06
慢性的な寝不足が祟って小さい頃から身体が弱かった。病気や怪我は滅多にしないが、毎日フラフラ歩いているせいで小学校に入った頃から保険医が強制的に保健室に寝かせようとする日も多々あった。その度にクラスの友人たちにはノートの件で毎度お世話になったりと、中々に不便な生活を強いられていた。
家に帰れば夕飯を食べ、宿題をしてお風呂に入る。テレビを見たりゲームをしたり読書をする時間はそこそこに、寝る時間は日付が変わる数時間も前に就寝する。それも薬の力によって強制的に。でなければ眠れないのだ。
”夢は毎日見るものなのだから”

「なまえ、今日もひどい顔してるわよ。」
「ひどい顔って…そんなに不細工?」
「そうね、可愛い顔してるくせにその隈と青白い肌のせいで台無しよ。」
「あちゃー」

三年のクラス変えでたまたま隣の席になって面倒見のよさから春から仲良くさせてもらっている友人であるぺトラが心配そうに話しかけてきた。
出会う前から知っていたけれど、彼女もこちらの世界に生きているのか、と変に納得したのは記憶に新しい。その後は私の顔色が悪いとなると保健室に無理やり連れていかれたり、教室に帰ってくれば前の時間のノートを積極的に渡してくれる。心の中でお母さんと呼んでいるのは彼女には内緒だ。
ぺトラは夢の中でも優しかった。あまりかかわることはなかったけれど、訓練兵とやらの時代には同室でとても仲良くしていた。調査兵団に入ってからは班も違い部屋も違っていたが、私の恋人が彼女の上司になったため調査兵団に入ってからも仲良くしていたらしい。人の少ない調査兵団で数少ない女子で同期、仕事の話だけでなく恋の話や噂話など色んなことを話していた。その中でやっぱり恋の話が大半を占めていて、恋人とはどうのだのなんだのかんだの…根掘り葉掘り聞かれてその度に「私」は顔を赤くしていた。そしてそれを隣で聞いていた彼女は笑っていた。
まぁ今は私は恋もしていなければ最近の流行も疎いため滅多にそんな話をしない。一方的に彼女が隣のクラスのあの子とあの子が付き合っただの、幼馴染の男の子が最近気持ち悪いだの、そんな話をよく働かない頭でぼんやり聞いているのが常だった。

「ほら、さすがに保健室行ってきなさいって…」
「あーでも次物理だし…」
「係りの仕事なら私がやっておくから、この授業終わったら保健室ね。わかった?」
「うーん…」

最近、リヴァイ先生が可笑しい。といっても用もないのに呼び出されたり居残りさせられたりとかそういうのじゃなくて、係りの仕事の合間合間にやけに話しかけてくるようになった気がする。
ハンジ先生もちょこちょこ話しかけてきて、こちらは面倒くさい事に雑用などを大量にさせられる。その度そこに居合わせたぺトラが一緒に犠牲になってくれたりするのだがぺトラが部活で不在の時は何故かリヴァイ先生と共に雑用させられる。それも故意的に。
故に最近はリヴァイ先生とハンジ先生は警戒対象だ。だからあまり授業を休んだりするのは避けていきたいというのが本音なのだが。

「お昼の卵焼きあげないわよ。」
「甘い奴?」
「甘いやつ。」
「保健室行ってくる!」

ぺトラ家の卵焼きは絶品なのだ。背に腹は代えられないとはこの事である。
意気揚々と、しかしフラフラとしながら私は保健室に向かった。


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bkm
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