novel
Blown night
注意!鏡音じゃなく神威リンレンです。
なぜなら強そうだから!!←
―――神威―――
それは、吸血鬼のなかで純血種と呼ばれ、貴族の中でも一目置かれている一族が五つあるなか、その中で最も崇められ、恐れられている一族…。
昔々、吸血鬼だけの王国で、かれらを統治していたと言われている、そんな一族。
そして、そんな神威家にはある言い伝えがあった。それは…
・・・この家に男女の双子が生まれたとき、その時が我々の終焉のはじまりとなるだろう・・・
・・・なぜなら・・・
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真っ暗闇に丸い月がぽっかりと浮かぶ。そんな空の下にあるのは深い深いまっくろな森。
そのなかを静かに駆けていく人影が数十みえました。
その影達が向かうは、森の奥深くにある古い古い豪華なお城。
さてさて何をそんなに急ぐのか、かれらは一心不乱にそのお城へと走ってゆきます。
かれらのまとう空気は不穏そのもの。森の動物たちは怯えたようにその人影をただ見ています。
おや、目的のお城に着いたようです。
かれらは何かをしようとしているようですが、そんなかれらの前に二つの人影が立ちはだかります。
その人影に怯んだように幾人かは速度を落としました。しかし他は変わらず速度を保ち、その二つの人影に何か声を浴びせます。
と、そのとき、二つの人影後ろで何か光る色が見えました。
その色はふわり、と浮き上がり、音もなく彼らの前に降り立ちます。
その光…それはなんと人の姿をしているようです。
「止まりなさい。このような時間に挨拶とは、いささか不躾だと思いませんか?」
涼やかに、ともすれば冷たく、凛とした声。それほど大きな声量ではなかったはず。しかし、その声は響き、その場にいた動くものすべてを静止させた。
風や、木の葉までも。
その言い回しや言葉の端から、この声の持ち主が相当な教養や礼節を抱くものであると感じさせた。
そして、声の持ち主を探すと、そこには、一人の美しさ…そして可憐さをたたえたひとりの少女が佇んでいた。
鮮やかな紅色の、フリルによって何層にもとりまかれリボンで絞られたドレス。
真っ白な陶のような肌に、零れ落ちるかのような大きな蒼の瞳。
髪色は目に冴える金色。つややかな髪が頭の横でリボンで抑えられ、背中に惜しげもなく降ろされている。
金髪は多少癖があるのかはねているが、それすらも魅力に変え、宵の刻であるというに光を放つがごとく、否、実際に輝き、見るものに、彼女を美しすぎる人形のように魅せていた。
しかし、彼女の瞳を見ればそれはすぐに剥がれ落ちる。
蒼い瞳は輝きに満ち、生き生きと光る。眉をひそめている今の表情でさえ彼女の持つその光を損なうことはない。
そこには、彼女の放つ空気により完全に呑まれた世界があった。
その場の動きを、声でまず静止させ、姿で制止させた少女は、黙り込む(彼女に見とれているのだが)群衆にむっとしたように口をとがらせ、あかい唇をそっとひらく。
「私は神威家の現当主であり、もう一人の当主である者の片割れ、神威リン。
このような時間に来訪、…ということは、貴方方、私に話たいことがあったのでしょう?
随分な態度ですが、わざわざこの地にくるのはご苦労なこと。
それを報いてあげよう、というのですよ?さぁ、何か言ったらどうなのです?」
先ほどの声音に貴族的な色が強く加わる。
その声には、彼女の可憐な外見には似合わない、しかし当主というだけの威厳と風格を十二分に具え、聞くものに従わさせる力があった。
それに押されるように、その場にいた、これまた貴族的な男がかすれる声をおしだす。
「…ぁなたは、貴女方は、呪われし者だ。真の王者である純血種の神威家…そこに生まれた、呪われし双子!!!!」
男の発言に誘発されるように、また彼女…リンの声に従わされたかのように、ほかにいた男や女も、呪われた、だの悪魔の、だのを喚きだす。
それをきき、その場の中でさきほどリンを庇うように立っていた二人の男女…青い髪の青年に茶色の髪の女性が眉を跳ね上げる。
そして二人が何かを切るように腕を振り上げ…ようとしたとき、
「カイト、メイコ、抑えなさい?」
またもやリンの声が響く。
それだけで二人…カイトとメイコの動きだけでなく、その他の喚いていた男女の動きも止めてしまう。
「理解しました。アナタ方は何かをお知りになった。そうして、結論で言えば私たちが邪魔だ、と。そして、まぁ…つまりは今のうちに消してしまえ、と?」
にっこり。この場やその発言に似合わない笑顔を浮かべ、リンは楽しくてたまらない、というような声音で続ける。
「そして、まず強いと有名な片方が外出している隙に弱そうな片方…私を消してしまおう、と。
大方レンのほうも足止めくらいはなさっているのかしら?ほんとうに、ご苦労なことです。」
そして笑みのままふぅ、と息をつき、片頬にそっと手をあてる。
その動作だけでも優雅で美しく、みているこちらに、ため息をつかせるほどである。
と、その瞬間、喚いていた男女のそばで、何かがふわりと香る。
香りを彼らが認識しようとした瞬間、…彼らは、崩れ落ちていた。
―――崩れ落ちるさなか、あまやかな声が頭に直接響く。
「さぁ、その知りえた事実を全て私に伝えなさい。そぅして、そのすべてを、ここに来たことも。全てを、お忘れになって?
