01
前世というものは本当にあるのだろうか。
よくテレビとかで前世がどうの、守護霊がどうの、なんて話を聞くたびに世間はその存在を否定しつつも自分に都合のいい部分だけは信じようとする。だから前世などというものはあってもなくても、今の自分には関係ない。昔生きて死んでいくまでの人生に、今の現在の自分自身に何か影響を及ぼすとは到底思えないからである。

でも私は前世は本当にあるのだろうな、と昔からぼんやりと理解していた。
そう、信じているのではなく「理解」していたのだ。

昔はただの夢だと思っていた。見知らぬ人々見知らぬ男、ただぼんやりと過ぎ行く一人の女性の一生を毎日夢に見てはうなされた。その女性が平凡に生きて平凡に恋をして子供を産んで孫の顔を見て最後は大往生で死んで行ってくれればよかったのだ。そうすればただの退屈なB級映画を見させられているという感覚だっただろうに、残念ながらその女性は闘う一生を歩んでいた。
気持ち悪い大きな人間に生身で立ち向かって二本の刃で殺して回る。かなりスプラッタで小さい頃は何度も吐いた。そのため良心には大変迷惑をかけて精神病棟に入院させられそうになったこともあった。そんな幼少期を過ごした割に中々まっすぐに育ったのは一重に両親のおかげだろう。本当にありがたい。
夢の女性は両親に心配ばかりかけていたから、絶対あの人みたいに周りに心配ばっかりさせるような大人にはならないようにしよう、と子供ながらに決心したりもした。

これが前世というものなのか、と理解したのは小学生になって数年がたったころ。たまたま図書館の特集コーナーが神話と歴史のコーナーだった時、丁度タイミングよく学校が毎朝数分読書をすることを義務付けていた時だった。なにか読みやすくて面白い本はないかと物色していた時一番目に付く場所にあった神話と歴史のコーナーで本を漁っていた時のことだった。
大きな壁、空飛ぶ機械、人を食べる巨人、それを殲滅する軍人。
なにもかも生まれた頃から知っている知識がそこにあった。この本には書かれていない調査兵団や壁が三枚ある事、巨人の弱点や立体起動の仕組みまで。小学生では知りえない専門的なものまで知っていた。
疑問に思い近くにいた司書の人に聞けば驚いた顔をして、次の週にはもっと専門的な分厚い歴史書を貸してくれた。

知れば知るほど、私は最初から知っていた。何もかも、その世界の中で生きている人の事も。ここに書かれていない軍人の毎日の食事や兵士の一日の行動も全部知っていた。
だから、ああこの夢はきっと前世なんだろうな、となんとなく理解した。


夢の女性はなにも殺伐とした人生ではなかった。
ちゃんと恋愛もして子供はいなかったみたいだけど付き合ってる人にちゃんと最後は看取ってもらえた。といっても五体満足な綺麗な状態ではなかったけどそれでも幸せそうに最後は血まみれになりながらも笑って逝った。
その人は無愛想で男の割に身長も小さい人だったけど誰よりも強くて仲間想いで信頼も厚かった。潔癖症だけれどその女性に触れる時はそんなの関係ないという感じにベタベタベタベタ触りまくっていた。小さい頃はわかんなかったけど、もちろん子づくり的なところもたまに見せられて、その時の男の顔が結構卑猥だった。
何度も何度も優しく名前を呼んで、攻める手は止めなくて限界まで追い詰める癖に、名前だけは優しく呼んだ。小さい頃からその声が苦手で聞くたびに心臓が破裂しそうだった。しかも身長が低い以外はなにもかも完璧で、顔もぶっきらぼうな割に整っていて俗にいうイケメンの部類だし、全身筋肉だし、強いし、エロいし。
そのせいでいまだに好きな人も付き合った人もおらず、彼氏いない歴18年目に突入しかけている今日この頃。

今日もベッドにもぐり目を閉じれば夢を見る。

「なまえ」

よりにもよって現世と前世で名前らしく、夢の中のその人は私の名前を呼ぶ。
高校の物理教師と全く同じ顔、同じ名前の男の人の名前を、私も呼ぶ。

「リヴァイ兵長」

これは拷問かなにかですか。


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bkm
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