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「たーいちょうさーんはーやーくー」
「しーんーじーお腹すーいーたー」
「ああもう!ちょお待てや!!つかなんでお前達あんな普段さぼっとるくせにやる気出したらそないに仕事早いねん!おかしいやろ!!」
「やってボク天才やし」
「ご飯奢ってもらえるならなんでもするよ」
「ほんまこいつらうっざいわー」

日もとっくに沈んだ夜の事。
皆今日の仕事を終えて思い思いに帰宅したり仲間とご飯食べに言ったり恋人が夕飯作って待っていたりと、そんなちょっと浮かれる時間帯のある日。
五番隊はというと今日やっとあの書類の山を片付け終わりそうだと希望の光が見えた頃、副隊長と三席が自身の隊長にご褒美をせびって、まぁ今日くらいいいだろうと隊長自ら副官二人に今晩の夕飯を奢る約束を取り付けていた。
それを聞いた後の二人の仕事の速さは今までに見たことないくらいだった。そして当の隊長はというとまだもう少し書類が残っているため二人に急かされつつ手を動かしていた。


ビ――――ッ!!ビ―――――ッ!!!!!

『緊急伝令緊急伝令、現世定点1026番北西2128地点にて巨大虚の襲撃有、現世定点1026番北西2128地点にて巨大虚の襲撃有、担当の隊はすみやかに…』

「真子!!」
「なんで巨大虚が…いくでなまえ!!!」
「わかった!!ほら、ギンも早く!!!!!」
「え、ボクもなん?」
「相手がでっかいなら遠距離攻撃できるギンの斬魄刀の方が楽でしょ!!ほら早く!!!」
「りょーかい」

突如五番隊舎に鳴り響く救援要請にさっきまでのなごやかな空気は一変して一気に緊張感が張りつめた。
今現在五番隊にはこの三人しかいない。しかも巨大虚となるとそれは隊長格でなければ処理できない。各自自室においてある斬魄刀を取りに戻り急いで現世に向かう準備をする。別にギンはいかなくてもいいけど、部下に経験積ませてやりたい親心ってやつ。あれ、このセリフどっかで聞いた気がするぞ。
技術開発局に連絡を取って急いで限定霊印も施して、ついでに私は副官章も取りに行く。緊急時じゃない限り巻いてないからいざって時に時間取られちゃうんだよね、こういう事がないように今度から常時巻くようにすればいいのに!

「全員地獄蝶もったか?」
「ばっちりでっす!」
「なまえは霊印やったか?」
「やったよ!見る!?」
「見ぃへんわボケ!!ほな行くで」
「はーい」

三人揃って穿界門を開く。
ビリビリと伝わってくる虚の気配。一体何匹いるんだよもう!せっかくのご飯だったのにさ!!

「なまえ…」
「んー?どしたどした?怖い?」
「そうやない…コレ」

隣にいるギンが震えた声を出す。
見上げると少し眉をひそめて怪訝な顔をしている。顔を覗き込んでみると少し泣きそうな顔で私の腕を引っ張ってくる。




「これ、あの人が作った虚や」




あの人。名前を言ってはいけない人みたいな感じになってる。
あの人といえばあの人。隣の真子の手がピクリと動いた。

「死んでからもやってくれるやんけ」
「あの変態糞眼鏡マジ許さんぶっ殺してやる…いいチビギン!泣きそうな顔しないの!!もし今いろいろ贖罪とか罪悪感とか渦巻いてるならギンが自分の手で全滅させてやるのが贖罪だからな!!わかった!!!?」
「ええかギン―今のは聞かんかった事にしたるから、その虚ぶっ殺してこいやー」

「…ほな、ちょっと本気だしますわぁ」

身長180近くの大の男が身長140くらいしかない私に縋るあたり、やっぱりこいつはまだまだチビだ。
大の男が泣きそうになりながら笑うなんてみっともないぞ、って言いながらジャンプして頭ぐしゃぐしゃに撫でてやった。
真子もなんだかんだでギンの事信用してるみたいだし、素直に告白したギンに免じて聞かなかったことにしてくれたみたい。小さく真子にお礼を言ったら「自分の部下信用しとるだけや、ボケ」って言われた。
じゃあ私もその信用にこたえられるように頑張るとするかー。

「霊術院の子って事は未来の私の仲間になるし部下になるし友達になるから、私が助けるに値する人たちだよね」
「せや、久しぶりに暴れたり」
「よっしゃー任せて!虚化していい?」
「それはあかん」

虚化はダメらしい。
まぁ、なんとかなるかな。頑張るぞ。この日のために修行したとっておきもあるし、待ってろよ糞眼鏡の遺物達め。


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bkm
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