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あれから一年、色々あったけれど私は浦原さんの作った空間にずっと引きこもっていた。一年間ずっと外には出ずに皆で頑張って虚化を習得しようと来る日も来る日も鍛錬ばっかりしてた。
虚化の研究には主に浦原隊長と数名の技術開発局の人たちがちょくちょく来てくれる。浦原さんとかはついでに差し入れとかご飯とか必要なものも持ってきてくれるから私達にとって無くてはならない人だ。
虚化の鍛錬は強い相手がいいって言ったら四楓院隊長が時間を見つけてくれるとひょっこり顔出して私たちの事コテンパンにして帰っていく。
たまにたまーにすっごいたまに、京楽さんとかも来てくれる。最初はリサちゃん見るたびしんみりした顔してたんだけど、そんな顔するたびリサちゃんが殴り飛ばしてた。自分の副官くらい信じろって。絶対戻るから仕事さぼってんなって、仮にも隊長である京楽さんの顔踏み潰しながらそうやって説教してたリサちゃんは最高にクールでかっこよかった。


いろんな人がお見舞いに来てくれるから特に寂しい事もなかったし、なによりみんなずっと一緒だったから前となんら変わらなかったから特に不便はなかった。
不便はないけどやっぱり外の状況とかはわかんないから浦原隊長とかが口伝えに色々世間話をしてくれる。

聞いた話で一番大きい出来事が藍染の糞眼鏡変態野郎が双極にて処刑されたらしいって事。
聞いたときは「へーそーなんだー」ってくらいにしか実感わかんなかったし、前の時だって藍染がどうなったかなんてよく知らないからなぁ。
別にあの男は単なるきっかけに過ぎないだけで私達の事ずっといじめてたとかずっと人体実験してたとかそういう長期に渡って私達のこと虐めてた訳じゃないから、私自身あいつにあんまり興味は持っていない。まぁ嫌いだとは思っているけど、あいつがいなかったら私達は今頃護廷十三隊で皆と一緒にのんびりしてたんだろうなーとは思っていたけど。あ、でも最終的には皆バラバラになっちゃったから藍染は嫌いかなあ。
死ぬ間際はずっと薄ら笑いを浮かべていたらしい。最後の最後までずっと笑って死んだって、そう浦原隊長が教えてくれた。
なにそれ気持ち悪い。まだ私への暴言とか侮蔑の言葉並べ立ててくれた方がまだ人間らしいというのに、最後の最後まであいつは人間じゃなかったということか。まぁあの男を理解するつもりもないし、私が理解できる程頭もよくないし考えるのも面倒くさい。
東仙要も今はどっかに収監されているらしいって聞いた。まぁ確かに皆を切りつけたのあの人だし、あの場にいたからそりゃそうなるよねって納得した。

ここ一年はずっと皆と引きこもって隊も休隊している。残してきた隊の人間達に心配させないようにって皆部下とか友達とかとちょこちょこ手紙のやり取りはしているらしい。私は特にやりとりするような知り合いってあんまりいなかったし、知り合いも友達も皆目の前にいるからそういうのしてないけど、リサとかすっごい小さい女の子の部下がいるらしくてその子に手紙書いてたりした。幼女趣味なの?って聞いたら将来有望で京楽さんの相手させて自分はサボれるように今から教え込んでるんだって。老後の計画バッチリだね。

隊の仕事は残った副隊長や三席が代理隊長権を施行して頑張っているらしい。
私の卍解のせいで皆事情も状況も全部しっているから皆も心配とか虚化とかって事で思うことも色々あるらしいけど、中央が一年で習得できたら隊長もっかいやらせるって判決下したから文句があるなら本人に直接言えって格隊長達が一喝してくれたらしい。
こんな引きこもりたちのために何から何までありがたいです、やっぱり仲間っていいなぁ。
でも三番隊はローズの部下さんは皆真面目で礼儀正しいから問題ないし、七番隊もみんな優しいし仕事できるしサボる人いないし、十二番隊はそもそも執務っていうより最近は研究メインだし、八番隊も京楽さんがしっかり仕事してれば問題ないから大丈夫だと思うけど、隊長副隊長が抜けちゃった九番隊と五番隊はどうしてるの?って聞いてみた。
そしたら拳西がすっごい顔しかめっ面にしながら、
「うちは白以外は全員真面目だから問題ねぇ」
「なによー拳西だって筋トレばっかで全然仕事してないくせにー!!」
「毎日一日のノルマはちゃんとやってっから問題ねぇよ!!!」
「じゃああたしのも手伝ってくれたっていいじゃん――!!拳西のケチケチケチンボ―――――!!!!」
「副隊長は隊長の補佐するのが仕事なのにテメェが補佐してもらってどうすんだ!!!」
てな具合に喧嘩をおっぱじめた。
しかも虚化で。
いくらここが瀞霊廷とは別の空間とは行っても何も虚化で喧嘩する事ないと思う。確かに持続時間の鍛錬にはなるけどね。私の手間も省けるけどね。九番隊ってみんな脳が筋肉でできているんだろうか。まぁいっか。

筋肉コンビの事はほっといて、岩場にもたれかかってバテてる真子の所まで行ってどっこいしょって言いながら隣に座る。もう何か月もここで生活してるからトリートメントもケアも何もしてなくてしかも毎日毎日過酷な訓練ばっかりしてたから、あのトレードマークのサラサラ金髪ロンゲヘアーもすっかりボサボサになってしまった髪を引っ張って無理やり意識をこっち側に引き寄せる。
ついさっきまで鍛錬のための戦闘してたからすっかり疲れ果てていたけど、私が名前を呼ぶとめんどくさそうに目を開いた。
「ね、五番隊は?」
「あー?」
「残してきた仕事、大丈夫なの?」
「あーうちは俺含めて全員優秀やからなー全く問題ないわー」
「へぇ…あれ?でも今隊長も副隊長もいないから誰が代理隊長なの?」
「ギンやギン。あのチビギンにできるんかちょーっと心配やったけど、なんとかやっとるみたいやで。まぁ四席もついとるし大丈夫やろ…なんかあったら六番隊に泣きつけ言うといてあるし」
「朽木隊長の所にはなかなかいけないと思うけど」
「ええねんええねん、部下に経験積ませるんも上司の務めや」
「面倒事丸投げしてるだけじゃーん」
「やかましいのぉ…五番隊の隊長は俺や、せやから俺がええ言うたらええねん。ちょっとは空気呼んで休ませんかいなまえ」
邪険に扱われてプリプリしながら立ち上がる。
いいもんね!私にはラブ隊長がいるもんね!!真子のアホバカハゲ!!!

「なまえー」
「なにさ!!」
「ギンがお前によろしくやって」
「……そっか。ギンちゃんはいい子だねー自分の隊長の面倒は私にしか見れないって理解してるいい子だ!仕方ないギンちゃんの頼みならいやいやながら真子のお世話してあげなきゃね!!」
「いらんわボケ」
「とりあえずその痛んだ毛先切る?」
「毎日きっとるからいらん!!!」

そっかそっか。市丸少年頑張ってるのか。
いまはちゃんと笑えてるかなー笑えてるといいな。

早く一年たたないかな。
作られた空じゃなくて本当の空がみたい。


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