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最近、よく夢を見る。あまり夢なんて見る方ではなかったのに、最近は、殆ど毎日のように、夜目を閉じれば夢を見た。


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夢の中では、若かった頃の(といっても、二、三年前の)ツナがいつも笑っている。私の三歩前くらい、ちょうど手を伸ばしてもすり抜けてしまう距離で、いつも私を振り返って、笑う。

そして、やっと掴んだツナの服は、風化し、風にさらわれてツナごと消えていく。

――そんな、夢。


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目を覚ました時、カーテンから漏れる光は、今日が晴れているということを告げていた。
いつものように支度をし、ママに「行ってきます」を言って、家を出る。やっぱり空は、残酷なくらいの晴天で、地上の空気を太陽の光が温めてくれていた。
それでも、春は肌寒い。セーター一枚で失敗したかな、なんて一人笑って、学校への通学路を急ぐ。


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学校に着き、教室に入ると、いつもの笑顔で親友の花と京子が笑いかけてくれた。


「おはよう」

「おはよう、咲智ちゃん」


二人に私も笑顔で「おはよう」と返し、席に着く。今日も、教室はにぎやかだ。


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あっという間に午前の授業が終わって、お昼休みに入った。ママの手作り弁当を持って、京子の席に向かう。中学の時から、私たちは京子と花と三人でお昼ご飯を食べた。変わらない習慣だ。


「ごちそうさまでした」


そう言って私が箸を置くと、花は難しい顔、京子は整った眉を八の字にして、私を見てくる。


「咲智」

「ん、なに?」

「アンタ・・・痩せたでしょ?」

「え?」


お弁当を片付けながら首を傾げると、京子も花へ同意するように頭を縦に振る。
そんなことないよ そう笑って言ったものの、内心では花の言葉に冷や汗をかいてた。

ここ数日で、私の体重は三キロも落ちてしまった。理由は単純明快で、単にご飯が喉を通らない。それだけだ。今日のお弁当だって、殆どを残してしまった。ママに悪いなと思いながらも、どうしても、食欲が沸かないのだ。


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今日もまた、一日が終わる。パジャマに着替え、カレンダーの今日の日付に油性ペンでバツ印を書いた。
そういえば、何日か前に、そうしている私の所へツナの家に住んでいるリボーンちゃんがやってきた。彼は窓から入ってきたのだけれど、私は何年もツナと一緒にいたから、さして驚くことじゃない。彼はマフィアのスーパー赤ちゃんなのだ。
そんな彼に、開口一番、言われたっけ。


「お前は本当にそれでいいのか?」


私はただ、「何が?」って、笑ってごまかした。そうしたら、リボーンちゃんは呆れたようにため息を吐いて、帰ってしまったのだけれど。


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「何が?」 だなんて、自分が一番よくわかってる。こうしてカレンダーにバツ印をつける癖も、それが理由で始まったのだから。

"ツナがいなくなってしまう"

その事実が痛くて堪らない。
当たり前のように隣にいたツナが、いなくなってしまう。それはあまりに大きくて、胸の中にぽっかりと穴が空いたみたいに、虚無感で溢れていた。
それでも、そこは痛くて、痛くて、堪らないんだ。


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ご飯じゃ、その穴は埋まらないみたいね、ツナ。
お腹は減るのに、君のことを考えれば考えるほど、穴は広がって、胃が食べ物を受け付けないんだよ。


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あと幾つ数えたら、君はいなくなってしまうんだろう。

"またいつか" "またいつか"
そう自分に言い聞かせても、"また"なんて、"いつか"なんて、きっと来ない。進む道が別れてしまったから、交わることはきっと、もうないんだよ。


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それでも、ツナ。
いつか君が悲しみに暮れて、何もかもが嫌になったとしても、私はずっとここにいるから。
君を忘れることなんて、できないから。

だから、帰って来た時はいつだってこの両手を差し出すよ。

私はずっと、待っているよ。


変わることのない、この街で。





(この手には君以外いらないの)



2009.04.25









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