シルヴィオの家に泊めて貰う事になり
とても綺麗な屋敷に足を踏み入れた。









資産家としての面もあるヴェンゼル家・・・
大理石で敷き詰められているエントランスには壮年の紳士が待っていた。
「おかえりなさいませシルヴィオ様。」
執事なのだろうか、優しい笑顔でシルヴィオを出迎え
そして隣にいる優太郎にも軽く会釈をする。
優太郎はにこっと笑い言葉を吐いた。

「初めまして、優太郎といいます。」
「優太郎は大事な客人だ。泊まる事になっているからあいている部屋に・・・
いや、一度私の部屋に通してくれ。」
「かしこまりました。」
「シルヴィオは?」
「ちょっとな、すぐ行くから待っていてくれ。」
わかった。優太郎はそう頷いて執事の後についていく。
シルヴィオはさっさと用事を済ませようと足を速めた。








幻想ロマネスク
2.5 Request dream







「うわー・・・」
執事に通せれた部屋はシルヴィオの部屋だろう。
ベッドとソファーが一つ、そしてアンティークな品が所々に並んでいて
優太郎はそのアンティークものに目を光らせた。
圧倒される、日本とは違う文化にも驚いてもいるのだから――――
「このソファーに座ってもいいのかな・・・」

優太郎はベッドの近くにあるソファーに座ってみた。
低反発力なのか座り心地がいい・・・
「(でもシルヴィオって・・・あの怪盗シュバルツ・クロイツだよな・・・)」
偶然にも知ってしまったシルヴィオの事・・・新聞でも写真がのっていた。
顔は見れないが初めて見たあの姿そのものだった――――
記事には「少年の悲鳴によってシュバルツ・クロイツの居場所がわかったが
怪盗はそのまま逃げ込んでしまった。」その少年というのは間違いなく優太郎だろう。
悲鳴じゃないような気もするが・・・。
でも其の件については優太郎にはどうでもよくなっていた。
シルヴィオはシルヴィオだもんな、と一人ぽつりと呟いて・・・。







「待たせたな、」
「いいや、そんなに待っちゃいないよ。」
シルヴィオが自分の部屋に来たのは15分くらいだろうか。
客人を待たせるというのはあまりしたくないのだろう…
シルヴィオの顔が苦いような顔をしていた。
しかし、優太郎はにこっと笑いシルヴィオを出迎えたのだ。
その笑っている顔をみてふっとシルヴィオの瞳が細められる。

「すまない、空いている部屋が使用人のしかないんだ、だから」
「だったらこのソファー・・・使わせてくれないかな。」
なんなら床ででも俺寝れるし、とベッドで寝るという単語は出てこない。
流石にシルヴィオのベッドに寝るなんていう考えはしない。
シルヴィオは驚きを隠せない。

「いいのか?」
「あぁ、俺結構そういうのには強いし」
「・・・じゃぁソファーに枕と毛布を持ってこさせよう。」
悪いな。という顔をまたシルヴィオの顔からにじみ出る。
すると執事が扉の外から声を出した。
「お食事が出来ました。」
「行こう、フェフが作る料理は中々格別なんだ。」
シルヴィオは笑うと優太郎に告げた。
優太郎もお腹は減っていたらしく正直ありがたいものだ。
「じゃぁ、お言葉に甘えて。」










料理はとても食べきれないほどだった。
しかし、料理はシルヴィオが言ってくれた通り本当に美味しく
顔がついついほころんでしまう。
また、シルヴィオも久々の客人との食事を楽しめたのか
シルヴィオの顔が笑顔になっていた。
食事を終えた後、優太郎とシルヴィオはシルヴィオ本人がある場所へと連れてきてくれた。



テラス。

そこには踊り子などが合間合間にありそして階段を降りた。
プロムナードをゆっくりと優太郎と歩いていく。
踊り子が様々な形をしていて優太郎も驚き瞳が輝き…
「すごいな。」
「あぁ、少しテラスを見て部屋に戻るのも悪くないと思ってね。」
前にはキアと一緒にいた場所だった。
シルヴィオの頭に浮かんでくる不敵な笑みを零す表情を。

「この踊り子達って一つの物語になってるんだな。」
「・・・ぇ。」
優太郎のぽつりとした言葉にシルヴィオも少し驚いた。
「俺の学校でもそういう踊り子の像があったからさ…。」
「そうなのか・・・」
「うん。でもこんなに綺麗な踊り子じゃないけどね。」
と学校にあった踊り子とここにある踊り子を頭の中で比較していた。

「!夜風は流石に冷える。優太郎もそろそろ部屋に戻らないか?」
「あぁ。でもこのテラス・・・いいな。」
「…」
「もう一度ここに来させてくれないかな?」
「・・・あぁ、是非来てくれ。」








