08
書類整理だけは、何年たっても好きになれない。もう毎日毎日何年も何年もやってるんだからそろそろ慣れてもいいと自分でも思うのだが慣れないものは慣れない。
報告書とか作成する時も報告する事柄を事細かに覚えている訳もなく必死に記憶を掘り起こしてうんうん唸りながら書類を作るのだけでも疲れるのにそこから丁寧語だの敬語だの文書作成にあれこれ決まりがあったり誤字脱字だの、色々ややこし過ぎると思う。
極め付けは墨の扱いだ。元々書道の心得なんて皆無に等しいのにいきなりボタボタ落ちる筆を握りしめさせられて私に何をさせたいんだよ、と文句不満たらたらである。
伝わればいいんじゃないか。もう書類じゃなくて音声テープとかでいいんじゃないか。天艇空羅で一気に全隊員達にみんな報告すればいいんじゃないか。わざわざ書類を作る紙とか墨とか勿体ないと思う。瀞霊廷は早くシャーペンと鉛筆とボールペンを導入すればいいと思う。時代はエコだよね。

「トイレいきたい」
「あかん」
「お腹痛くて死んじゃう」
「さっきもトイレいったやろ」
「さっきのは小、今度は大だもん…」
「女がそないな事言うもんちゃうで」
「う〜…だって…」

朝からずっとこんな同じ書類と睨めっこして私の思考回路はショート寸前ですよ。このままではオーバーヒートしちゃうよ。
机に項垂れつつ視線だけ動かして隣で同じく書類と戦っている真子を見上げると無表情な視線とかち合った。そのままじっと見つめているとしばらくして真子が盛大な溜息をついた。

「30分だけやで…ったく」
「ほ、ほんと?いってもいいの!?」
「大なんやったらしゃーないやろ」
「うぅー真子ありがとうぅ!!じゃあちょっと休憩してくる!!!」
「へーへー行ってらっしゃーい」

絶対トイレじゃないって事くらいわかってるだろうにそのまま退出する事を許してくれた真子に思わず抱き着く。ぐりぐりと頭を押し付けて感謝の意を全身で表すと、溜息を吐きつつも頭を優しく撫でてくれる。
書類を届けにいった雛森ちゃんが帰ってくる前にこの五番隊舎を抜け出さなくてはせっかくの真子の好意が無駄になってしまう。手早く準備をして心の中で必ずお土産を買ってくることを誓って、朝から缶詰だった隊首室を抜け出した。

つづく。


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bkm
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