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この身すべて





なにも、わからなくなった気がしました。


今の状況だとか。
一瞬触れたあたたかい感触の正体だとか。


「ふっ…姉さん、まっかだ。」
「…っ!!」


わからない、分らなくなった筈なのに。
どうしてこんなに…嬉しいのでしょう。





この身すべて



時は、師走もはじめの夕闇時。場所は庭に面した縁側で。
そんな寒々しい中、かあぁあとこれ以上ないほど顔を赤く染めた凛は、涙目で廉を見上げていた。



「れ…廉さん?!」
「ん?」
「その。なななんでこんな…!!」


恥ずかしそうに唇に触れながら、言いにくそうに言葉を紡ぐ。
そんな凛をみて、つい廉は頬を緩ませた。
そして頬に当てていた手をはなし、そっと凛の両手を包む。


その手はとてもちいさくて、自分の手で簡単に包めてしまう。
あの頃はぜんぶ逆だった。手の大きさも、涙をぬぐう役も。
でも、今は自分のが大きく、…凛の涙も自分が拭っている。


その事実を心の中で噛みしめながら廉は顔を引き締め、凛と目を合わせた。


「姉さん」
「は、はい?」
「僕のこと、嫌い?」
「っ!そ、そんなわけ無いじゃないですか!!!」


今までとは違う意味で顔を赤くし、全力で否定する凛。
その様子に廉は破顔し、そして一瞬間を置いた。
ぎゅっと握った手に力を籠め、真剣な表情で口を開く。


「じゃあ、すき?」
「?!!えっそれ、は」
「僕は、すきだよ。姉さんのことが。」
「わわわ私だって…」
「僕は!…僕は。姉さんのことが…ううん、凛さんのことが、すきなんだよ」
「っ!!!」


廉がゆっくりと言葉を紡ぐ。
それを聞き、視線を彷徨わせていた凛はびくりと体を揺らした。
名まえを呼ばれたことに驚き目を合わせれば、そこには。


想いが溢れるような瞳で、真剣な表情で。
…まるで知らない人のような。


「家族だからとか義姉だからとか、そうじゃなくて。僕は姉さん自身に惹かれたんだ」
「…そ、そんなこと…」
「そんなことある。何よりも誰よりも、僕は姉さんのことが好きだよ」
「ぅ…っ!」


凛はゆっくりと瞬き、言われた言葉を頭の中で反芻する。
そして理解した瞬間、じわりと目に涙がにじんだ。


貰った言葉の一つ一つが嬉しくて、なんだかもうどうしようもない
何度も何度も、そうだったらいいなと思ってきた。
でも、そんなわけない、と。思う度に打ち消してきた。その言葉。


ほろり、大粒の涙をこぼした凛を、廉はそぅっと抱きしめた。


「結婚のこと、母さんに聞いたんだ」
「!それ、知って?!」


あっさり投下された爆弾に、凛は体を強張らせる。

散々廉に振り回されて忘れていたが、
それは自分がこんな寒々しい場所で泣くに至った原因である。

それを腕で感じ取った廉は、なだめるように抱きしめる腕に力を込めた


「まぁ。僕もいちおう当事者だしね」
「…」
「で?」
「?」
「姉さんは、いやなの?」
「嫌なわけ!!!!」


がばりと廉の体から自分をはなし、思い切り抗議する。
すると、何故だか廉は微笑み出した。
そんな廉の行動を不思議に思えば、あのねと廉は言葉を紡ぎだした。


「だいすきだよ」
「…もう、聞きましたよ」


嬉しくて、でもやっぱり恥ずかしくて。ついつい凛は目を逸らしてしまう。
そんなことをしていても、貰った言葉があたたかくて、にやけてしまいそうな口元を必死でこらえた。

どうしようもなく嬉しくて。夢でも見てるのかと疑いたくなる。
でも触れているところはあたたかく、泣いてばかりいる目はちょっといたい。
夢ではない証拠があって、それをみつけて馬鹿みたいに安心してしまう。


そんな凛の心情を知ってか知らずか、廉はゆっくりと凛の涙をぬぐった。


「だからね」
「はい?」
「だから、僕は姉さんの隣にずっといたい、いさせてほしいんだ。これからずっと。ずぅっと。」
「っ!!」


またも、凛は自分が泣き出してしまうのを感じた。
泣きたいわけではない。だってこんなにも嬉しい。あたたかい。
それなのに、涙が勝手に出てくるのだ。

そんなことを考えつつ、凛はただぽろぽろと涙をこぼす。
ぬぐってもぬぐってもあふれる涙を指ですくいながら、廉は困ったような嬉しいような変な表情をした。


「姉さん、お願いです」
「ふぇ…お、お願い、ですか?」
「うん、一生に一度ってくらいの大きなお願い。」


そう言って、言葉を止めて俯く廉。
そんな廉を不思議に思い、凛はなんとか泣き止んで廉をじっとみつめた。

ふと泣きっぱなしの濡れた頬に気づき、涙をぬぐおうと目元に指をやれば。
廉の手に、そっとそれを掴まれた。

ごくりと息をのむ音がし、その後バチリと廉と目が合う。
そのつよい瞳に、凛は一瞬動きをを止めた。


「れ、ん…さん?」


なんだか心細くなって、凛は廉の名前を呼ぶ。
廉が、廉じゃないようで。知らない人のようで。
ちいさなあのこの面影を探そうと目を凝らせば、何故だかその瞳が目についた。


あのころと、かわらないような。
でも、かわったような。


そうして、凛は気づく。
あの時も今も、廉の瞳の大部分を占めている感情に。
そう、それは。

(…切なさ、だわ。)


何故かはわからない。
けれど、凛には廉の瞳は切にそれを訴えているように思えて。
そしてどうしてそんな感情を抱いているのか気になって、廉のもとへ手を伸ばそうとすれば。
自分の手はすでに廉の手の中で。

どうしようかと視線を落とせば、その手をぎゅっと強く握られた。


「姉さん、お願いです。…僕と、結婚してください。」


ハッと顔を上げれば、廉はやっぱり切なそうな瞳をしていて。
凄く吃驚していて、凄く嬉しくて。
自分はどうしようもなくしあわせに感じていて。だけど廉は切ない瞳をしていて。

よくわからなくて、でもわかるような気がして。


どうしようもなく願ってしまった。





この身すべてで





(貴方を抱きしめたいのです)



・・・・・・・・・・・・・
義弟つよき。でもやっぱり弟気質なんですね、彼は。そして凛姉さんは姉さん気質!
みたいな話。


グダグダしてますねすみません…。
降りて来い文才。ふってこい表現力。そして身に着けなければ語彙力。

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