瞳を開ければ、きっともとの世界に返れると思っていた。
そう、昨日であった男なんてみないと思っていたのに・・・
瞳がゆっくりと開いてみるといい匂いが鼻をくすぐった。
姉の匂いとかそういうのではなくて・・・
ごそっと動いてみると・・・優太郎の唇に何かが触れた。
軟らかくて汗の匂いがした。
「・・・ん?」
「おっ起きたのか。」
完全に瞳を開けてみると自分はベッドに寝ていて、
一緒に寝ていたのが、・・・・昨日の男と一緒だったという事。
その、唇に触れたものは・・・その男の頬。
男は、俺を見て不敵な笑みを零しやがった。




幻想ロマネスク










「だぁぁぁ!!」
声があがったのかと思えば優太郎は一斉にベッドから出て
その自分が寝ていたベッドを見た。
白いベッドには昨日であった男が上半身裸で「よぉ。」と
にんまりと挨拶していてぞわわっと悪寒に似た寒さが背中からこみ上げる。
「なんなんだお前は!」
「なんだじゃねぇだろう。せっかく俺が介抱してやったのに。」
命の恩人に対しての礼儀になってないぜ。と彼も上半身を起こし髪を掻きあげた。
命の恩人になってくれた覚えもない。と冷静に頭で思っていると優太郎はとりあえず
その部屋から出て、優太郎の頭が一瞬フリーズした気がした。
いや、フリーズを起こしました。








「な・・・」
天上は家よりも高く、一言で簡潔するならば・・・・豪華。
つる下げてあるシャンデリアがもっと豪華に見せてくれていた。
絵画もありと雰囲気は西洋の部屋といった感じだ。
シャンデリアの部屋に入った優太郎はぎぃっとすこし扉を開け、人が
いないことを確認するとすろっとまるで・・・
「(俺、コソドロみたいじゃん)」
堂々とはいろ・・・堂々と入ろうと決意し入ってみると
「あなたですか。」と声が後ろからあがった。


「はっはい?」
「キアが連れてきた客人っていうのは。」
振り向くと金髪のロング男が現れたものだ。
瞳もブルーで顔も整っている・・・綺麗という価値はあるというものだが・・・
「お前も軍服か。」
ぽつりと彼に聞こえない程度に優太郎は呟いた。
「キア?」
それよりもその彼が言った言葉に不思議を感じさせる。
たぶん、昨日の同じ軍服姿のヤツと一緒なのだろうと優太郎の頭が働きかけていた。
「えぇ・・・それにしても見たことのない服装ですね。」
「ぁ・・・」

服装を彼から言われ優太郎はぁ、と声があがった。
服装はいつものジーンズとTシャツで身軽といえば身軽・・・。
「いつもの普段着なんですが・・・」
「そうですか。それはそうと、」
ぐいっと彼の手が優太郎の頬に添えられたかと思うと顎に彼の手が移動した。
この人は大丈夫かも・・・と優太郎の判断だ。
じっと見つめられるから優太郎も彼のことをじっと見ていた。



「綺麗な瞳ですね、真っ黒で・・・先が見えない。」
「誉めてるんですか?それって。」
「えぇ。黒い髪も、瞳も・・・こちらではあまり見れませんからね。」
「・・・あの・・・」
「失礼。私の名前はルイーズ・ハルトヴィックと申します。」
「あっ。俺は赤坂・・・優太郎です。」
にこりと微笑むを絶やさない彼は優太郎に名前を紹介した。
優太郎もはっと遅くなりながらも名前を名乗りあげる。
その名前を聞いて彼はにっと深い笑みが零れた。
「では、優太郎と呼んでも宜しいですか?私もルイーズで結構です。」
「ありがとうございます。」

優しいやつだな、ルイーズって。
表面上だけだとゲームのやつらは言ってると思いますが(失礼すぎる)



立っているのもなんだとルイーズは近くのイスに座ってでもという
から優太郎はちゃっかりと座った。
イスも立派なモノでついつい家にある食卓のイスや学校のイスと比較してしまう。
優太郎の不思議そうな表情についついルイーズは目に優太郎が映ってしまう。
今まで見た事のない黒い瞳、黒髪・・そして整えられた綺麗な顔。
肌もぼろぼろとしていらず、本当に【美】というものが似合う・・・。
「おい!ルイーズ!」
観察していた瞬間、扉から同じ軍服の男が出てきた。
キアだ。
優太郎の瞳がきょとんっとなってしまいルイーズははぁっと小さなため息を零した。
ルイーズの眉間に少しながら皺がよる。

