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しあわせな日々


本当はずっと心配だった。
もしかして夢なんじゃないかと、何度も何度も確認した。
姉さんが頷いてくれたのは、夢、もしくは同情、なんじゃないか…と。
怖くて怖くて仕方がなかったんだ。
でも、たとえ夢だと、同情だと言われても、僕は。

…もう離すことなんかできやしないんだ。




しあわせな日々





「凛さん…これはこれは」


うるさい


「随分とお綺麗になられて…」


うるさいうるさい


「これで、鏡音家も安泰ですな!」


そんなもん、知ったことか。


ご婚約披露…だかなんだったか。
僕らの婚約が正式に決まったことを示すための、儀式。
それはいいんだけども。


「ご婚約おめでとうございます、廉様、お嬢様!」


どうしてこんなに人をよばなきゃいけないんだ!
しかも…皆姉さんをみて。
あぁいやだいやだ。ねえ、見ないでよ。
姉さんがきれいなのは、僕が一番知っているんだ。
僕以外、知らなくていいんだよ。
…姉さんを、みるな。


「皆さま、有難うございます」
「…姉さん」
「?廉、さん?」


姉さん、姉さん。
そんな奴いいから。ねえ。


無意識につかんだしろい手をそっとひきこみ、姉さんの体ごと僕の腕の中に移動させる。
吃驚して固まっている姉さんに微笑んでから、先ほどまで相手していた客人へ向き直った。
ついさっきまで、姉さんのことをいやらしく見ていた最低な奴ら。
あぁ。こんな奴ら。いなくなってしまえばいいのに。
…姉さんが怒るから、やんないけども。


「あぁすみません。姉さん…凛さんの具合が。彼女は少々体が弱いもので…」


適当にいって姉さんの肩を優しく抱き込む。
すみませんと謝れば、アッサリ騙される馬鹿な人たち。
あーほんと。嫌になる。


こんなところにいなければいけないこの身分も。
何もせずに愛想笑いが出来てしまう自分も。
嫌で嫌で仕方がない。


でも、それでも。
僕はずっとここに居続けるだろう。
愛想笑いを張り付けて、適当な言葉を言いつくろって。
鏡音家に縛られ続ける。
だって、僕の望んだことでもあるのだから。


僕の望んだこと。
それは勿論。


「れっ廉さん!突然…もう!私具合なんて悪くありませんよ?」
「あぁごめんごめん」


それは勿論、…貴女の傍に居続けること。
貴女の笑顔を、護りつづけること。
貴女を…僕の者にすること。
それが僕の…僕の望んだもの。


「でもさ、実際姉さん顔色わるいよ?」
「…う」
「やっぱり…。無理しないでってあれほど言ったのに」
「そ、それほどでもないですし…」
「うそつき」
「むー」


姉さん姉さん。
本当は、とじこめておきたい。
どこにもいかないでほしい。誰も見ないでほしい。
…僕だけを、みてほしい。


でも、そんなことは叶わないから。
まだ学生だし。…まだ、ね。
だから今は我慢するよ。今はまだ、これだけで。


「…っひゃ!れれ廉さん!突然どうしたのですっ?!」
「んーなんでもないけど」
「そんなわけ…ぴゃぁっ」


貴女の一番近くに、隣にいるだけでよしとしよう。
だって、ぼくは。僕にとっては。
姉さんがいれば、それだけで。





嗚呼なんてしあわせな日々!!





(僕だけを見て?)


・・・・・・・・・・・・


あぶねええええええ!!!!!!
義弟…おい義弟いいいいいいい!!!!


テスト期間に書いたものを掘り起こしてみた。
りあじゅう…(え

2012/08/01

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