04
「ア」
「…」
「ホ」
「…いてっ」
「ら」
「痛い痛い痛い痛い!!」
「し」
「わざわざ区切りながら喋んないでよムカつくなぁ!!!」

今日だけで私のほっぺかなり伸びたんじゃないかってくらい抓られた気がする。イライラしながら顔をあげると真子がこれでもかってくらい不機嫌な顔で私を見下ろしていた。こわいよ、元々目つき悪いのに。

「ようはあれやろ、嫉妬しとんのやろ」
「え!!だ、誰が、誰に!!?」
「せっかく私のモノになった真子くんをこっそり好きとか言いやがってこの雌豚共めーみたいな」
「私そんなキャラじゃないしそんな事これっぽっちも思ってないけど!!」
「ええやん別に好きって言わせとけば」

私は女子的に見てもかなり背が低いから一般的に身長が高い部類に入る真子の隣に座ったってかなり座高の高低差が激しい。なので必然的に座ってても真子をおもいっきり見上げる形になるわけだが、今日は無理やり真子に顔を掴まれて強制的に視線を合わさせられた。そうなってくると私はかなり首が痛い訳で、反射的に顔をつかんでる真子の袖を引っ張って無理やり離させようとするも力が強すぎてそれも叶わない。
いつもより少し怒気を含んだ視線が怖くて目を逸らそうとするけど、その度に痛くしてくる。さっきとは別の意味で泣きそう。

「俺が好き言うたんは誰か知っとるやろ、言うてみぃ」
「…わたし、です」
「俺が100年片思いしとったんは誰や」
「わたし…らしい」
「で?俺の恋人は?」
「わたし…」
「俺と一緒に100年近く五番隊切り盛りしてきた副官は誰や」
「わたし」
「こんだけ言うても疑うんか。自分は相応しくないて」
「う…」
「俺が選んだ女や。そんで俺の副官や。そいつの悪口言うならそれは俺に対する侮辱なんやで。その悪口言うとんのがたとえなまえやったとしても、や。そこんとこようわかっとき」

「…でも、100年先だって同じとは限らないじゃんか」
「そんなんお前も同じやろ。昨日好きやって言うとった癖に次の日会ったらもう俺の事好きやないって言うかもしれへんやろ」
「…そんなことないもん」
「ほんなら毎日でも言ったってもええんやで?会うたびに愛しとる言うたろか?そしたらそないな事考える暇ないもんなぁ…どっかで俺に愛されてへんて思とるからけったいな事考えるんや、ほんなら毎日朝昼晩一日何十回何百回言うたら俺に愛されとるて自覚でるんか?」

顔、近い。
息、かかってる。
もう、もう、考える事ができないくらい顔に熱が集まってる。血が沸騰して脳の血管全部切れちゃったんじゃないかってくらい思考停止してる。
真子って、やっぱりすごい。言葉だけなのに私の事こんなにぐちゃぐちゃにしちゃうんだから。

「し、真子…」
「なんや」
「一回で、いい」
「…」
「一日一回で、いい…真子にそれ言われると、私、一日ずっとのぼせたみたいになるから…帰る時、一回で、いい。そしたら十分だから…だから、えと」
「…かわええなぁ、なまえ」
「うぇ…えっ、ちょ、コラ真子!!」

なんとか離れようと身をよじると何事か呟いた真子がそのまま顔を引き寄せて私のおでこに口づけてきた。元々顔が熱いのに突然感じた人肌に全身がビクリと震えた。
ひどい、ひどい。傷口に塩塗られた気分だ。
真子から体を離していつもより早い鼓動を必死に戻そうと小さく深呼吸する。おでこに手を添えてみると熱を出した時みたいに熱かった。
くっそ、なんか悔しい。私ばっかりこんなに混乱させて当の真子はさっきまでの不機嫌はどこへやら、妙にすっきりした顔をしていた。

「なまえー」
「む?」

カシャ、と電子音が聞こえた。真子の手に持っているのは私がさっきまで手に持ってたカメラ。
ご機嫌な様子の真子が声を弾ませながら「あとで焼き増ししてもらおう」とか言ってるけど、私の脳は未だ思考停止継続中である。

つづく。


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bkm
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