07
うちの隊舎には朝の10時頃と昼時の12時とおやつ時の15時に鐘がなるように設定された時計を置いてある。といっても私がわがままを言って置かせたものなのだけれど、あまり根詰めて仕事してもいい事ないぞって隊長が最終的に許可を出してくれた。なので時計がなったら皆各々自由に休憩する事ができる。我ながら昔の私グッジョブ、ブラック企業の社畜戦士達に救いの手を差し伸べた私グッジョブすぎると思う。
そんな金が大きく3時を知らせてくれた。

「でかけてくる!」
「他の隊舎にあんまり迷惑かけんなよー」
「大丈夫!ローズ隊長は私を邪険に扱ったりしないもんー」
「あーまぁあいつなら大丈夫か…30分だけだからなー!30分経ったら迎え寄越すからなー」
「わかったーいってきまーす!」

そんな訳で勢いよく立ち上がって再び隊舎を出る。もちろん渡された残務整理など一ミリも進んではいないのだけれど。しかし休憩は休憩だしそれは隊長公認の休憩時間なのだから誰も私を止める事はできないのだ!仕事残ってないけど終わってないけど終わらせるつもりないけど、私が三番隊舎に向かう事を誰にも止めることはできないのだ!

「おぉい止まれなまえ」
「ぎゃぶっ」

ほぼ瞬歩に近い感じで全力疾走で走っていて丁度曲がり角曲がろうとした所急に襟首を掴まれる。おもいっきり首が閉まる。
この誰にも止められない私を止めやがった忌まわしい奴は誰だと怨念たっぷりのオーラをまとって振り返ったら、そこには別に嫌いでも好きでもないけどどっちかと言えば好きでもない部類に入る隊長さんの姿。と、あと優秀な副官の姿。

「廊下は走ったらあかんて習わんかったんか」
「生憎育ちの悪い流魂街の出身なんでそんなもの習ってません教養もありませんすみませんでした!」
「そない急いでどこ行くねん」
「三番隊舎!おやつ休憩もらったからローズ隊長に和菓子もらいに行くんだから邪魔しないでよね五番隊ハゲ隊長さん!」
「せやからハゲてへんて…別にローズんとこ行かんでも育ちの悪いお子様の舌満足させるくらいのお菓子ならうちにもあんで、なぁ惣右介?」
「ええ、お茶菓子なら切らさないようにしてますから。隊長がうるさいですしね」

ハゲ真子が思わぬ障害になりました。ちくしょうどうせ私は育ちも足癖も口も悪いし汚いよサラッサラの金髪が羨ましいよボケ!
そんな僻み全開で真子をにらみつけるけど当の本人は知らんぷり。後ろに控えていた自身の副官にそろそろ休憩と茶菓子の催促を始めていた。困ったように笑う副官はこれ見よがしに自分の手に余り余っている書類の山を見せて断っているというのはいつもの風景だ。

こいつは嫌い。
こんな奴副官なんかにしたから、あんな事になったのに。

「真子のバーカ!ハゲ!」
「いきなり何キレてんねん。仮にも俺隊長やぞ」
「私にとって隊長はラブ隊長だけだもんね!あんまり副官困らせんなハゲアホ死ね!真子のバカ野郎――――ッ!!!」
「あっコラ!言い逃げすんなや!!」

一秒でも早くあの男の顔が見えない所に行きたかった。
一秒でも早くあの男の声が聞こえない所に行きたかった。
私を構築する細胞の全て、魂魄の霊子の全てがあの男を拒絶していた。
怒りと憎しみがドロドロ溢れ出してきて今すぐ切りかかってやりたかったのを必死にこらえて、それを全部真子にぶつけてその場を立ち去る。

「なんやねん、あいつ…」
「さぁ…所であの子誰ですか?ずいぶん親しいようですけど」
「あいつは七番隊の平隊士や。流魂街で羅武が拾ってきて、そっから羅武経由で知り合っただけや。アホでバカでどーしょうもないし、鬼道もさっぱりやしなぁ…」



あいつなんか、大っ嫌い。
真子の方が全然好きなのに、なんで隣にいるのがあの男なんだ。

「隊長嫌われてるんですか?」
「ちゃうちゃう、むしろ好かれとるでーちょっと愛が痛いのが玉に瑕やけどなぁ」

むかつくむかつく、ああ、けったくそわるいなぁもう


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