06
後ろから何やら殺気とは違うけれど自分の死亡フラグ的なものをひしひしと感じながらも五体満足貞操も無事に目的地到着した。正直生きた心地がしなかったので、せめて自分の移動くらいは誰にも頼らないように馬の乗り方練習しようと思いました。いや、たとえ馬乗れたとしても私まだまだ身柄預かりな時点で逃亡防止のために一人行動って極力できないから、ああなってしまうのは必然だったんだろうけど。
意外と高い馬の背中からなんとか降り立つ。それを確認して近くにいた兵士に馬をあずけると、兵長さんは勝手にスタスタ歩き始めた。

「あの、」
「なんだ。」

面倒くさそうに振り返る。これ見よがしに私の手首にまかれた拘束具に繋がれた鎖を見せつける。

「捕まえてないと、逃げちゃいますよ?」
「…チッ」
「ええ、なんで舌打ちするんですか!至極当然の事を言ったまでですよ!!」

しぶしぶと言った様子で鎖を持つ。なぜイライラされるのか全く分からないが大人しく引かれるままについていく。
靴の音がやけに響く廊下で鎖の擦れる音がやけに耳障りに響く。どこまでも続く廊下の先のその奥、ひとつだけ大きな扉の前で二人は立ち止った。



豪奢な飾り立てられた扉とは裏腹に、年期の入った軋む音を立てながら開けられた。
中で待っていたのは予想通り調査兵団団長エルヴィンと、隣には昨日助けてくれた私の命の恩人のハンジさんがいた。二人はにこやかに出向かえてくれた。
じゃらり、と一際大きな音を立ててリヴァイの手の中の鎖が音を立てた。

「リヴァイ、彼女の拘束を外してあげてくれ。」
「こいつはこれが好きらしいが。」
「えっ…」
「えーなまえちゃんってそういうの好きなんだっ!!」
「ええ!!違う違います!!!好きじゃないです!!!」
「さっき俺に引きずられたがってだだろうが、気持ち悪い…」
「ちがいます!!危険性ありまくりな人間を野放しにするという軍人としてあるまじき行為を注意してあげただけです!!」

侮蔑を含んだ目で隣に立つリヴァイに見下ろされた。ひどい人権侵害である。前を向くとエルヴィン団長も苦笑いを浮かべ、ハンジさんに至ってはキラキラと輝く笑顔だった。ここで弁解しないとこの先ずっとこの生暖かく冷たい視線に晒される。それだけは御免だ、せっかく命助かったんだからこの人達とはいい関係を築いていきたい。というかこのままでは社会的に私が死んでしまう。

全力で否定すればそれが伝わったのか、はたまた最初からただからかっていただけなのか、あっさり誤解は解けた。そして団長さんの言葉通りに手首に巻かれた二つの拘束具が外された。擦り切れて赤くなっているそこを労わるように数回撫で、痣になってしまった手首を見て団長さんが申し訳なさそうに謝罪を口にした。

「すまないね、上の許可を取るまではどうしてもそうするしかないんだ。理解してほしい。」
「あっ大丈夫です。私もっと色々ひどい事になると思っていたのでなんか呆気ない感じでびっくりしてます。」

笑顔をひとつ浮かべると、それを見て団長さんも小さく笑った。
そして一息吐いて、一瞬で表情を引き締めてこちらを見た。

「そうか…リヴァイから聞いたと思うがキミの身柄は調査兵団で預かる事になった。本来ならこのまま訓練兵団に入って兵士を目指してもらおうと思うんだが、」
「君って昨日話した限りかなり博識で教養もあるし、この世界の人間ではないなら新たな着眼点で巨人解明のきっかけが掴めるかもしれないから私がエルヴィンに頼んでしばらくは私の班で巨人の生態研究を一緒に…」
「させねぇって言ってんだろクソメガネ。壁外調査に出れなきゃここに置く意味ねぇだろうが。」
「でも彼女って全然鍛えてるように見えないし!判断は的確で冷静だけど逃げるって選択肢が思い浮かばないなら彼女は壁の外に出ても生存率は低くなるよ!!それなら人類のために壁の中でその知識を存分に生かした方がいいと思うんだけど!!!」
「それをこれから躾けていくって言ってんだろう。それに元々連れ帰ってきたのはこいつの野生の勘が使えると俺とエルヴィンが判断したから壁の中に入れた。それ以外の用途でコイツを使う気はない。」

どうやら結論的にいえば調査兵団に置くのは満場一致したけど、その後の処遇をどうするか決めかねている状態らしい。だからとりあえず調査兵団に引き込んでこれから私をどうするか、私はどうしたいのか、その会議と言った所だろうか。

「二人とも落ち着け。彼女が困っているだろう。」
「エルヴィンだってそう思うでしょう!?こんな小さい子に壁外は危ないよ!!」
「俺と対して変わらねぇだろ。」
「ただの女の子と全身筋肉のリヴァイを一緒にしちゃダメだよ!!」

私はどちらに転ぶのか。命の危険度から言えば圧倒的にハンジさんの元で巨人の観察している方がまだ安全なんだろうけど、生憎私は工学に精通していても生物学専門ではない。学校の授業と選択授業レベルの知識しかないし、そんな中途半端なものでもしかしたら私よりハンジさん達の方が専門的な事を知っている可能性の方が高い。
壁の外に出るのは確かに怖い。巨人も怖い。けれどあの巨人より私の方が知能がある。パニックにさえならなければ人間の方が圧倒的に強いはず。といってもあの立体起動とやらを使いこなせる自信もなければ兵士になる覚悟もない。
どちらに転んでも結局私は役立たずなのだ。なんせ人類に心臓を捧げるつもりは更々ないのだから。

開拓地に言った方が私伸び伸び人類の為になれると思うのだ。なんせ田舎育ち故農業関係は生きる術として身体と本能に染みついている。


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bkm
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