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お前にとって私はただの一般隊士で記憶の片隅にすら残らない、道端に転がっている石コロよりも価値がないと、以前あいつに言われた侮蔑だった。
その通りに私にはなんの力もなかったし、みんなに守られているだけの存在だった。だからこそそんな私が虚化が成功していた事に少し興味が湧いていたと、続けてそう言った。
あそこで浦原喜助の邪魔が入らなければキミがどう虚化に耐えうる魂魄を持つことができたのか実験をしようとさえ考えていたとも言われた。
誰がそんな事するか変態糞眼鏡、と痰と共にあいつの足元に吐き捨ててやった。

奇跡のような確率で私の虚化は完成した。

「お前になぜ私の虚化が完成されているのかなんて答えるつもりもサラサラないし、どうしてここに四楓院隊長と隠密機動隊と浦原隊長と握菱大鬼道がいるのかなんていずれ知るだろうから今は別に知らなくてもいいでしょ」
「…貴様っ!!」
「私の名前も知らないあんたに教えてあげるのは2つだけ」

苦々しく歯軋りをする藍染に向かって二本の指を突き立てる。

「まず私の名前はみょうじなまえ」

自分を陥れる小娘の名前が聞けてさぞ嬉しいのか藍染の顔はいまだかつてないくらい歪み切っていた。
いい気味いい気味、ざまぁって奴ですね。

「で、二番目。私の斬魄刀について。平隊士の私がなんで斬魄刀持っててしかも卍解できるのかは割愛するよーお前の斬魄刀の能力もべらべら喋ってくれたから私のも教えてあげる」
「別に知りたくもない!!そんなもの!!!」
「そんなこと言わないでよーせっかく親切心で教えてあげるんだから黙って聞いてなさい」

そう前置きを置いて未だ卍解中の斬魄刀を目の前に掲げる。



「私の斬魄刀の有する能力は「共有」
私が見たもの感じたもの、ぜーんぶ相手と共有するし、相手が見たもの聞いたもの感じたもの、ぜーんぶ私と共有する。それが能力。神経系支配しちゃうから不本意ながらお前のと同じ系統になるの。うわーなんかやだー
で、能力は共有だから私が見たもの聞いたもの、全部誰かと共有できちゃうんだけど…」

一呼吸おいて、虚の仮面を頭の上においやる。

「虚化すると本来の力の全部出し切っちゃうんだよねーそんな状態で卍解なんかしちゃったら一溜りもないと思わない?」
「何が言いたい…っ」

「本来なら目の前にいる相手だけなんだけど、今の私の霊力が尸魂界中に広がってるの。だから尸魂界にいる霊力を持ったすべての人間が私が見たもの聞いたもの全部共有してる状態なんだよね」

この場にいる全ての人間が一様に息をのんだ。
虚化している小さな小娘が月明かりに照らされて怪しく笑う様は、お前の目にどうんな風に映っているのだろう。
感情まで共有できないのが残念で仕方ないよ。

「さて問題、私はいつ卍解したでしょーかっ」





瀞霊廷内では誰もが困惑していた。
衝撃すぎる事実に。
突然脳内で再生される映像、耳の奥から聞こえてくる音声に。

目撃者は隊長格二名及び100人の隠密機動隊。そして尸魂界のすべての死神と、霊力を持った流魂街の人間達。
これで言い逃れはできまい。
ベラベラベラベラと迂闊にも自身の計画も魂胆も話してしまったのだから。

「これで、しまいや…」

四番隊舎のベッドの上、一人月を見上げながらポツリとつぶやいた。
静かな湖面の水底で光る強い強い宝石の輝きを持った瞳を思い出して、市丸は一人ほくそ笑んだ。

「まかせて正解やったみたいやな」




世界よ、これが全てだ

私の目に映ったモノ全てが真実。
私の耳に届いたモノ全てが事実。


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