部屋に戻るとシルヴィオと優太郎は話をし始めた。
優太郎は『日本』という国をシルヴィオに語りかける。
シルヴィオもその『日本』という国を知らないだけありとても興味を持った様な顔をしていた。
優太郎は笑って話していると「ぁ」と優太郎の頭に話題が浮かんだようだ。
「?どうした?」
「そういえば、なんでキアの事知ってたんだ?」
「!」
ソファーを2人仲良く座りながら執事が入れてくれた紅茶を飲む。
その匂いで落ち着いていたシルヴィオにはきつい質問だ。
動揺してうっかりと零してしまいそうになる。
その焦りに優太郎には見せなかったが・・・
「どうした?」
「あ・・・いや。」
「キアの事は俺と会う前から知っているみたいだけど・・・」
「それは・・・」



真実を告げるべきか・・・。
キアと寝た。そしてそれを拒めなかった自分がいたという懺悔にも似た告白を
まだあって間もない優太郎に言うのかと・・・。
「・・・言えないんだったらしょうがないよな。」
「・・優太郎は・・・」
「ぇ?」
「優太郎はキアとは何の関係なんだ?」
うっかりと優太郎に質問をしてしまい優太郎はきょとんとしていた。
「俺?あいつらの家に住まわせて貰ってるだけだよ。」
さらりという優太郎にシルヴィオの質問の「答え」が返ってきた。
優太郎と会って少しばかりだが感だけだが・・・信じられるような気がした。

「そうなのか、」
「俺も本当の家に帰りたいけどな。」
苦い顔でシルヴィオに言うとにっと優太郎はまた笑った。
「まだここにいる時はまたシルヴィオと関るけど、俺の事頼むぜ?」
その笑いながらの顔がシルヴィオの心をどくんっと打たされた。
というよりも胸が締め付けられる感覚だった。
「あぁ」
シルヴィオの手と優太郎の手、そして互いの顔を覗き込んだ。
赤いシルヴィオの瞳と黒曜石のような優太郎の瞳が見る。


次に話した話はここら辺で大きな図書館があるのか、とか
美味しいお店はあるのかなどと言った地域のことを話していた。
優太郎は真剣に聞いていてシルヴィオも話を進める。
その後に優太郎にフロントで見た画家絵の話をされてその話でも詳しく
討論された。
(優太郎は遥か未来の人間なので知っている作品もあるのだ)


「・・・そろそろ寝るか。」
「・・・」
「・・・・優太郎?」
ソファーで座って討論をしていたのに優太郎の返事が返ってこない
隣に座っているシルヴィオが優太郎の肩をゆさぶるが返事がない。
「・・・(寝てしまったのか?)」
そろっと優太郎の顔を覗き込むと案の定、ぐっすりと寝てしまっていた。
ふぅっと小さなため息を漏らすと優太郎を抱き上げる。
案外軽くてシルヴィオはびっくりしていたが優太郎を自分のベッドに沈めた。
そしてちゅっと優太郎のおでこにシルヴィオがキスをした。
それは本当にすぐ触れるだけのキスでおやすみ。とキスにこめる。

「流石に客人にソファーというのは失礼だからな。」
一人事を呟いて毛布を優太郎に被せ自分はソファーにも寝ようとしソファーに向かう。











一方、優太郎に逃げられてしまったキアはというと?
「キア?遅かったじゃないですか。」
屋敷に戻ってきたルイーズが優雅に紅茶を飲んでいた。
キアは冷や汗をかきながら自分の部屋に帰ろうとしたときである。
「そういえば、優太郎様はいかがなされたのです?キア様。」
ギャラハーが優太郎の事をさらりと話してしまったのだ。
ギャラハーはルイーズが座っているイスの隣にいたのですぐに・・・
その言葉にルイーズもにこりとキアの方面に微笑んで言葉を放つ。
しかし、キアは扉の方に目を向けていた。
「だそうですが?・・・優太郎はどうしました?」
「・・・いや、その・・・」
「・・・いいでしょう。キア、後でたっぷりと話を聞かせていただきますからね。」
後ろからまるで黒い空気がこの部屋を覆うような感じだった。
キアはその言葉にただ空笑いをするしかなかったのである。




その後、ギャラハーの必死の検索により優太郎はキアのターゲットだった
シルヴィオ・ヴェンゼルの屋敷にいると言われ
朝、爽快な風と共に優太郎をお迎えに上がったのだった。
情報網はとにかく広いのであった(笑)








「優太郎、」
「ぁ、キア。」
ヴェンゼル家の門の前には優太郎の知っているバイクと人物の前までくる。
シルヴィオは朝からどっかに出かけてしまっていていた。
だからキアは優太郎だけ引き取る事にしたのだ。
・・・ちょっとまて?だけって事はシルヴィオも受け取るに来るつもりだったのだろうか(笑)
「まさかお前がシルヴィオのところにいたなんてな。」
「・・・昨日はごめん。」
「そうだな〜、」
「?」
「ごめんって謝るなら俺の上で喘いで謝って欲しいな。」
「・・・間違ってたな。」
「あ?」
ぽつりと呟いた優太郎はキアの腹に拳を振るった。
「あほかてめぇは!」
その攻撃にキアもびっくりしてしまいつい直接攻撃を受け取ってしまったようだ。
「てっ・・・優太郎〜・・・」
「キア!寝言は寝てから言ってろ!」
優太郎はヴェンゼル家を後にした。
またいつか―――シルヴィオと語らう日を待ちわびて。






以下続く。





Suzuno A
Dream Novel 2006,0816


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