起きれば、また家でもなく、ルイーズの屋敷だった。
部屋は1つ空きを貰い優太郎の好きに使ってもいいとルイーズに言われたので
心置きなく使わせてもらっているが・・・

「・・・・広すぎる」
自分の部屋とは比べ物にならないくらいの広さには中々なれなかった。
自分の部屋があと2つくらいは余裕で入りそうで・・・
優太郎は朝から小さなため息をついて扉を開けると「わん!」と
犬の鳴き声が聞こえた。
「・・・犬だ。」
「わん!」
ぱたぱたと尻尾を振りながら優太郎に近づいていく。
動物は好きな優太郎は犬の頭をなでるとふっと優しい顔が戻ってきた。
「・・・まぁ、帰れる方法を探すか。」
それしか道しかない・・・そう思い居間へと優太郎はその犬と一緒に向かう。









幻想ロマネスク






起きてみれば、そこには誰もいないと思っていた。
召使のギャラハーだけは 優太郎を見てにっと笑って・・・
「おはようございます。優太郎様。」
「あっ・・・おはよ。」
未だ見てもびっくりする体格のギャラハーに冷や汗をかきながらもイスに座った。
ギャラハーのこの筋肉に驚かされるのは毎回だが・・・。
イスに座るとギャラハーが運んできてくれた朝食に優太郎は目を光らせた。
「すご・・・」
シルヴィオの家でもご馳走になったあの日の夕食もすごかったがここの朝食もすごい。
サラダも綺麗に彩られていて、パン・スープなど朝食にしとくのは
すごく勿体無い気がしてきた。
「こんなに食っていいのか?」
「えぇ、というかいつもの朝食なのですが」
といつもの食事のメニューに驚く優太郎を見てギャラハーは驚きを隠せない・・・
というよりも
「( 優太郎様の世界では貧相な物ばかりだったのでしょうか)」と
まったくもって失礼な事を思っているようだ。
しかし、こんな反応をする優太郎も優太郎である。









「じゃぁ。」
ウィンナーを一口食べようとすると足元に何かがいた。犬だ。
「・・・欲しいのか?」
フォークに刺さっているウィンナーを犬の前に見せるとすぐに
ぱくりと食ってしまったのだ。
「ありゃりゃ・・・」
「ティグはキア様に似てウィンナーが好きですからね。」
「!キアの犬なんだ〜。」
だと思うと飼い主に似ず可愛いな〜。と優太郎はティグをなでる。


「キア達は?」
「只今外出中です。」
食事をとっている優太郎は隣で待機しているギャラハーに話をかけてみた。
するといないという言葉でもある言葉「外出中」と言われたのだ。
「・・・仕事か?」
「えぇ、」
「・・・そういえば、キアやルイーズの仕事ってなんなんだ?」
軍服を着ているからするに軍で働いているのだろうと考えた。
軍はきつい訓練などが多いと聞く・・・といってもそれは日本でのことだが。
「それは・・・」
もごもごと口をにごらせるギャラハーを他所に聞いた優太郎は



「・・・まっいっか。」




とめんどうなので話を中断してしまった。
優太郎が部屋へと戻っていこうとした時だった、ギャラハーは「優太郎様!」と
大声をだして扉をあけようとしていた優太郎に声をあげた。
「?どした?」
「忘れておりました。ルイーズ様から貴方にこれを渡せと。」
ギャラハーは笑いながら優太郎にルイーズから預かっていたモノを渡した。
それはこの世界でのマトモな服なのかとてもしっかりとしていた服装のものだった。
優太郎が最初からきていた服よりかは遥かにましなものだろう・・・。
しかもさわり心地が全く違う。
「うわー、高そうな服だな。」




