novel
序
「りん?どうしたの」
「…れん、れんは、れんだよね?」
「?」
「りんは、すおうって名前にかわるんだって。れんも、あいてつって名まえになるのよね?」
「ああ…うん。おめでとう、りん。」
「…そうじゃないの。あのね、そうしたら、れんやりんはどこにいくの?」
「え?」
「名まえがかわっちゃうの。でも、名まえはだいじなものでしょう。ねえ、よばれなくなったら、いなくなっちゃうの?」
「…いなくならないよ」
「ほんと?」
「うん、だって、りんはここにいる。どんな名前でも、りんはりんだよ。」
「そっか、そうなんだ…。ありがとう、れん!」
「ううん」
「じゃあ、りんはれんのこと覚えておくね」
「え?」
「あのね、れんはれんだけど、やっぱりなくしちゃうのはもったいないの。だから、りんはずっとれんをおぼえておく。しまっておくね。」
「…おれは、りんのこと、だいじにしまっとく」
「ほんと?!じゃあ、ふたりでいっしょにしまっておこうね、ずっと!」
「うん…やくそく。」
「やくそく!」
貴女は、まだ、おぼえているのだろうか。
あのときの約束を、名まえを、ゆびきりを。
…たとえ、忘れてしまっていたとしても、それでも。
私は、ずっと、覚えています。
あの時の約束を、名まえを、指切りを。そして…――――――自分の中にうまれた、この想いを。
ねえ、貴女は、知っていますか?
この、想いを。
・・・・・・
むかしのはなし。
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