04
愛するラブ隊長の制止を振り切って向かう先は十二番隊。
あの優男っぽい浦原隊長が就任してから技術開発局なんてものも創設されて何かの調査とか開発とか発明とかなら十二番隊っていう確固たる地位を確立された。医療専門の四番隊とか隠密機動の二番隊みたいな感じで。

「あっ!ひよ里ー!副隊長ー!」
「あ?おーなまえやんけ!」

目の前を歩いていた小さな背中。金髪のツインテール、振り返った顔はずいぶん勝気な顔した女の子。こんなに小さくても副隊長だ。思わず思い出して敬称をつける。ひよ里には別につけなくてもいいって笑われたけど、そんな訳にもいかない、だって私は平隊士。
そういえばひよ里は浦原隊長とあんまり仲良くなかったけど、それは現世にいってもあんまり変わらなかった。といってもひよ里って男性には大分手厳しいというか、自分より体格のでかい男の隊士にも容赦なく頭突き玉蹴りしちゃうくらいひよ里は強い。まぁ私の足癖の悪さはひよ里に教えてもらったからなのだけれど。私もひよ里と同じくらいの背格好だから護廷十三隊に入るなら強くないといけないって言われて。いまでは感謝してる、すごく役になってるけどね!

「ね、ね、浦原隊長いる?」
「は〜いお呼びですか〜?」
「こらなまえ!なんでうちよりこの変態に用あんねん!おかしいやろ!」
「おかしくないよ!変態隊長に用があるもん!」
「変態って…アハハ…」

おっとついに本音が。
というより私の周りにいる隊長格はみんな私に対して結構甘い気がする。いくら私が七番隊の隊長の娘的な位置にいるとしても、浦原さんとかそんな仲良くないのに結構気さくだ。本人の性格も影響してるんだろうけど、でもありがたい事だと思う。

「浦原隊長にお願いがあるの」
「はいはい、今度はなんですか?」
「一週間くらい下痢で苦しんで四番隊舎にお世話になっちゃうくらモーレツな薬ください」
「なんや!あのハゲ真子にでも盛るんか!?」
「あんまりいじめちゃダメっすよ〜隊長さんなんですから」

にっこりと天使の笑顔を浮かべて口からは悪魔のような要求をすると浦原さんは苦笑い、ひよ里は目を輝かせていた。そうだね下剤あまったら真子にでも使ってあげようか、きっと泣いて喜ぶ。もちろん泣くのは真子で喜ぶのはひよ里なんだろうけど。
浦原隊長は苦笑いしながら袖の下から小瓶を取り出した。いかにも怪しいですって感じのショッキングピンク色の液体が少量はいっている。
いじめちゃダメって言う割にこういうのあげちゃうあたり、浦原隊長も楽しんでるに違いない。優男に見えて性格と腹の中は真っ黒だ。私に害はないし私の事色々助けてくれるし頭もいいし優しいから、私的にはいい人なんだけどね。

そして私の計画に必要不可欠な人である。
ちょいちょいっと手招きをすると浦原隊長はそれに気づいて身を屈めてくれた。仲間外れにされたひよ里が顔を思いっきり顰めていたけれどこの際それは無視だ。
背が高い浦原隊長が腰をほぼ90度くらい屈めてくれたおかげで優男の顔が目の前にある。これで内緒話しやすいね。

「もひとつお願いがあるの」
「なんっすか?」
「霊圧遮断できる服、100着くらい作って欲しい。今から寝ずに、できる?」

虚なって気を失っていた私たちを迎えに来たとき浦原隊長は霊圧遮断ができる服を着ていたから誰にも見つからず瀞霊廷を抜け出せたのだと教えてくれた。まぁそのあと霊圧遮断できる偽骸を作ったりと研究者発明者としてはかなり有能なのだから、こんなお願いなんのそので出来るだろって事でこの依頼。
それを聞いた瞬間浦原隊長は眉を顰めてたちまち顔を顰めた。
「そんなもの、何に使うんすか」
「理由きかないと作ってくれない?」
「下剤ならともかく、一介の平隊士の方が霊圧遮断を100人分だなんてタダ事じゃないっすからね〜」
「ですよねー」
こういうところはちゃんと隊長の顔をするのだから少しだけやりにくい。でもこれが隊長の仕事だし、ほかの隊舎の一介の平隊士とこんなに仲良くしてるんだから、これはこれで仕方ないのかなとも思う。どうして昔の私は平隊士だったんだ、そりゃ実力なかったからだよ。まぁ今でもあんまり鬼道の腕とかは変わってないけど、斬魄刀の使い方に慣れただけだ。

「鬼ごっこしようと思って」
「鬼ごっこ?」
「そう、鬼ごっこ。私たちが逃げて、鬼が私たちを食べちゃうの。その食べてる所を霊圧遮断して追いつめて鬼さん捕まえるの」
「へぇ…でもアナタ達は食べられちゃった後どうなるんですか?」
「私が簡単に仲間見殺しにすると思う?大丈夫、その辺も対策ばっちりだもんね」
「そっすか」

この時の浦原隊長がどこまで私の事知っているかはしらないけど。でも妙に納得した顔で頷いてくれた。
どっこいしょっと親父臭い掛け声を出しながら立ち上がって思案顔で首の後ろを撫でていた。
この男の協力が得られなければスタートラインに立つことすらままならないのに。



「いいっすよ」



「…え」
「いいっすよ。なまえさんがそう言うって事は、絶対の自信があるんでしょ?じゃあ協力させていただきます」
「ほんと?」
「ハイ。そのかわり、僕もその鬼ごっこに参加させてください」
「いいよーじゃあ鬼さんちゃんと捕まえてね」
「はい。頑張ります」
にへらって感じに笑う浦原隊長の笑顔は結構好きだったりする。心がなごんで落ち着いて純粋に頑張ろうって気持ちになる。あと身体からよけいな力が抜けて緊張も解れるから。
仲間ゲット。やっぱり浦原隊長は頼りになるなー。

「うち抜きで和むな!」
「うおぉうッ!!」
「なまえ!うちもその仲間いれぇや!仲間外れはあかんって羅武に習ったやろ!」
「ならってないけどいいよーじゃあひよ里は私と一緒に鬼さんから逃げようー」
「よっしゃあ!なんやようわからんけど返り討ちにしたるでぇ!!!で?いつやるんやそれは!」
「まだ決まってないけど近々開催予定だよーじゃあ浦原隊長お願いしまーす」
「イテテ…はいっす。今日から徹夜っすねー」

浦原隊長も協力してくれるし、ひよ里とも結託したし、下剤もゲットしたし。完璧。
計画には根回しがいる。でもあいつに仲間はいないけれど私には仲間も友達も頼りになる上司だっている。攻略法知ってる私が頑張って根回ししておけば、絶対に勝てるはずなんだ。
みんないる、大丈夫。
そうやって言い聞かせて十二番隊を去る。ひよ里の笑顔も浦原隊長の笑顔も見納めにならないようにしよう。人間も死神も嫌いなひよ里なんて、見たくないもんね。


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