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荘厳な声と共にそう宣言された。
一気に隊長格の視線が私に向けられる。

「わたし平隊士ですし」
「虚化を一早く使いこなし八名の隊長格を救った功績じゃ」
「平隊士ですし」
「卍解を使える平隊士などおらぬ。儂の目を欺くのならばもう少しマシな嘘を吐け」
「……ああ!!しまったばれてる!!!」

あの時藍染の悔しそうな顔が楽しくて楽しくて仕方なかったからあんまり覚えてないけど、私が卍解したのはいつでしょーかーとか言っちゃった記憶があるようなないような。めちゃくちゃあるけどそんな現実から目をそらしたいみたな、私は今現在そういう複雑な感情がぐるぐるしております。

「ちゃ…着任拒否権っていうのが確かあったはずじゃ」
「確かにありますけど、総隊長直々の推薦を断る死神ってそうそういないっすよー?」
「おとなしく副隊長になっとき。あんたもう逃げ場あらへんで」
「そうそう、人生諦めが肝心だぞ」
私の言い分を完全に浦原さんとリサに論破されて、しかも敬愛する大好きなラブ隊長にまで諦めろって言われた。
うおあーやだーやだー。
これほとんど命令やんーうわーんこんなブラック企業やだよー。これはパワハラだと思うよ総隊長。

「ほれ」
「…副官章…」
「藍染がやっとったんはめちゃくちゃになってしもたからまた新しく作ったんやって。ほら新品やでー」
「むむむ…」
「なにがそんな嫌やねん…そないに俺ん事嫌いなんか」
「嫌いじゃないー好きか嫌いかなら嫌いじゃなくて寧ろ大好きだけど…ううでもなんか、さぁ…」

総隊長に呼ばれた時点で私の拒否権ってないんじゃないかな。こんなことならどっかでサボっておいしいごはんでも食べにいけばよかったと物凄く後悔してる。
別に真子の副官になるのが嫌だっていうんじゃなくて、ラブ隊長と離ればなれになるのが嫌なんじゃなくて、そういうんじゃなくて。なんだろう、知らない未来への不安っていうのかな、そんな感じの小さいモヤモヤ。
私は私の知っている100年前に戻りたかった訳で、そんな副隊長とかもなりたいって思ったわけじゃない。みんなが無事ならそれでよくて、みんながわたしと仲良くしてくれればそれでいいのに。
副隊長になって、私の知らない未来になったとして、私の欲しかったものが全部なくなるのが怖い。
知っていたから知らなくなることが怖いのだ。

「アホか」
「…む」
「なまえが副隊長になろうとなるまいと、なまえはなまえやろ。ここにおる奴らは全員お前に対する態度変えるつもりはないで」
「…真子」

いつだったか、虚化の訓練を始めるときに真子に聞いた時、未来から来てようと過去から来てようと私は私だって言ってくれた時と同じ強い目をした真子。
思わず引き寄せられるようにその目に吸い込まれて身動きが取れなくなった。強くてきれいで、私の事全部知っていて包み込んでくれる優しさを含んだあったかい目だ。

「左腕出し」
「…言っとくけど私あんまり書類整理上手じゃないし鬼道も大したことないしできるのなんておつかいとかだけだし、戦闘で役に立つのも卍解できるぞってくらいだけど」
「仲間守るために命張れるって気概があるなら十分や、ボケ。自身もってこれ巻いとけ」
「ん」

私の左腕に副官章がまかれた。
視線を真子の方にむけるとさっきの優しい目はなかったけど、いつもの真子の顔が私を見下ろしていた。
頭をぐしゃぐしゃって撫でられて、耳元で「よろしゅうなー」と何とも軽い声が聞こえてきた。
これはもしかしたらセクハラになるんじゃないか、もうこうなったらハゲ真子のセクハラいっぱいピックアップして女性死神協会に言いつけてやろっと。

「七番隊隊士みょうじなまえを五番隊副隊長に任命するものとする!」
「はーいえっと…謹んでお受けいたします」
「では解散!!」




総隊長がガンっと大きく杖を床に打ち付けて解散を命じると続々と隊長さん達が隊首会部屋から出ていく。
白にまた後でねーっと手を振られリサとかひよ里にも後でなって肩とか背中をポンポン叩かれる。
真子はというとさっさと部屋を出て行ってて、私はラブ隊長の後ろについていこうとしたらすっごい怒られた。ああ、そういえば私はもう五番隊だっけ。ううん、さっきラブ隊長と離れるのは別に嫌じゃないって言ったけど改めてそういうの実感するとやっぱり嫌な気がしなくもない。

「いくで、なまえ」
「んー真子」
「なんやねん」

隊長羽織を軽く引っ張る。めんどくさそうに振り返った真子ににっこりと笑う。

「これからよろしくね、ハゲ隊長」
「うっさいわボケ副隊長」

まぁ真子ならいっか。
なんだかんだで一番頼りになる男だし。
副隊長になったらお給料いっぱい入っておいしいものいっぱい食べれるだろうし!


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bkm
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