ほへーと感心してしまいとりあえずその服に着替えるべく部屋へと入っていく。
優太郎の部屋にはキアの犬であるティグもついてきてしまったようだ。
ベッドにさっき着ていた優太郎の服を脱ぎ、ルイーズから貰った服に袖を通す。
「ってか、ルイーズに色々借りできちまったな。」
ルイーズから預かっていた服を着てうーん、と優太郎の口がとがる。
あまり人に借りを作ったことのない優太郎。
「・・・今日くらいは飯作ってみるか。」
優太郎が兄弟の中でも一番下な為、結構料理の腕前は中々いい。
こき使われていたためか、母が不在な時は優太郎が料理を作っていたからだ。

「ギャラハー!町で食材買いにいこう!」
ティグも連れて、と付け足しながら。
ギャラハーも優太郎がいなかったら一人での買い物となったのだろうが
今日は違う事にちょっとワクワク感があるというものだった。




「今日は何にしましょうか。」
ギャラハーは今夜の献立を考えている様子で優太郎も考える。
「じゃぁ油っぽくないのがいいな。」
「かしこまりました。じゃぁ、これなんていかがでしょうか?」
町についていろいろなお店を見て回る2人の姿はまさに異様。
しかしそんなことも気にぜずに優太郎とギャラハーの会話が続く。
食材のお店は路上でもやっているので立ち止まって野菜の質なども見れるのは
あまり日本ではお目にかかれないだろう。
色とりどりな野菜やら肉やら様々なお店ばっかりだ。
さっきのギャラハーの提案に「いいじゃん!」と喜んだ顔になる優太郎にギャラハーは




「早速買出しにしましょう。」と決定した。
優太郎も紙袋に詰め込んだ材料を両手いっぱいに持っていた。
ギャラハーはその少し大きい紙袋を手にしている。
材料を買うことが出来、早速帰ろうとギャラハーがいつも運転している車に荷物を詰め込む。
車に乗り込もうとした優太郎にギャラハーから声がかかった。
「材料を買うのが早かったので優太郎様はここら辺で探索などいかがでしょうか?」
「探索?・・・確かにそれは必要だけど。」
「じゃぁ、3時くらいにまたこちら。お向かいに上がります。」
「悪いな、ギャラハー。」
「いえいえ、キア様とルイーズ様からも言われておりますので。」
いったいなにを言われたのやら・・。
優太郎とギャラハーはその場でわかれたがティグは優太郎の側についていた。
「・・・お前って本当に今日はよくいるな。」
苦い笑顔で答える優太郎は「早速」という顔で一人でここを散策することにしたのだ。










「あ!」
どんっと強くぶつかってしまったのか優太郎の身体がとある人の上に倒れてしまう。
優太郎は倒れた人に「すいません」と懺悔すると
「大丈夫よ」と優太郎の前に顔をあげ見せた。
「すいません、大丈夫でしたか?」
「大丈夫よ。気にしないで。」
優太郎は一瞬胸がどきっとした。
優しい眼差しでこちらをみていて目元にほくろがある女性はにこりとこちらを微笑んだ。
「いや、俺のせいですし・・・」
「本当よ?大丈夫だから気にしないでね。」
「・・・」
その女性は何もいえなくなった優太郎の頭を優しくなでた。
優太郎は「すいません」と小さく謝罪をまたしていた。
手を出し優太郎はその女性を引き上げる。
「せっかくの洋服が・・・」
優太郎の顔が痛々しい顔になっていた。

それを見た女性はまた穏やかな表情を見せ、優太郎の顔を彼女の両手が包み込んだ。
「泣かないでね?」
ふわりといい匂いが優太郎の鼻をくすぐる・・・とても優しい香りである。
優太郎はその女性の微笑をみてか少し心が軽くなった。
女性は少し汚れた服を纏いながらも優太郎と笑顔で別れていった。

「・・・綺麗な女性だったよな、ティグ。」
「ワン?」
まるでその意味がわからないような声がティグの口から漏れた。
優太郎はその女性が消えるまで視線を釘付けにされていたのだった・・・。







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