02
「ちゅーかお前さっき何しようとしとった?」
「え?」
「なんや自分の部屋でうっすら虚の気配した思たんやけどなぁ…」

虚の気配って、そりゃ仮面かぶろうとしてましたもの。虚化しようとしてましたもの。こいつ何言ってんの?自分だってできるじゃん、むしろ自分が仮面の軍勢のリーダー的なの張ってたくせに、あれ?
なんとなく会話がかみ合っていない気がするのは気のせいだろうか。いや確実にかみ合ってない。ていうか元々噛み合ってないし噛み合うつもりもなかったけど、なんか噛み合っていない。大事な部分が噛み合っていない。

「んー?ねぇねぇ今藍染ってどこにいるの?」
「は?惣右介なら俺の副官やろ。ちゅーか一応上司なんやから副隊長ってつけろや」
「ハゲ隊長の副官かぁ…あれー?」
「せやからハゲてへんゆーてるやろ」

それはおかしい。だってあの変態眼鏡が副官だったのなんて100年以上前じゃん。しかも藍染は崩玉とやらと一緒に浦原さんに封印されて今はもう四十六室の下した判決通り二万年の懲役うけて牢屋にぶち込まれたはずじゃないか。
ここはどこだ。私の知っている世界だけれど、私にとって過去だった世界が現在進行形で進んでいる世界ではないか。ってことはつまり私はタイムスリップ的なものを体験しているという事?なにそれファンタジー!
ん!ということは私の大好きな大好きなラブ隊長も羽織来てるしひよ里も浦原さんも元気に漫才してるしリサちゃんは生足晒してるし露出狂拳西とマイフレンドの白ちんは元気にコントしてるしローズちゃんは相変わらず紅茶淹れて優雅な感じで真子は変わらずハゲているのか!
私の大好きな過去でもう二度と戻れないと思っていた過去。みんな一緒でみんな居る、過去。

「真子!」
「お、おう…なんやねん」
「や、やばい!私本当にどうしよう!嬉しすぎて泣きそう!!」

感極まって思わず目の前のハゲ男に抱き着く。別に嫌いじゃないし別にいなくなって寂しいなんて思ったことないけど、ただいないならいないで少しだけ、本当に少しだけちょびっとだけ、つまんないなって思っただけだけど、目の前にいるなら嬉しくはないけどでもいて当たり前だったんだから、その当たり前が目の前にあって、それがとてつもなく嬉しい。
100年以上私の隣にあったものがいきなり消えてしまって、それが私の中ではそれなりにショックで、いつでも会えるし連絡だって取っているし他に残った仮面の人たちもいたけれど、やっぱりいないならいないで寂しかったりもした。別に夜眠れなくなるくらい寂しいとかじゃないけど、ちょっとパシりが減っちゃっただけでそれが寂しいって思っただけだけど。
相変わらず真子の体温はあったかくて石鹸と太陽の匂いがして、今は髪が長いからほんの少しシャンプーの匂いもする。
ガリガリで触ったら骨が刺さりそうなくらいガリガリのくせに、以外と筋肉もあるし突然抱き着いた私をちゃんと抱き留めてくれる。
なんか、久しぶり、この感覚。やっぱり真子は気持ちいいなぁ。

「なんや、気持ち悪いやっちゃな」
「久しぶりなんだから黙って抱き着かれてろハゲ。おっぱい押し付けてやるからほらほら」
「お前こそ黙って抱き着いとれ台無しや」

気持ち悪いのは百も承知だし私がムードブレイカーなのは今に始まったことではない。真子に抱き着くなんてそりゃ滅多にないし普段なら鳥肌1000%だけど、でも私の大事な仲間で友達だ。
まだ元気でまだ虚化してなくて、後悔も過去にも囚われてない普通だった時の真子だ。100年ぶりの真子だ。本当に嬉しい。
皆元気で誰も傷ついてない皆がここにはいるのだ。目の前にいるのだ。
感情を、衝動を、抑えられるわけがない。
頭を撫でてくれる手は100年たっても変わらなかったけれど、背中にまわした手に触れるサラサラの金髪は100年ぶりだ。

「真子!」
「おう」
「私ちょっと、100年ぶりに頑張ってみる」
「おーなんやようわからんけど気張りやー」
「だからさ!」
「おん」
「もうちょっとこのままでいてもいい!?」
「おーかまへんけど、羅武呼んでたで、いかんでええんか?」
「もうちょっとだけ!真子に会うの久しぶりだし!」

昨日も会うたやろ、と小さく呟いた声はガン無視だ。私にとっては久しぶりなんだから我慢してもらう。
仲間は大事。友達は絶対守る。それが私のポリシーで信念で私を構成する全て。

今度は守る。今度は足手まといにはならない。

あの変態眼鏡から私の大事な仲間と友達と上司と家族を守ってみせる。
私の愛した時間を守ってみせる。

「じゃあラブ隊長の所戻る!じゃあねハゲ真子」
「ハゲとらんゆーてるやろ、コラ」

やってやろうじゃないか。待ってろ変態糞眼鏡!


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