「なんですか、」
「なんですか、だと!こいつから離れろ!」
「まったく・・・。優太郎、私はちょっとお仕事なのでまた・・・」
また会いましょう。と立ち上がり優太郎の耳元でナイショ話をするように
話し、ふぅっと息を吹きかけ笑顔で去っていった。
イスに座っていた優太郎はルイーズが耳元で囁き、息を吹きかけるものだから
また、キアとは違う鳥肌が肌に立ってしまっていた。












「ったく・・・。」
ちっと小さく舌打ちするキアを見上げるとキアの顔が優太郎の前へとくる。
小さく、優太郎が口から言葉を紡ぎ始めた。
「キア・・・か。」
「・・・どうして俺の名前を知ってる。」
「・・・名前だけだ。あとは・・・なんにも知らないよ。」
優太郎の瞳がとても鬱になっていてあまり口を開けなくなった。
俺は、家に帰りたい・・・。
ただそれだけの考えでもある―――――
訳の分らない場所にいるのは優太郎にとって荷が重すぎなのだ。
「・・・お前、どっから来たんだ?」
「日本っていう場所からさ・・・」
「・・・ニホン?」
「あぁ。」
「・・・お前、しけた顔してやがるな。」
「・・・ぇ。」
あっさりと優太郎のことを言うものだから当の本人もビックリしていた。
「よし、どうせ仕事がないんだ。」
来いよ、優太郎の腕を引っ張り扉を開け屋敷から出ると
バイクがあった・・・。
「俺様のバイクではしりゃ、イヤにでもそんな顔できなくなるぜ。」
信じてみろよ。キアのにっと笑う表情が優太郎の目の前に照らされた。






ブロロロロ・・・とバイクのエンジン音が鳴り優太郎の耳にも煩く聞こえる。
バイクは持っているがこんな爆音みたいな音はしない・・・そう考えていた。
風が身体にやってきて通り過ぎる・・・
バイクのエンジン音がどんどん心地よくなっていく・・・。
爆音が響くたびに胸が熱くなる。
「ほらな。すっきりしないか!?」
「あぁ。」
ちらりと服にしがみついている優太郎を見ようとまっすぐとみていたキアが
横目で優太郎を見ると爽やかそうな、笑みが零れていて・・・
「ありがと。キア。」
「お前の名前は?」
「・・・優太郎。」
「優太郎だな。俺はキア・ウェルベーナだ。」
「知ってるよ。・・・名前だけな。」
声がさっきの暗い顔の時よりも良くなっているとわかるとキアは来たかいがあると言うものだ。







「なぁ、キアって呼んでいいか?」
「あぁ。・・・しっかし、さっきよりかはいい顔になってるじゃねぇの。」
バイクから降りて近くで喫茶店に入った。
町並みはとても綺麗で女性は男性が行き来している様子がうかがえる。
オープンカフェだから尚更声も聞こえるしざわめきも絶えない。
真昼だからか・・・尚更だ。
店員にはキアが「コーヒー2つ」と頼んであるからそれを待っている。

「しかし、お前の髪の毛とか瞳とか・・・この国ではない色だよな。」
「そりゃ、俺の国でしかあまりみないしな。」
相席のようになっていて互い話をし始める。
キアはその黒い髪と瞳がやっぱり気になるようであった。
「へぇ〜・・・」
そう感心しているとコーヒーが2つやってきた。






「そういえばさ、優太郎からもらってないよな。」
「・・・は?」
なにが?と聞き返す間もなく、かたんと優太郎の前へと来たキア。
コーヒーを飲んでいた優太郎の顔が?マークになる。
すると、目の前が見えなくなってしまった。
見えなくなった途端、自分の唇に生暖かいモノが触れたと思ったら
自分の唇の中に進入していてぞわわっと今日で3度目の悪寒が走った。
離そうとするが頭を固定されていて・・・その行為がキスというのをわかったのは
数秒たってからであった。
ぴちゃりと生々しく口の中から音がした。
優太郎の顔がどんどん苦しくなってきていた。
優太郎はぐいっとキアであろうと思う腹らへんに両手をおくと気合を入れて
突き放し、どんっという鈍い音がざわめきから生まれた。

