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年末ということで、ここ最近は仕事の量も増えているにも関わらずそれに比例するように忘年会やら飲み会の予定もじゃんじゃか入って、更に仕事が終わったと思ったら隊舎掃除だなんだとこき使われてもう新年を迎える前に疲労困憊である。
年末総決算と言って普段さぼっているつけが回ってきてしまったのはもう自業自得としか言えないし、そして新年には「仕事はちゃんとする」などという目標を毎年書初めでしたためているのは恒例となってしまっている。来年こそはしっかりサボらないようにしようとまた性懲りもなく心の中で誓った。多分無理なんだろうけど。
飲み会はもう皆様ご想像の通りいつもの面子が張り切って予定を立ててくれたおかげで毎日が二日酔い状態である、あっちが。真子はお酒強いし、雛森ちゃんは自制してたし、私は真子と雛森ちゃんにジュースしか飲ませてくれなかったから五番隊に被害はなかったけれど、噂に聞くに十番隊の隊長副隊長は揃って二日酔いでぶっ潰れて三席の男の子がブチ切れてたらしい。みんなお酒はほどほどにね。
そして掃除は五番隊の良心にして私と真子のお母さんみたいな感じになってる雛森ちゃんが率先して指揮してくれたおかげでピッカピカである。私と真子は最初やらなくていいって他の隊員の子達に気を使われまくってたんだけど雛森ちゃんが冷水につけて絞った雑巾渡してきてにっこり笑顔で「はい」なんて有無を言わせない感じでなんかすっごい怖かったので天下の五番隊隊長と副隊長が雑巾がけレースに参加するという威厳の欠片もないような事をさせられた。しかしその様子をひよ里に見られていたらしく次の飲み会で爆笑していたのは覚えてる。掃除のためにって髪をポニーテールに結った真子はちょっとだけ可愛かったから、よしとする。

「なんで外で飲むの?」
「ここんとこ騒がしい奴らばっかりやったから、たまにはええやん」
「寒くないの?」
「毛布あるし。なまえ寒いん?もう一枚持ってこよか?」
「へーき、現世の肌着来てるからーいまの現世の服すごいんだよ、すっごい保温。超保温。もうヒートテック来てないと冬越せないもん」
「ほーならええけど、新年から風邪ひくなや」
「新年から四番隊の人達に迷惑かけるの可哀想だもんねー」

というわけで12月31日の23時過ぎ現在。自室の掃除も無事に終わり後はカレンダーを付け替えるだけ、という所で唐突に真子に月見酒に誘われたのでこうして二人揃って静かな廊下に座り込んで正面に上る月を見上げながら真子は熱燗、私はちょっと奮発して玉露を啜っているいま現在の状況である。
真子の部屋から毛布を引っ張りだして二人ですっぽりかぶってのんびり新年を迎えようという予定なのだが、ここ最近の激務というかハードスケジュールのせいで新年を迎える前に眠ってしまいそうだ。カウントダウンくらいはしたい。
本当は今日も乱菊ちゃんにカウントダウン飲み会に揃って誘われていたんだけど私は自室の部屋の掃除も残ってたし、真子はよくわかんないけど適当に理由をつけて断っていた。なにか用事あったのか知らないけど。

「ねむいんか?」
「目蓋が重いだけです」
「つまり眠いんやろ」
「んなことないもん…くっそー真子ばっかりお酒飲みやがって私にもよこせ飲みたい」
「あー…まあ明日休みやし、一杯だけならええで…ほれ」

自分では強いと思っているのだけれど、真子は私の事子ども扱いしてるせいでお酒は滅多に飲ませてくれない。まあ真子ほど強くはないけれど、でもお酒に飲まれるほど限度を知らない訳じゃないし、すぐ顔を赤くしちゃったりするほど弱くないし、キス魔になったりするような悪癖がある訳じゃない。一応人並み程度には飲める。ま、かといってお酒が好きって訳じゃないんだけど、ここ何回かの忘年会という飲み会で一滴も飲めなかったのだからそりゃちょっとは久しぶりに飲みたいなってなる。いつまでも子供じゃないんだけど。
あ、ちなみに似たような理由でひよ里もあんまり飲ませてもらえなかったみたいで憤慨してた。背が小さいって不便だね。でも同じちびっこクラブなのにそこの隊風からかやちるちゃんはジャンジャカ飲んでいるのだから納得いかない部分もあるよね。
真子から御猪口を受け取ってそれに口を付ける。久しぶりのお酒で喉が焼けるように熱くなって瞬時に気分がふわふわになってきた。これこれ、このほろ酔い気分が気持ちいいんだ。身体もあったまるし気分もよくて幸せって気分が簡単に最高潮になるからお酒は好きだ。といってもお酒を飲んだら私はかなりガードがゆるゆるになるからあんまり飲まないようにしてくれって真子にお願いされてるからなるべく飲まないようにはしてるんだけどね、私の事愛しているが故の嫉妬だもの可愛いものだね。
お酒の力も相まってさっきから微かに感じていた眠気が強くなって、更にほろ酔い気分になったせいで真子にもたれ掛るように体重を預ける。

「結局寝るんかい」
「んふーだって、きもちー」
「相変わらず酔うの早すぎやろ…やっぱ酒飲むのしばらくやめぇ」
「真子が隣にいるときだけしか飲まないもん…んんーもう寝る…」
「あと数分で新年やけど」
「来年もよろしくお願いしまっす…おやしゅみ…」

新年だからって騒ぐほど若くもない私は襲い掛かる睡魔に素直に屈服する。あ、でも新年になったら総隊長と京楽さんがお年玉くれるからやっぱりちびっ子って便利かもしれない。
眠りにつく前にぼんやり思う。
今年も楽しかった。今年の最後はこうやって好きな人と一緒だし、あまつさえ一緒にお酒飲んで肩まで貸してもらってぬくぬくと年を越せる程度には穏やかに過ぎ去っていくのだから。私はいつも多くは望まない。ただ私の大切な人が私の傍にいてくれればそれでいい、そして一緒に幸せを感じれるならそれだけで十分。来年も、この暖かい幸せが続きますように。
お酒のおかげで最高潮の幸福を味わいながら私の一年が終わりを告げた。

あけましておめでとうございます。


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