口出しする権利はない。
だからつまり、お前らだって俺の生き方に口出しする権利はないってことだろ?


羨望、嫉妬、蔑み。
生まれてからこのかた、俺の周りはそんな感情ばかりだ。
気にしないでくれればいいのに。どうしてかくっつこうとして、そうして結局離れていって。
いい加減、ほっといてくれればいいと思ってた。


でもお前は違ったんだ。
出会いからして、俺を惹きつけて。そうして、突き放しやがって。
お前は本当に良く解らないやつだ。
でも、そんなリィから離れがたくなってしまった俺も、本当に。


だからな、リィ。俺がお前を手放すなんて。
お前が俺から離れていくなんて、そんなこと。
許すなんて、有る筈ないだろう?










はなさない



(絶対に)





・・・・・・・・・・・・・・

レン君のターン!!
次からちゃんとした話に入ります。
しかし相変わらず、私が書くレンはリンに固執してる…。だってそういうのすきなんだもん!←


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