02
最初の出会いは高校入試の日だった。たまたま試験の担当教官だった。
これは何かの間違いかと思った。ずっと昔から夢を見てもうその女性の一生も、恋人の男が吐いた甘いセリフも暗記するほど見せられて、それでもこれはただの前世だからと目を背けていたのに。自分以外の登場人物がこの世にいるはずがないと決めつけて、中学に上がる頃にはよくある中二病の妄想癖のあるメンヘラ的なものだ、と決めて割り切って考えていたのに。

この学校にあの男がいるなら、志望校変えようかな、とまで考えたほどに嫌だった。なんせ妄想の中の人が目の前にいるなど自分の黒歴史が目の前に悠然と立ちはだかっているのだ。恥ずかしさで死んでしまう。

しかし私は馬鹿だった。
高校とは小学校や中学校ほど義務教育でないので、それほど多く点在している訳ではなかった。
他の近くにある高校はそれなりに頭がよく学費も高額でとてもじゃないがそこまで親に面倒かけるわけにもいかず、かといってわざわざ電車で通学するほど面倒なこともしたくない。工業系や商業系に行くよりも普通科の学校希望だが、それもこの学校以外に近くにはなかった。

故にこの学校に通わざるを得ない事に合格発表後の一週間くらいはしばらく頭を抱えた。


唯一助かったのは、リヴァイ先生が過去の前世の記憶がなかった事だろうか。
見たところ多分ない。間違いなくない。
あれだけ甘いセリフを吐き捨てていた口からは教師として業務的な事や授業に関する言葉しか聞くことはなかった。
優しく触れてきた手は二度と触れてくることはなく元来の潔癖症を存分に発揮していた。
優しい目も、いまはただの生徒として無感動な目しか向けられることはなかった。
高校という教師陣の多さも幸いして担任になることもなければ委員会や部活も避けていれば三年間ほとんど係る事はなかった。

───そして高校三年目の春。
どこかで見た眼鏡の教師。生物担当でリヴァイ先生とはそこそこ仲が良い。男か女か謎といううちの学校の七不思議のひとつである、性別的に中世的なハンジ先生が担任になった。
始業式と簡単なHR。午後から新入生の入学式という簡単な日程。春休み明けの穏やかな陽気に眠気を刺激されつつ、うとうとと船をこいでいたのが災いした。

目をさますとHRが丁度終わった後だった。
新学期によくある委員会と係り員決めだった。委員会か係り員にはどちらか必ずならなければいけなくて、大抵は部活動メインの生徒は月一で活動の委員会に入って、ほかの暇な生徒は先生の雑用という名の係り員にされる。
で、その肝心な役員決めの時間に寝てしまっていた私はというと、

「…あー…」

学校一先生に雑用を頼まれる確率の高い「物理係り」になってしまっていた。つまりは例によってリヴァイ先生である。私の高校生活最後の一年が波乱の幕開けです。


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -