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「は?現世に行きたい?」

副隊長の仕事にも慣れて早数か月。主にチビギンに色々教えてもらったり手伝ってもらったり仕事肩代わりしてもらったり、今の私にはチビギンがいないと何にもできない無能副隊長なのに。
突然の申し出だった。昨日まで全然そんな素振り見せなかったのに。もしや私の要領が悪すぎて愛想つかしちゃったとか、私の仕事が遅すぎて毎日残業しちゃってるのにもう耐えられなくなったとか、なんていうか思い当たることいっぱいありすぎる。
真子も少なからずびっくりしたようでさっきまでサラサラと動かしていた手が止まっている。

「なんで…」
「あえて言うなら、贖罪やろか…」
「なんかすることあったっけ」

あの藍染の件でチビギンは現場にもいなかったし、藍染の実験に加担していたという証拠もなかったので何の罪にも問われなかった。だってあの日の夜チビギンは四番隊舎にいたのだ、それは四番隊の人間が全員証言できる何よりの証拠だもの。藍染と一緒にいたといっても副隊長と三席ならば個人的に話をする機会はいつだってあるから何の証拠にもならい。
つまり無罪放免だった。
しかも真子がいない間は仮の隊長として五番隊を引っ張ってくれた。私の知っている過去を真子に話した時も「その時のギンと、いまのギンはちゃうやろ。なんか確かな証拠が出えへん限り俺は何も言わん」って言ってくれたし、しかもギンももう改心してしっかりと五番隊三席としての職務を全うしている。
謝る事なんて、なにもないのに。

「せやかてボクが許されへんのや。なまえ副隊長おらんかったらボクも」
「でもいいじゃん、まだ何にもしてなかったんだし」
「ボクが嫌なんや。こんな状態で何食わぬ顔で一緒に仕事なんかできん。なまえ副隊長も大体仕事できるようになったし、もうええかなって…」
「サボり気味やけどな」
「サボってないぞ!頑張ってあんな成果なんだよ!!努力は褒めてよね!!!」
「へーへー」

しかし困ったなぁ。わたしの仕事は隊長がやればいいから全く問題ないけど、今の市丸少年を一人で現世に行かせたとして戻ってくる確率ってかなり低いと思う。このままどこか遠い所にいっちゃうんじゃないかって、そんな不安。
そんな人間を現世に行かせる訳にはいかない。真子だって同じ事思ってるようで難しい顔して手元の書類とにらめっこを始めた。
真子の隣に立って隊長羽織を引っ張る。どうすんの、そういう意味を込めて。

「ん?」
「なんや」
「ちょちょ、ちょっとそれ見せて!!」
「お、おう??」

ちらりと見えた書類。それは新入りの隊員に魂送と虚討伐の研修任務で毎年一人の新入隊員に一人の先輩死神が一緒に同行するっていう任務。下っ端の死神なら誰しも一度はやったことあるし、やってもらったことがある死神の基本的な仕事だから。
今年も我が五番隊にはそこそこの新入隊員が入ったらしく、実際私達は顔合わせにいなかったけど、それなりに入ってそれに同行する死神を今隊長自ら選出していた所だった。

その中に見知った名前を発見した。
勝つる。
思わずニヤリと笑ってしまった。

「チビギン!どうせ現世行くならこれやんなさい!!」
「…いやでも」
「どうせ研修は最低でも一か月あるんだから心の整理なんて一人になる時間いっぱいあるんだから、はい決定!いいよね真子!!」
「や、でもそういうのはもっと下っ端が…」
「いいよね!!!真子隊長!!!!!!!!」
「……はい」
「よし決まり!!じゃあチビギンちゃんはさっさと荷物整理して!!私新入隊員呼んでくるからー!!!」

意気揚々と隊首室を飛び出して目的の新入隊員ちゃんのとこに向かう。
ちなみに私は五番隊でも隊首室で仕事してたりする。真子に拝み倒して机持ち込んで。だって一人って味気ないじゃん、真子が一人で寂しいんじゃないかっていう気遣い。決して私がさみしいからとかそういうのじゃない。断じて。
誰だって、一人は嫌だもんね。



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bkm
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