真昼の午後のオープンカフェ。
こういう事になるとはまったく思っておらず口をごしごしっと腕を振るう。
キアは勢いよく突き放されたのか1M先まで飛ばされたらしい・・・。
優太郎はさっきのキアの行為になにも言えず嫌悪した顔になっていた。



「優太郎・・・てめぇ。」
「知るか!キアのあほ!」
だっとオープンカフェの柵を軽く飛び越え人込みの中へともぐりこんで
キアの元を去っていった。









「・・・」
優太郎が走って数分。
路地の影に身を落としていた・・・。
息が上がり、肩で呼吸をすってしまっている――――
キアのヤツ・・・姉貴がこういう男が好きだったな・・・と姉を思い出す。
姉が口生意気な年下の彼氏を家に連れてきたときの事―――
忘れもしない・・・。
それよりも・・・
優太郎は唇に手を添えた。
未だ間もないキアという男とキスをしてしまった。
ってか、されたんだが・・・違う!断じてこれはファーストキスじゃない!
女の子とはキスだって普通にしていたさ・・・そう・・・。
「・・・彼女にも・・・な。」
キアのキスは何かが違った・・・そうだ。
「キスが・・・」

ディープじゃなかったこと・・・いや、これは暗い話しだし
笑ってはいけないな。

「・・・とりあえず、あの屋敷に帰らないと・・・」
優太郎はここに来てまだ時間的に浅い。
だから来た道から帰らないと・・・と思っているとどんっと誰かにぶつかった。







「すっすいません。」
「いや。」
「・・・?」
「いや、なんでもないです。それよりも・・・」
優太郎は背丈の高い男とであった。
サングラスをしていて表情を伺えないが・・・。
優太郎はとりあえず話を聞いてもらうことにした。
「軍服来た男を知りませんか?たぶん目立つと思うんですが・・・」
「軍服?」
「はい。それとゴーグルみたいなのを頭につけてる男です。」
こんな感じ・・・と優太郎はキアのゴーグルを特徴的に言ったりと
してみるとスーツに身を包んだ男が声をあげた。
「・・・お前は・・・昨日の。」
「・・・え。」
まさかという顔で優太郎は声をあげたがサングラスをかけている男が
優太郎の口を手であてて抑えた。

「捜している男の名前を聞いてもいいか?」
「・・ぁ、キアって言う男を捜して・・・」
「・・・やっぱりキアか。」
「・・・そういう貴方は昨日の。」
「そうだ。・・・しょうがない、今日は私の家にでも泊まるか?」
その男がサングラスを外した瞬間優しい表情が隠れていた。

黒いスーツとサングラスというのならばすっごくクールそうにみえた。
しかし、表情を見ると穏やかな顔をしている。

「キアなら私もしっている。」
「そうですか・・・でも、泊まっても。」
「大丈夫だ、気にしないでくれ。」
そう笑い街を歩いていく・・・

「紹介が遅れました。俺は優太郎といいます。」
「私はシルヴィオ・ヴェンゼルだ。シルヴィオでいい。」


赤いレッドアイは優太郎にとっては始めて見る。
歩いている最中もシルヴィオはその優太郎の視線にちょっと驚いていた。
「?どうした。」
「いや、瞳が赤いって、綺麗だとおもって。」
素直な感想をいってのけるのも優太郎だ。
初めて言われる言葉に少々同様はしつつも顔には出さないシルヴィオは
クスクスと笑った。
「どっどうした?」
今度は優太郎が聞き返した。
「なんでもない。さぁ、行こう。」
「あっ!」

一体何が言いたかったんだ?
優太郎は?マークを隠せずにも、シルヴィオと一緒についていく。








また違った、人の家にお世話になる優太郎でしたが
翌日、キアのバイクがヴェンゼル家の前においてあるのを見て
優太郎は屋敷へと連れ戻される・・・なんてお約束過ぎるけれど。
帰っていきましたとさ。
以下、続く。



Suzuno A
Dream Novel 2006,0814


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