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「へー」
「ふーん」
「死ね」
「ひよ里ヒドイ!死ねてヒドイ!!」
「やかましい!!!リア充は死ねや!!」
「まだリア充じゃないもん!」
「リア充やろーが!うちなんて告白されるどころか男と二人っきりになったこともないわ!!まぁ相手があの真子ってゆうのは願い下げやけどな!!」

あの後お昼頃にまた目が覚めてそのまま昼ごはんに出かけた。誘われたけどさすがに私のキャパシティがオーバーヒートしちゃうから丁重に断った。逃げるように隊首室を出てくと後ろの方でなぜか大爆笑が聞こえたのでさっき真子が言ってたことは嘘なんじゃないかっていう疑心暗鬼も生まれた。
うんうん考えてたら丁度目の前に通りかかったおなじみのひよ里リサちゃん白ちんと遭遇したためお昼ご飯を一緒に食べようとことになった次第である。

「真子もやっとゆーたんなら褒めたりや」
「気づいてなかったのなまえっちくらいだよ〜?」
「せや!!あんたが副隊長になった途端真子のハゲがデレデレしやがってほんっまうっざいわぁ!!!」
「えっ…そ、そんなのわっかんないよう」
「真子もかわいそうになぁ」
「気づいてもらえないって不憫だよね〜」
「うっざいうっざいうっざいうっざい…」

「よぉお前らなにしてんだ?」

「!!ラブ隊長!!なんかすっごい久しぶり!!」
「そーだな。お、お前ちょっと背が伸びたな」

女子三人は私の的になったと判断した時、ちょうど後ろから声をかけられた。聞きなれた声に振り返ると同じように昼ごはんを食べにきたらしく隣には副官も部下の姿も見えなかった。
隣に座っているひよ里がちょっと詰めたから私も奥に座ってラブ隊長の座るスペースをあげる。隣に座ってメニューを開く事なくよく通る声できつねうどんを頼むとリサが静かに口を開いた。

「こいつついに真子のハゲに告られたんやてー羅武なんか言うたってや保護者やろ」
「へぇ、あいつついに言ったのか。このまま五百年くらい言わねぇもんだと思ってたぜ」
「五百年待てるほどあいつの気、長ぁないで」
「真子はなんて言ってんだ?」

「ちゃんと考えて自分の気持ちがわかってから返事しろって…」

自分の気持ちと言われてもよくわからない。
だって、真子の事は好きだ。好きか嫌いかと言われたら大好きの部類にはいるくらい好きなのだ。ただそれは真子だけじゃなくてリサも好きだし白ちんも好きだしひよ里も好きだ。もちろんラブ隊長だって好き。ラブ隊長ラブ。
真子の好きと私の好きは一緒じゃない。だから返事を求められたって、私も好きとしか言えない。
でも私が今の状態で真子に好きって伝えると真子は傷つくんだろうなって、それくらいは理解してる。

「なまえ」
「なぁに?」
「好きって言うのはいくらでも言っていい。でもな、愛してるっていうのは一人にしか言っちゃダメだ」
「愛?」
「ライクとラブの違いや。そん違いくらいわかるやろ」
「特別って事だよなまえっち」
「なまえはアホなんやからそないな難しい事わかる訳ないやろ」
「もぉ〜ひよりんは黙ってて!」
「大体白だってライクとラブの違いわかるんか!!」
「わかんないけど真子がなまえっちの事どう思ってるのかはわかるも〜ん」
「なまえは白よりアホっちゅうことか」
「オイオイお前らこいつに考える時間くらいあげてやれよ」
「羅武はなまえの事甘やかしすぎや!!」
「そりゃ家族みたいなもんだしな」

