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封印具をまかれ動くことも喋る事も出来なくなった藍染を忌々しげに見下ろしていると、夜一さんがそう言って藍染を肩に抱えて瞬歩でこの場を去った。その後に続くように周りの隠密機動隊の人たちも次々といなくなった。

「……ぐっ」
「!!」
「うああああぁああぁぁぁぁぁあぁあぁあぁ!!!!!!!」
「真子!!!!」

全てが終わったと思われる空間を切り裂くように獣のような咆哮が聞こえた。
慌てて振り返ると八人の中でただ一人かろうじて未だ気を失わず正気を保つ真子が苦しげに蹲っていた。急いで駆け寄って丸くなった背をゆっくりと撫でると、突然私の手を力いっぱい握られた。正気を必死に保とうとして力加減がまったくできていないからすっごい痛いけど、今はそんな痛みも気にしている暇はなかった。

「真子、真子!」
「…っああぁあ、うが…!!」
「真子聞こえてる?私の声!真子!!真子!!!!」

爪を必死に地面に立てて何とか意識を保っている真子の手を取ると私の腕に力いっぱい爪を立てた。
こんな痛みどってことない、皆を失う事に比べたら全然痛くない。

「…はぁ…っ、なまえ…」
「うん大丈夫だよ、絶対大丈夫」
「ぐぁああぁ…っはぁ…、はぁ…あが」
「大丈夫、みんなみんな私が守るから、絶対助けるから…」

半分虚の仮面に覆われてしまっている真子の頭を抱きしめる。
子が母にするように、泣きわめく子をなだめるように、悪夢にうなされた子をあやすように。
一生のお願い。私を信じて。

「なまえ…」
「うん?」
「ほな…頼むわ…」

「ガッテンまかせろ」

微かに霊圧が揺れて笑った。
死んでしまったのかと錯覚するほどピクリとも動かなくなった真子。けれど確かにまだ生きている。ほとんど虚に飲まれているけれどまだこの膝の上で横たわる男は私の知っている平子真子だ。



「浦原隊長」
「はい」
「お願いがある」
「ハイ、なんなりと」

随分テンションが低い浦原さんに若干いらっとしてしまった。
なんだよテンションあげていけよ、せっかく藍染の糞野郎が捕まったしまだみんな生きてるんだから。

「なんだよテンション下がる声だすなよー浦原隊長のバーカバーカ」
「ええ、でも…こんなことになったの、半分僕のせいっすから…」
「ちがう!これはぜーんぶあの糞野郎のせいだから!で、その糞野郎は隠密機動隊の隊長が直々に捕えて連れてったんだから全然全く問題ないんだからさー!だからテンションあげてよね!ひよ里が今にも飛び起きて蹴り飛ばしちゃうぞー!!」
「はぁ…」

どっこいしょっと男のくせにずいぶん軽い、ローズとかラブちゃんよりは全然軽いぺらっぺらの真子の体を抱えて立ち上がる。

「平隊士でペーペーのペーの私が虚化できてるんだから、皆も絶対大丈夫。私より全然強いんだから」
「なまえさん…」
「責任感じてるなら手伝ってよね。いつまでもそんな暗い顔してたらもうお願いじゃなくて命令するかんね!シャキっとしよねキビキビ歩いてよね!早く、早くみんなを運んでよね!!」
「……そうっすね」

帽子を目深にかぶりなおして残った隠密機動の人たちに隊長らしく指示を出す。
皆次々と隠密機動の人たちに雑に抱えられて、ひよ里は隊長自ら連れて、ハッチは大きいから二人がかりで、そうして皆瀞霊廷の十二番隊舎に運ばれた。マユリさんがすっごい好奇心丸出しのギョロ目で出迎えてくれたのはちょっと怖かったから思わず浦原隊長の後ろに隠れてしまった。
今度は私が大丈夫っすよーって励まされてしまった。うーむ不覚。

「泣かないんすか、仲間がこんなになったのに」
「泣いたら皆心配するじゃん。だから全部終わるまで頑張るって決めたんだから」

一番最初に、真子の腕の中で決めたのだから。




「頼むよ浦原さん」
「ハイっす」


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bkm
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