…枢密院の伯爵方?」
彼らは、何を、ということも許されす、声が勝手に流れ出る。
そうして何かが流れ出る感覚に成すすべもなく身をゆだね…意識を落としていった。
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「ふぅん。あの文献、まだ残っていたの。お父様とお母様が厳重に罠を張っていたから、見つかることはないと思っていたけど…
世界は甘くないってことかな。」
記憶を失いまた気を失い、だらしなく倒れている数十名の男女のそば。そこで彼ら彼女らにその状況を与えた少女は、一人熟考していた。
と、
「リン様!!!無茶はおやめください!!もぅ!」
「全くです!!といいますか何のために私達がいると思っているのですか!!!」
さきほどリンをかばうかのように、否、かばう気で立っていた男女…カイトとメイコがリンのそ傍まで来て怒り出す。
それに、むっとしたようにリンは眉をひそめ、すっと二人の前に人差し指をだし、ぼそりとひとこと。
「さま付、敬語、ひどいです…。」
そうして拗ねたようにぷいっと顔をそむける。
そこには、先ほどの当主然とした空気は感じられず、年相応の表情をしている一人の少女がいた。
そんなリンの姿に一瞬つまり、そうしてもぅっというようにメイコは苦笑し、カイトはやさしげな微笑を浮かべる。
「わかった、でもさ、リンちゃん、僕達、心臓がとまるかと思ったよ?」
「そうよ、リン。私達、何のためにいると思ってるのよ?、まったく、レン様に怒られるわ。」
「あぁ…確かに。そういえば…彼ら、生きて帰れれるかな」
最後のほうはぼそぼそと小声になりながら言い切り、そして二人はリンのほうへ向きなおる。
その瞳には慈愛と心配に満ちていて、さすがにリンも申し訳ない気持ちになる。
「ごめんなさい。カイト兄様、メイコ姉様。でも、…なんだか、嫌な空気がしたから。…ごめんなさい。」
しゅん、と頭のうえのリボンまでしおらせて謝るリンに、なんだかものすごく悪いことをした気分になる二人。
うっと声を詰まらせ二人で顔を見合わせる。
そうして、こちらも謝ろうと口を開こうとした瞬間、
「リンッ!!!!!!」
硬質な、しかし焦りと焦燥に満ちた青年の声が響く。
その声に、リンはぴょこっと顔をあげうれしそうな顔を、カイトとメイコは多少青ざめた顔をする、と
いったいどこから現れたのか、先ほどまでは二人しかいなかったリンのそばに一人の青年が表れ、そのままリンを強くかき抱いた。
その青年は、全身黒の正装で決め、輝く金髪に蒼い瞳…その場にいたリンと同じような容姿である。
しかし可憐な空気をまといさながらお姫様のようなリンと比べ、こちらはすらりとした、しかししっかりとした体躯。
まとう空気は強さと硬さ、…そして、触れれば切れるとでもいうほどの冷たさ。
そんな空気をまとう青年抱かれたリンは、まったく気後れする様子もなく、ちょっぴりうれしそうに、、そして心配そうに、そっとその青年…レンを抱きしめ返した。
「レン、だいじょぶ?リン大丈夫、よ?」
それを聞いた瞬間ぐっとレンは息をつめ、そして、またぎゅうっとつよく抱きしめた。
そうして、リンにしか聞こえないくらいの小声でぼそりと「よかった…」とつぶやいた。
レンは今日某所で開かれていた夜会に招かれていた。
しかし、枢密院で不穏な影があるとの報告を受け、まとわりつく貴族らをはねのけこちらにやってきたのだった。
勿論、リンは強いしメイコもカイトもいるとわかっていた。
それでもやはり安心できず、ここまで来た、という訳である。
リンはレンにとってただ一人の家族であり、片割れであり、愛しい愛しい、大切な、たいせつな存在。
己の命なんかより。ほかのすべてより。
この、基本的に無感情だと自分でも自覚しているレンに、唯一、感情を起こさせる貴重な存在…。
様々な思いが渦巻く中、またぎゅうっとリンを抱きしめると、リンも答えるかのようにやさしく抱きしめ返す。
それに安心し、ふぅっと息を吐いていると、思いのほか近くにレンを見つめるリンの顔があった。
何か言いたげな顔をしていたので、惜しい気を持ちながらそぅっとリンを開放する。
と、レンの瞳をまっすぐに見上げ、リンが可愛らしい唇を開いた。
「レン、あの文献、まだ残ってるみたい。
枢密院のこの方たちはそれをしってこちらに…。
もしかしたらまだ知ってる方もいるのかも…。
私たちも、そろそろ…」
そこまで言ってレンの瞳をじっとみつめる。
レンも今日の夜会で思っていた。
そう。
―――――外に、でたほうがいいかもしれない
今、状勢はめまぐるしく変わっている。この森の中の城に引っ込んでおくよりも、外に出たほうが有利なくらい。
でも、リンを外に出すのに、レンはまだ抵抗を覚えてしまう。
…リンには、安全な場所で笑っていてほしい。
と、そんな思いを見透かしたかのようにリンはにこっとほほ笑む。
「大丈夫。何があってもレンのそばを離れないわ。
ね、レンが守ってくれるでしょう?」
それを聞き、うっと顔を赤くし詰まるレン。
それを言われたら、己は何も言い返せないではないか。ちくしょう、可愛いって罪だ。
とかそんなことを考えてから、諦めたようにこくっとレンがうなずくと、リンはぱぁっと花のような笑みを浮かべた。
吸血鬼!吸血鬼!!
お互いの血しか飲めない鏡音まじおいしくね?!!
というくだらない思いつきの元つくったおはなし。
がしかし、血を飲むまでいっていない罠orz
とりあえず、この後ヴァンパイア騎士みたいな学園へ行っていただきたいな!(願望
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