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ねがいごと








ちいさいころから、ずっとずっと願ってた。
…貴女を、どんなものからも守りたいと。
こころを、隣にいる権利を、ぼくのものにしたいと。ずっと…ずっと。
だから、そのために母さんや親戚連中を利用することはなんてことなかった。


貴女のすべてを、僕はほしかった。
それ以外なら、どうなったって良いと思ってる。それくらい、貴女が好きで仕方がなくて。

だからだろうか。
あぁ、今。貴女に想いを告げた今。僕はとても怖い、こわい。


…貴女に、拒絶されることが。こんなにも、こわいんだ。




ねがいごと



姉さんに、自分の想いを告げた。
そして、自分の願いを…僕と結婚してほしいと、言った。

僕が常日頃から願っていたこと。それを、ただ口にする、だけのことだった。
…筈だった。
だのに、それは吃驚するほど緊張することだったと、知った。


「姉さん、お願いです。…僕と、結婚してください。」


なんとかかんとか押し出した言葉。
それは自分でも情けないくらいかすれた声に聞こえた。

体が成長して、大体のことはソツなくこなせるようになって、泣くなんて絶対無くなって。
姉さんの背だって追い越して。姉さんの手を包めるくらい大きくなって。
そうして、自分はもうつよくなったと思ってたのに。


…こんな、情けないほど恐れてる、緊張している。


大きくなった、強くなった。それは嘘なんかじゃない筈だ。
けど、僕は。…僕には、貴女しか。

貴女に拒絶されてしまえば、僕の生きる意味など、亡くなってしまうだろう。
あぁ、僕はこんなにも。



「…れん、さん」

「!は、いっ?」


姉さんの、声。
それにつられるように、随分深い場所に沈んでいた思考が浮かび上がった。

ハッと姉さんをみれば、何かを言いたそうな、困ったような表情で。
もしかして、自分が今言ったことでそんな顔をさせているのかもしれない。
そう気づいてしまえばもうそうしようもなくなって。
先ほどまで考えていた方向へと思考がつい進んでしまう。

と、突然。


「抱きしめても、いいですか?」
「あぁ…はい、…はぁっ?!」


予想もしていなかった言葉に動揺すれば、握っていた手をスルリと抜かれる。
そうして気づいた時には、姉さんの腕が背に回っていた。

今では、ちいさなころみたいにすっぽりとは包めていなくて。
でも、あたたかくてやさしくて。
何故だか、凄く泣きたくなってしまった。


「ね…ねえ、さん?」
「ふふ、昔みたいですね。」
「え…」


おっかなびっくり問いかけてみれば、姉さんはとても嬉しそうで。
なんだかそれだけで幸せになって。忘れてしまいそうになる。
すると、


「あの、ですね?」
「うん?」
「私も、だいすき、なんです。廉さんのことが、とても。とっても」
「!」
「けっ結婚、とか。とても嬉しいのです。…心の底から」


あぁ、泣きそうだ。そう思った。


大好きな人から、大好きだと返される。
それはとてもしあわせなことだと知ってはいたけれど。

自分と同じ意味で、すきなのだと。
そう言ってもらいえるのが。こんなに、こんなに…。


こんなにも、嬉しくて。こんなにも、泣きたくなって。
これほどのしあわせを、僕はしらない。


姉さんにふんわりとつつまれて、あったかさが伝わってきて。
僕をやさしく抱きしめる腕が、時々きゅっと力を籠められたりして。
本当に、どうしようもないほど嬉しいんだ。

あまりにもうれしくて、あまりにもあたたかくて。
思わず目を閉じようとしたら、ぎゅっと今までで一番強く抱きしめられた。


「そ、それで、私もお願いがあるんです」
「?姉さんのお願い?」
「はい…」


めずらしい、そう思った。
姉さんはあまり自分の願いだとかを言わない。
というか、ほっとんど言わない。我儘だって、歩いて帰るとか手伝うとかそれくらいだ。
それだって、運転手さんが具合が悪いとか、女中さんが忙しそうだとか、そういう理由がある時で。


姉さんは、無意識に自分の意思を封じ込める。
人のためならば、平気で決まりも言いつけも破れてしまう癖に。
自分のことは本当に後回しで、というかぜんっぜん顧みなくて。
そんなところが、僕にはいつももどかしかった。のに。


そんな姉さんから、お願い?しかも、僕に、だ。
…きかない筈が、無いじゃないか?

それを伝えようと、息を吸おうとしたら。


「あの、その…また、名まえで読んでください」


先を、越された。


「へっ…名まえ?」
「はい、でっできれば、ですけどっ!」


つい聞き返せば、慌てて付け足される言葉。
出来れば、なんて言わなくていいのに。どうして、そうも。


「もう、私は。貴方の姉ではないのです。もしかしたら、ずっと前から…」
「…えっ!」


小さな声で呟かれた、…姉さんの、本音。
それは、つまり、つまり。
認識した途端、体温がまた上がるのがわかる。

あぁ、もう。どうしてこれ程まで、貴女は。
貴女が笑ってくれるなら、傍にいてくれるなら。僕はなんだってできるんだ。
それくらい、僕は貴女にやられてる。

どうやら貴女は知らないみたいだけれど。


「わかった」
「!」


そう答えれば、びくっと体が震え腕の拘束がゆるくなる。
ちょっと惜しさを感じながらもそっと体をはなす。
そうして、姉さんの瞳を覗き込んだ。


あぁ、とても、…とっても、きれいだ。
いとしいひと、かわいいひと。僕の、とてもとても大切なひと。

どうか、僕の隣で、僕の傍で。
ずっとずっと、わらっていてください。


「結婚してください、…凛さん」


そっと頬に手を伸ばせば、それをゆっくりと手を添えられた。
一瞬迷うように留まってから、ぎゅっと握られて。


大きな瞳が、自分をうつす。
貴女の瞳に、僕がうつる。

数秒間の空白。そして…
貴女が、わらった。とてもとても、嬉しそうに。



「はい。…喜んで!」



なみだが一筋おちていった。








叶えられるのはあなただけ





「凛さん、また泣いてるよ」
「ふ…いいの。これは、しあわせのなみだなんです」
「嬉し泣きってこと?…あ、なんか僕も泣きそう」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おわり

姉さん案外優勢。でもきっと時間がたてば義弟が優勢。
相当降り積もってる想いですからね!きっと姉さん大変!←


ここまで読んでくださり有難う御座いました!

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