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もし、私が未来から来たと言って無条件に信じてくれる人はどれだけいるのだろう。
もし、私が未来から来たと言って昨日までの私と違う私を受け入れてくれる人はどれだけいるだろう。

そう問いかけたら目の前の男は自信満々に自分の事を指した。
目つき悪いし口悪いし眉間に皺寄せながらそんな顔をしながら吐き出した言葉がたった一言、アホらし、だよ。
さすがにカチンって来たから私の座ってる所に転がっているちょっと大き目の石を全力で投げつけてやったら華麗によけやがった。むかつく。

「言うたやろ、最初っから信じ取るって。お前が昨日のお前と違うやと?お前はお前や、それ以上でもそれ以下でもない。泣き虫で弱虫で口悪くて足癖も悪くて怒りっぽくてすぐに手が出て褒めるべき所ゆうたら乳がでかいとこだけや」
「よーしハゲ虫真子そこから動くなよ今からぶっ殺してやる」
「できるもんならやってみぃー」
「コラ、真子もなまえも喧嘩するんじゃねぇ」

二人でラブちゃんに拳骨入れられちゃった。真子のせいだぞこんにゃろー。
たんこぶにはなっていないのはラブちゃんの優しさなんだろう。真子の方を見るとでっかいでっかいたんこぶができてた。ざまーみろ。
若干涙目になりながら顔をあげると、みんなすっごいあきれた顔をしていた。

「昨日までのなまえと違う訳あるかい」
「そうだよ、だって僕たちの事助けてくれたじゃないか」
「昨日までのなまえも今のなまえも全然一緒やん」
「そうですよ」
「くだらねぇこと考えてる暇あったらさっさと虚化なんとかする事が先決だろうが」
「今そういうこと言ってんじゃないじゃん拳西はバカだな―――」

みんな口々に言いたいことばっかり言ってくる。なんでこんな責められてるんだ解せないぜ。
でもその言葉が全部私を認めてくれている言葉で、私は未来から来たけど今確かにこの時間軸に引き留めていてくれているのは間違いなくこの暖かい言葉と大切な皆という存在な訳で。
今も昔も皆全然変わってない、100年前から100年以上前からずっと変わってない空間がこの過去の世界にもあったのだ。

だから守りたいって、思ったんだ。
あの男の手から守りたかった。まだ崩玉も何も取り込んでいない無防備なあの男になら、今ならきっと勝てるって。
案外あっけなかった気もするけど。







「七番隊みょうじなまえ、此度の事件のあらまし、全てこの場にて証言せよ!!」
「証言って、みなさんが聞いたのが全てです。藍染が虚化の実験してそれの犠牲になったのが五番隊隊長含む計八名の隊長格とわたしで、先頭に必死になってたら卍解しちゃって会話がダダ漏れしてました。何かあるといけないなと思ってかねてより交流のあった十二番隊隊長に協力をお願いして、十二番隊隊長のかつての上司である二番隊隊長にも協力してもらったら、思わぬ罪人が釣れてラッキーみたいな」

「貴様が虚化の実験に協力したという事実は?」

「ある訳ないです。なんなら目撃証言でも取ってみればいいです。藍染副隊長はあの瞬間まで私の存在は知っていれど名前すら知らなかった間柄ですし私の仕事部屋は七番隊の隊首室です。個人的に七番隊の隊長とは義理家族みたいな関係なので特別にそこで仕事させてもらってるので、七番隊隊士に聞けばみんな証言してくれます。流魂街魂魄消失事件が起こってからここ数日は八番隊副隊長達とお酒を飲んだりしていたのでお店に聞けば証言してくれるし、それ以外の日も二番隊隊長や五番隊隊長と一緒でした、お昼の三時には必ず三番隊でお茶してたので三番隊の隊士にも証言取れますよ、きっと」
「ふむ…」

私は行動範囲はだだっ広いけど護廷十三隊で有名な人たちとばっかり一緒にいるからどこかで絶対目撃されている。だから疑う余地なんてどこにもないだろう。
中央には感謝してもらいたいものだ。
この先あの男を生かしておけば中央は皆殺しにされて、今目の前で私を見下ろしている奴ら全員死んでいたというのにね。

「お前は虚化を習得しているというのは誠か?」
「ええ、真実ですけど。どうします?虚として処分しますか?」
「一介の平隊士が生意気な口を利くでないわっ!!」
「すみません…口を慎みマース」

ざわざわと口々に討論が頭上の上でなされる。
処分するべきかしないべきか。私は藍染をとらえた張本人であるから無碍にはできない、けれど虚は倒すべき化け物である、しかし目の前の私はただの死神で霊圧のそれもただの死神。私の言がどこまで真実でどこまで嘘かが推し量る事ができない以上、そう易々と判決を下すべきではない。
っていうか私罪人じゃないのになんで中央に呼ばれたんだ納得いかない。

「あのー!一つ提案してもいいですか」
「発言の許可は与えておらぬぞ」
「えぇ…でも私罪人じゃないんですけどー」
「それもそうじゃ…なんだ」

「私は虚化を習得しているしその習得方法も知っています。もし虚として処分するとしても一度に護廷十三隊の隊長格七名と副鬼道長を失うのは尸魂界にとっても瀞霊廷にとっても大ダメージだと思うんです。しかし私は先にも話した通り虚化もできるし虚特有の技も出せるし虚のおかげで強化された霊圧を持って死神の力を振るう事ができます。ただの平隊士の私があれだけなら隊長格の人たちが虚化習得できたらそりゃーもうすっごい戦力にもなるし瀞霊廷も安定すると思うんですよ。んでしかも平隊士の私にもできたんだから隊長格の人たちも絶対できると思うんです。

それで一つ提案です。
私に時間をください。必ず隊長格八名に虚化を習得させ虚の力の制御と死神として複隊させてみせますので。」

「ただの死神がずいぶんと強気に出たものじゃな」
「そりゃ強気にもなります。みんな大事な家族で仲間で友達ですから」
「保障できるのか?奴らが皆虚化を習得し、瀞霊廷に害を為す事がないと」
「もちろんです。だって、私にもできるんだから彼らにできないはずがないでしょう?」

顔も見えない相手と話すのはどうにも胸糞悪い。
しかもこいつらすっごい性格悪い。こんな奴らに私たちが統括されているのかと思うと若干思う所もあるけど、普段私たちに干渉してこないからまぁいっか。

天井からの光がまぶしいなぁ…コンサートとかのスポットライトみたいでずっと当たり続けてると熱中症になりそう。
疲れと寝不足で朦朧としている意識をなんとかふんばらせる。
絶対に倒れる訳にはいかない。




「よかろう!!!ではこれより一年間の猶予を与える!!もしそれまでに八名が虚化を習得できなかった場合、お前を含めた九名を厳正に虚として処罰する!!!!」


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bkm
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