好きと愛。ライクとラブ。

リサは好き。頼りになるし無愛想に見えてすっごく面倒見がいい。
白も好き。一緒にいて楽しいし白といるといろんな人がお菓子とかくれるし。
ひよ里も好き。乱暴で粗雑だけどでも何だかんだでこうやって話に付き合ってくれる当たりすっごい優しいから。
拳西も好き。口は悪いし短期だけど面倒見もいいし、多分この中で一番優しいのかもしれない。
ローズも好き。愚痴に付き合ってくれるし一緒に食べる三時のおやつは一日の楽しみだった。
ハッチも好き。鬼道が苦手な私に根気よく手伝ってくれたし、気が一番長いから私の気が立ってても一番大人な対応してくれる。

ラブちゃんも、もちろん好き。
だって私の世界を変えてくれた人だ。流魂街で死んじゃいそうだった私を拾って瀞霊廷に連れてきてくれた唯一の人。
皆と友達になったのだってラブのおかげだ。

真子も、好きに決まってる。
だって一番頼りになるし真子はあったかい。体温とかそういうのじゃなくて、一緒にいるとあったかくなる。心臓からじわじわと広がって冷え切っていた指先まで温もりが広がっていく。
百年前のあの夜、虚化しかけていた真子が助けを求めるように伸ばしてきた手を取ったとき、なんとかこの手を助けようと思った。
もう一度この手に私の頭を撫でてもらいたかった。だから必死になって助けて中央に呼ばれた時も総隊長に呼ばれた時も尋問された時も、あの手だけは護ろうって思った。
それから皆で一年間頑張って護廷十三隊に戻ってきて真子の副官に、まぁほとんど無理やりだったけど副隊長になって、そこから百年以上ずっと一緒にいた。朝から夜までずっと一緒、たまにギンとサボったりひよ里と白とかと悪戯しかけたり色々あったけど、それでも私が最後に帰るべき所だと認識していたのは五番隊舎じゃなくて、真子の所だ。

いつの間に帰る場所が変わったんだろう。
副隊長になる前はラブ隊長の所だったのに。家族がいる場所に帰っていたのに。
真子は家族でもなんでもない、ただの友達だったのに。

「ラブ隊長に向けてたのって家族愛だったのかー」
「おう、やっとわかったか」
「うん。でも一人にしか言っちゃダメならもうラブ隊長にラブって言えなくなるね」
「そうだな。ほら、気づいたんならさっさと言ってこい」
「えっ今日!?」
「当たり前や、真子のハゲ百年以上待っとったんやぞ!さすがに不憫でしゃーないから、はよ、いけ!!」
「わっわっやめて!蹴らないでひよ里のバカ!!」

無理やりひよ里に見せを追い出される。お金まだ払ってないというのに、多分ラブ隊長が払っておいてくれたんだろうか。後でお礼言いに行こう。
一人店を出て途方に暮れる。
真子はずるして告白したんだ。私が寝てて雛森ちゃんに俺こいつの事好きなんやでーって言ってそれを私がたまたま聞いてただけなのに、なんで私は真子の真正面で返事しなきゃいけないんだ。おかしくないか、理不尽じゃないか。
こうなったら返事方法は手紙とかでもいいかな、でもそしたら次に会う時恥ずかしくて死んじゃうかもしれない。
このまま五番隊舎におとなしく帰るのは気が引けるからこのまま三番隊まで行ってローズに匿ってもらうか。ああでもそうやって引き伸ばしていたらだんだん会うの気まずくなりそう。今だって十分気まずいのに。




「なまえー」
「ふぎゃぁ!!」

ぐるぐる考えつつ足を三番隊舎の方に向けようとしたとき、唐突に後ろから肩を叩かれた。
いきなりの事にびっくりしたのと、今絶賛私を困らせている張本人の声だったせいで変な声が出てしまった。
恐る恐る振り返ると案の定見知った金髪男。

「なんやねん…きっしょい声出して。せっかく迎えに来たったのにひどいわぁ…もうそろそろ帰るで、休憩は仕舞いや」
「な、なんで迎えに来てんの…」

「やって、こうでもせんと一生逃げ続けると思ったからなー」

神様って私の事嫌いなんだ。
真子って本当は私の事嫌いなんじゃないか。


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